Where I Work

Zoleka Filander

Credit: Nature by BARRY CHRISTIANSON

私は南アフリカ環境局の深海研究者として、海の持続可能性目標の達成、中でも海洋保護区(MPA)の設定に向けた海洋調査を指揮しています。国が設定する自然公園は国立公園と呼ばれますが、MPAは海の中の国立公園のようなものです。

MPAを設定するためには、その海域に生息する生物を知っている必要があります。ですから私は、多くの時間を海で生物種のサンプリングをして過ごしています。それ以外の時間は、データを解析したり、海洋調査を計画したり、海洋資源の持続可能な管理について助言をしたりしています。

写真の私が立っている場所は、調査船RVアルゴア号の観測台です。私は海洋調査の主任科学者として、科学クルーを監督しています。

私たちが継続的に調査している海域の1つに、西ケープ州沖のケープ・キャニオンがあります。ここは大陸棚に刻まれた巨大な海底谷で、深いところの水深は3000 mもあります。私たちはここで、MPAの設定の指針となる海洋生物の調査を行っています。

最近の調査では、ケープ・キャニオンの海底に生息する海綿動物や、深海サンゴや、希少なウニDermechinus horridusや、Brisinga属の古代のヒトデなどを記載しました(Z. Filander et al. Front. Mar. Sci. 9, 1025113; 2022)。ケープ・キャニオンの海底谷の頭部は、その後、MPAに設定されました。

私はングニ人のアマバカ族の出身です。先祖代々、海との結び付きが非常に強い部族です。アマバカ族は毎年、新年を迎えるために海岸に行き、海辺に立ちます。ただ立つだけです。私たちにとって海は神聖な空間で、最大限に尊重しなければならないものなのです。

部族の中には、海に入る私の仕事を不敬なものと見る人もいましたが、研究の内容と研究を行う理由を説明すると、心から応援してくれるようになりました。

私は黒人で、先住民で、女性の研究者として、政府に助言をしています。私は、これまで疎外されてきたコミュニティーの視点が政府の判断に適切に反映されるよう努力しています。私は海洋科学を変革の手段として、同胞が受けてきた不当な仕打ちと向き合っているのです。

翻訳:三枝小夜子

Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 10

DOI: 10.1038/ndigest.2023.231048

原文

Where I Work: Zoleka Filander
  • Nature (2023-04-24) | DOI: 10.1038/d41586-023-01374-6
  • James Mitchell Crow