Nature ハイライト

構造生物学:グリシン再取り込み阻害についての構造学的手掛かり

Nature 591, 7851

ヒトのグリシン輸送体1(GlyT1)は、グリシンが仲介する神経興奮と神経抑制を、ナトリウムイオンと塩素イオンに依存するグリシン再取り込みを通して調節している。GlyT1の阻害は神経伝達物質によるシグナル伝達を延長するので、統合失調症や認知機能障害などの中枢神経系の広範にわたる疾患に対する治療法の開発では、ずっと以前から重要な戦略と見なされてきた。今回我々は、合成シングルドメイン抗体(sybody)と連続シンクロトロン結晶構造解析を用いて、ベンゾイルピペラジン型の阻害剤と複合体を形成したGlyT1の3.4 Å分解能での構造を決定した。この阻害剤は、GlyT1を内向きで開いたコンホメーションに固定し、放出経路の細胞内ゲート(グリシン放出部位と重なっている)に結合していることが分かった。この阻害剤は、細胞膜の脂質二重層の細胞質側の層からGlyT1に達しているようである。我々の結果は、阻害機構の詳細を明らかにし、臨床的に有効性の高い新規なGlyT1阻害剤の合理的な設計を可能にするものである。

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