Nature Microbiology に掲載された一次研究論文(Articles および Letters)について、その概要を日本語で紹介しています。
Disulfide bond formation in prokaryotes
doi: 10.1038/s41564-017-0106-2
さまざまな原核生物のジスルフィド結合触媒系の多様性を概説している。
A pathway for biological methane production using bacterial iron-only nitrogenase
doi: 10.1038/s41564-017-0091-5
細菌の鉄のみを含有するニトロゲナーゼが、メタン(CH4)を単一の酵素段階で生成できることを明らかにしている。こうして生成されたCH4は、CH4しか利用できないMethylomonas属の細菌株の増殖に利用可能であることを示している。
Structural basis for neutralization of Japanese encephalitis virus by two potent therapeutic antibodies
doi: 10.1038/s41564-017-0099-x
既知の2種類の抗日本脳炎ウイルス抗体が、3つのエンベロープタンパク質にまたがる四次構造エピトープに結合して、ウイルスの付着を妨害し、融合を阻止することを明らかにしている。マウスにおいては低用量の1回投与で防御効果が見られ、これらの抗体が有望な治療薬になりうることを明確に示している。
The structure of serum resistance-associated protein and its implications for human African trypanosomiasis
doi: 10.1038/s41564-017-0085-3
ローデシアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei rhodesiense)は、ヒトに感染するために、この寄生虫のSRA(serum resistance-associated protein)タンパク質を利用して、宿主のトリパノソーマ溶解因子であるTLF1およびTLF2を破壊する。この研究は、SRAの構造を解明して、SRAがTLF1およびTLF2と相互作用する仕組みを詳しく調べ、この寄生虫が宿主の免疫をどのように回避するかを明らかにしている。
AXL promotes Zika virus infection in astrocytes by antagonizing type I interferon signalling
doi: 10.1038/s41564-017-0092-4
ジカウイルス感染の際に、AXL受容体チロシンキナーゼが果たす役割は議論になっている。この論文では、AXLが、アストロサイトのジカウイルス感染によって誘発されるI型インターフェロン応答を、STAT依存的に阻害することによって、ウイルスの複製を可能にしていることが明らかにされている。
Spontaneous CRISPR loci generation in vivo by non-canonical spacer integration
doi: 10.1038/s41564-017-0097-z
大腸菌(Escherichia coli)において、CRISPRのスペーサーの標的部位以外への組込みの位置を数百万か所も調べることによって、この組込み過程により新しいCRISPR遺伝子座が生じる可能性があることを示している。
Increased diversity of peptidic natural products revealed by modification-tolerant database search of mass spectra
doi: 10.1038/s41564-017-0094-2
VarQuestは、新規のペプチド天然物(PNP)を検索するための方法で、既存の質量スペクトルのデータベースおよび化学構造のデータベースを基盤として、既知のPNPに起こる可能性のある修飾を組み込んでいる。VarQuestにより、これまでのさまざまな戦略よりも一桁多い数の化合物が同定されている。
Differential depth distribution of microbial function and putative symbionts through sediment-hosted aquifers in the deep terrestrial subsurface
doi: 10.1038/s41564-017-0098-y
CO2によって噴出する間欠泉を、噴出周期を通して解析することで、噴出周期の段階や帯水層の水深と関連して、微生物群集の組成や機能が時間的に変化することを示している。また、推定のアーキアの共生を明らかにしている。
Dynamics of metatranscription in the inflammatory bowel disease gut microbiome
doi: 10.1038/s41564-017-0089-z
炎症性腸疾患(IBD)の患者およびIBDではない対照についての長期間のメタゲノムおよびメタトランスクリプトームの対となるデータを解析することによって、IBDのさまざまな症状に影響を及ぼす微生物群集の変動や有望な経路についての手掛かりをいくつか得ている。
Stability of the human faecal microbiome in a cohort of adult men
doi: 10.1038/s41564-017-0096-0
308人の参加者から長期間にわたって糞便試料を採取して、メタゲノム解析およびメタトランスクリプトーム解析を行うことによって、腸内マイクロバイオームのさまざまな機能的特徴の動態を検出するには、長期的な試料採取が重要なことを明らかにしている。
Metatranscriptome of human faecal microbial communities in a cohort of adult men
doi: 10.1038/s41564-017-0084-4
ヒト糞便のメタトランスクリプトーム解析およびメタゲノム解析によって、時期や個人を問わず普遍的に転写されている「コア」のメタトランスクリプトームと変動が見られる「可変性」のメタトランスクリプトームがあること、また、時間経過に伴って同一個人内において、および異なる個人間において、細菌株レベルで同様の変動があることを明らかにしている。このことからヒトの微生物生態学的性質についてのさらなる手掛かりを得ている。
The host-encoded RNase E endonuclease as the crRNA maturation enzyme in a CRISPR–Cas subtype III-Bv system
doi: 10.1038/s41564-017-0103-5
CRISPR–Casが関わる免疫の過程では、長い転写産物前駆体がCRISPR由来の短いRNA群に切断される必要があり、これらの短いRNA群がCRISPR干渉複合体に利用され得る。この論文では、シアノバクテリアの1種であるSynechocystis sp. PCC 6803に存在するCRISPR–Cas系の1つ(サブタイプIII-Bv)が、この切断をRNアーゼEに依存していることを明らかにしている。
Pore-forming activity of the Pseudomonas aeruginosa type III secretion system translocon alters the host epigenome
doi: 10.1038/s41564-018-0109-7
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のIII型分泌系のトランスロコンタンパク質の孔形成活性が病原性因子として働いて、宿主のエピゲノムの修飾を誘導し、感染を促進することを明らかにしている。
Sieving through gut models of colonization resistance
doi: 10.1038/s41564-017-0095-1
微生物相が腸内の感染に果たす役割を評価する際に、現在利用されているいろいろなマウスモデルのさまざまな利点および限界に焦点を合わせて、定着抵抗性の理論的枠組みを詳しく調べている。
Antiviral CD8 T cells induce Zika-virus-associated paralysis in mice
doi: 10.1038/s41564-017-0060-z
I型インターフェロン受容体IFNARノックアウト(Ifnar-/-)マウスにおいて、アストロサイトのジカウイルス感染は、血液脳関門の破壊およびCD8+エフェクターT細胞の浸潤をもたらし、その結果として、ニューロンの感染は制限されるが、ジカウイルス関連麻痺が引き起こされることを明らかにしている。
Archaeal cells share common size control with bacteria despite noisier growth and division
doi: 10.1038/s41564-017-0082-6
この研究は、高度好塩性アーキアのHalobacterium salinarumの単一細胞解析を可能にするソフト・リソグラフィー法を利用することによって、アーキアの細胞が細胞周期を2回繰り返す間に、一定量の大きさを増大させることで細胞の大きさの均一性を達成している(すなわち、「アダーモデル」と一致している)ことを明らかにしている。
In vivo tropism of Salmonella Typhi toxin to cells expressing a multiantennal glycan receptor
doi: 10.1038/s41564-017-0076-4
チフス菌(Salmonella Typhi)の腸チフス毒素のin vivoでの指向性と関わっている複数のアンテナ(特異的N-グリカン鎖)を有するグリカン受容体について報告している。
Ephrin receptor A2 is an epithelial cell receptor for Epstein–Barr virus entry
doi: 10.1038/s41564-017-0080-8
受容体チロシンキナーゼのエフリン受容体A2(EphA2)が、上皮細胞へのエプスタイン・バーウイルス(EBV)の侵入および融合を決定する重要な因子であることを見いだしている。EphA2のノックダウンまたはノックアウト、あるいは、いろいろな抗EphA2抗体を利用することによって、中咽頭上皮細胞へのEBV感染が阻止されることを明らかにした。
Ephrin receptor A2 is a functional entry receptor for Epstein–Barr virus
doi: 10.1038/s41564-017-0081-7
受容体チロシンキナーゼのエフリン受容体A2(EphA2)が、上皮細胞におけるエプスタイン・バーウイルス(EBV)の侵入および融合に関わる受容体であることを明らかにしている。EphA2のサイレンシングまたはノックアウト、あるいは、抗EphA2抗体を利用することによって、いろいろな上皮細胞株および中咽頭がん細胞へのEBV感染が妨げられることを明らかにした。
Mutations in ppe38 block PE_PGRS secretion and increase virulence of Mycobacterium tuberculosis
doi: 10.1038/s41564-017-0090-6
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の北京系統のいろいろな株に一般的に見られるppe38の変異の1つが、タンパク質の分泌を変化させて、病原性を増大させていることを明らかにしている。
Detecting macroecological patterns in bacterial communities across independent studies of global soils
doi: 10.1038/s41564-017-0062-x
さまざまな研究およびいろいろなタクソン間の複雑な相互作用における方法論的な違いを説明する機械学習手法を利用すれば、互いに無関係なさまざまな土壌研究を分類学に基づいたレベルで結びつけて、細菌群集の構造を評価できることを明らかにしている。
PASTA repeats of the protein kinase StkP interconnect cell constriction and separation of Streptococcus pneumoniae
doi: 10.1038/s41564-017-0069-3
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の細胞分裂を調節する重要な因子であるStkPの4個のPASTAドメインが、隔壁の細胞壁の厚さおよび細胞の分離を制御する際にいくつかの異なる役割を果たしていることを明らかにしている。
Dietary pectic glycans are degraded by coordinated enzyme pathways in human colonic Bacteroides
doi: 10.1038/s41564-017-0079-1
この研究は、ヒトの大腸内細菌のBacteroides thetaiotaomicronによるいろいろなペクチンの利用を促す動的な機構について説明している。すなわち、この細菌の複数の特異的な多糖利用遺伝子座が協調して、特異的なペクチン分子を標的として代謝し、生じたさまざまな産物を他の細菌が利用できるようにしている。
Deep sequencing of HIV-1 reverse transcripts reveals the multifaceted antiviral functions of APOBEC3G
doi: 10.1038/s41564-017-0063-9
宿主の抗ウイルスタンパク質APOBEC3Gが、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の逆転写酵素と直接相互作用することによって、逆転写に対する強力で非部位特異的な干渉を誘導することを明らかにしている。さらに、宿主のDNA修復装置がHIV-1のcDNAを切断することも示している。
Intergenerational transfer of antibiotic-perturbed microbiota enhances colitis in susceptible mice
doi: 10.1038/s41564-017-0075-5
抗生物質によって乱された微生物相を妊娠中の母マウスに接種すると、抗生物質の非存在下で仔マウスに垂直伝播が起こり、IL10-/-マウスでは大腸炎が増強されることを明らかにしている。このことは、抗生物質治療が長期的な影響をもたらすことを示している。
Activation of Vibrio cholera quorum sensing promotes survival of an arthropod host
doi: 10.1038/s41564-017-0065-7
コレラ菌(Vibrio cholerae)のクオラムセンシングが、宿主であるショウジョウバエ(Drosophila)の感染誘導性消耗を軽減することを明らかにしている。
Enterotypes in the landscape of gut microbial community composition
doi: 10.1038/s41564-017-0072-8
エンテロタイプという概念を再検討して、腸内マイクロバイオームの特性を明らかにするためのエンテロタイプの利用について議論し、いろいろな研究間の比較を助けるための分類指標および標準化した方法論を提供している。
Plasmodium UIS3 sequesters host LC3 to avoid elimination by autophagy in hepatocytes
doi: 10.1038/s41564-017-0054-x
齧歯類に感染するマラリア原虫(Plasmodium berghei)は、肝細胞の内部でのオートファジーを介した破壊を回避するため、マラリア原虫のタンパク質UIS3をオートファジーのプログラムを調節する重要な因子である宿主タンパク質LC3に結合させて、LC3とその下流で働くさまざまなエフェクターとの相互作用を阻害することを明らかにしている。
Dynamic biofilm architecture confers individual and collective mechanisms of viral protection
doi: 10.1038/s41564-017-0050-1
大腸菌(Escherichia coli)細胞は、バイオフィルム形成の後期になると、CsgAから構成されるcurli重合体を発現する。CsgAは繊維ネットワークに組み立てられ、これがバイオフィルムを溶菌性ファージによる攻撃から保護していることを明らかにしている。
Predicted microbial secretomes and their target substrates in marine sediment
doi: 10.1038/s41564-017-0047-9
海洋の地下堆積物から得られたトランスクリプトームのデータを利用して、海洋の地下で発現しているさまざまな微生物酵素群は、細菌、アーキアおよび真菌から分泌される可能性があることを示して、海洋の地下環境における栄養分の循環に関する手掛かりをもたらしている。
Discovery of an expansive bacteriophage family that includes the most abundant viruses from the human gut
doi: 10.1038/s41564-017-0053-y
いろいろなタンパク質ファミリーのプロファイルに基づいたメタゲノムおよびゲノムのデータベース解析によって、ヒト腸管に豊富に存在するcrAssphage(クラスファージ)と関連がある多様なバクテリオファージ群を明らかにして、複製および転写に関わる遺伝子機能を予測している。
Pseudomonas aeruginosa defends against phages through type IV pilus glycosylation
doi: 10.1038/s41564-017-0061-y
ある種のファージは、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の一部の株のピリンに結合することによって感染できる。そのため緑膿菌は、これらの構造に複数のO抗原単位またはD-アラビノフラノースの重合体を付加して修飾する仕組みを進化させることで、ファージの付着を阻止している。
EphA2 is an epithelial cell pattern recognition receptor for fungal β-glucans
doi: 10.1038/s41564-017-0059-5
口腔上皮が病原体と共生生物をどのようにして見分けるのかは解明されていない。今回、エフリン受容体A2(EphA2)が、病原性真菌であるCandida albicansの表面に露出しているさまざまなβ-グルカンに結合することを示して、これが炎症促進性の抗真菌応答の発動に必要であることを明らかにしている。
Quantification of diverse virus populations in the environment using the polony method
doi: 10.1038/s41564-017-0045-y
ポロニー法を調整することによって、多様なウイルス群の数的な存在量をいろいろな環境試料中で数量化できた。そして紅海には、psbA遺伝子を保有するクレードBのT7様シアノファージ群が、クレードAのファージ群よりも大量に存在することを明らかにしている。
A CRISPR–Cas9-based gene drive platform for genetic interaction analysis in Candida albicans
doi: 10.1038/s41564-017-0043-0
CRISPR–Cas9を利用した遺伝子ドライブアレイのプラットフォームを開発している。これをCandida albicansの交配可能ないろいろな一倍体と組み合わせて、さまざまなホモ接合性二重欠失変異株を作出することによって、我々が真菌の遺伝的相互作用解析を行う能力を変化させている。
Self-sensing in Bacillus subtilis quorum-sensing systems
doi: 10.1038/s41564-017-0044-z
枯草菌(Bacillus subtilis)の細胞は、自身が産生する複数のオートインデューサーを感知することができ、これによってクオラムセンシングを介したさまざまな応答が増強されることを明らかにしている。この自己感知の過程が抗生物質投与の際の持続生残菌の生成に影響を及ぼすことがある。
DISARM is a widespread bacterial defence system with broad anti-phage activities
doi: 10.1038/s41564-017-0051-0
DISARM(defence island system associated with restriction-modification)という、広く存在する抗ファージ防御系を明らかにしている。
A bacterial pioneer produces cellulase complexes that persist through community succession
doi: 10.1038/s41564-017-0052-z
1つのセルロース分解性細菌コンソーシアムを培養して、群集の動態の遷移を示し、マルチドメイン構造を有するグリコシドヒドロラーゼが組み立てられて安定なセルラーゼ複合体として存在することを明らかにしている。このセルラーゼ複合体はセルロソームとは異なっており、先駆集団と考えられる細菌によって産生される。
Viral and cellular N6-methyladenosine and N6,2′-O-dimethyladenosine epitranscriptomes in the KSHV life cycle
doi: 10.1038/s41564-017-0056-8
この研究は、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)の潜伏感染および溶解感染の際の、ウイルスおよび細胞のN6-メチルアデノシン(m6A)やN6, 2’-O-ジメチルアデノシン(m6Am)修飾を受けたエピトランスクリプトームについて報告している。KSHVの溶解性複製は、この過程を制御するさまざまな宿主経路のエピトランスクリプトームの動的な再プログラム化を誘導することを示している。
The major targets of acute norovirus infection are immune cells in the gut-associated lymphoid tissue
doi: 10.1038/s41564-017-0057-7
in vivoでのノロウイルスの細胞指向性は依然としてはっきりしていない。この論文では、ノロウイルスが免疫能の正常なマウスに急性感染する際の主要な標的細胞は、腸管関連リンパ組織(GALT)に存在するマクロファージ、樹状細胞、B細胞およびT細胞であることを示している。
Evolution of host adaptation in the Salmonella typhoid toxin
doi: 10.1038/s41564-017-0033-2
サルモネラ属(Salmonella)細菌の腸チフス毒素の進化および宿主への適応における宿主のグリカンとの相互作用を構造の面から明らかにしている。
Dietary alterations modulate susceptibility to Plasmodium infection
doi: 10.1038/s41564-017-0025-2
活性酸素種は、食餌によって誘導される、脂肪酸のβ酸化から発生した可能性が最も高く、肝細胞の内部のマラリア原虫(Plasmodium)の生存に直接影響を及ぼし、肝臓への感染を大幅に減少させることを明らかにしている。
Surface properties of SAR11 bacteria facilitate grazing avoidance
doi: 10.1038/s41564-017-0030-5
in situで海洋試料を採取することで、SAR11クレードのいろいろな海洋細菌が、ろ過食動物の粘液性のろ過装置によってこし取られにくくなっていること、そして、こうしたグレージング(捕食)の回避は、おそらくこれらの細菌の細胞表面の疎水性が減少しているためであることを明らかにしている。このことから、細菌の細胞表面の性質が、捕食動物と被食細菌のさまざまな相互作用に重要な因子であることが示唆される。
Structural basis for maintenance of bacterial outer membrane lipid asymmetry
doi: 10.1038/s41564-017-0046-x
細菌の外膜のMlaAというリポタンパク質の結晶構造を、いろいろなリン脂質とMlaAとの相互作用のシミュレーションと関連付けることによって、MlaAがリン脂質を移行させるチャネルとして働いて、外膜の非対称な組成を維持する仕組みを明らかにしている。
A metabolic pathway for catabolizing levulinic acid in bacteria
doi: 10.1038/s41564-017-0028-z
レブリン酸(LA)は、付加価値のある化学物質であり、バイオマスから容易に得られる。土壌細菌の1種Pseudomonas putidaにおいてLAの分解を可能にする経路には5種類の酵素が必要であり、この経路を遺伝子操作によって大腸菌(Escherichia coli)で実行できることを明らかにしている。この発見によって、バイオテクノロジーへの応用がさらに広がると考えられる。
D-Alanylation of teichoic acids contributes to Lactobacillus plantarum-mediated Drosophila growth during chronic undernutrition
doi: 10.1038/s41564-017-0038-x
栄養が制限されている状況のもとでは、乳酸菌の1種Lactobacillus plantarumの細胞壁のテイコ酸のD‐アラニル化修飾が、ショウジョウバエ(Drosophila)宿主の腸管内ペプチダーゼの発現と、その結果としてのショウジョウバエ宿主の成長に重要なことを明らかにしている。これは宿主と共生生物のさまざまな相互作用をさらに深く理解する手掛かりをもたらしている。
Fluorescent D-amino-acids reveal bi-cellular cell wall modifications important for Bdellovibrio bacteriovorus predation
doi: 10.1038/s41564-017-0029-y
多数の蛍光D-アミノ酸を取り込ませる手法を利用して、Bdellovibrio bacteriovorusによる捕食の過程において、宿主(捕食細菌)の細胞壁および獲物(被食細菌)の細胞壁が修飾されて、被食細菌の細胞壁に孔が形成されるが、L, D-トランスペプチダーゼの働きによってその細胞壁が補強されることを明らかにしている。
An integrative circuit–host modelling framework for predicting synthetic gene network behaviours
doi: 10.1038/s41564-017-0022-5
いろいろな合成遺伝子回路のさまざまな動き、およびこれらの遺伝子回路が宿主の生理機能に及ぼすさまざまな影響を予測するために、統合的にモデル化する枠組みを開発している。
Contribution of reactive oxygen species to thymineless death in Escherichia coli
doi: 10.1038/s41564-017-0037-y
チミン飢餓によって、多数の一本鎖DNA領域およびいろいろな活性酸素種が生成されて、DNA切断および細胞死が引き起こされることを明らかにしている。
Natural product diversity associated with the nematode symbionts Photorhabdus and Xenorhabdus
doi: 10.1038/s41564-017-0039-9
比較ゲノミクスおよび高分解能質量分析によって、Photorhabdus属およびXenorhabdus属のいろいろな細菌がコードする、生合成遺伝子クラスター群やさまざまな天然物の膨大な化学的多様性を明らかにしている。これらの細菌は、宿主である線虫と共生関係にあるだけでなく、昆虫病原物質を介しても相互作用している。
Structure of the calcium-dependent type 2 secretion pseudopilus
doi: 10.1038/s41564-017-0041-2
Klebsiella oxytoca由来の2型分泌装置の偽線毛の原子モデルによって、サブユニット間のいろいろな接触の包括的なネットワークを明らかにすると同時に、変異解析および機能解析によって、カルシウム結合サブユニットのPulGの折りたたみおよび安定性におけるカルシウムの役割を浮き彫りにしている。
CD14+CD16+ monocytes are the main target of Zika virus infection in peripheral blood mononuclear cells in a paediatric study in Nicaragua
doi: 10.1038/s41564-017-0035-0
ジカウイルス感染のヒト末梢血単核細胞での主要な標的は単球、特にCD14+CD16+単球であることを明らかにしている。この単球が、ジカウイルス感染患者およびin vitroで感染させた血液試料では増加していることを示した。
Interspecies quorum sensing in co-infections can manipulate trypanosome transmission potential
doi: 10.1038/s41564-017-0014-5
コンゴ・トリパノソーマ(Trypanosoma congolense)とブルース・トリパノソーマ(Trypanosoma brucei)の間でのクオラムセンシングが仲介する相互作用によって、ブルース・トリパノソーマの伝播可能な「ずんぐり型(stumpy form)」への分化が促進されることを明らかにしている。これは、重感染した際に起こる異種間のさまざまな相互作用によって、トリパノソーマ感染症の動態が調節されることを示唆している。
A viral protein antibiotic inhibits lipid II flippase activity
doi: 10.1038/s41564-017-0023-4
大腸菌(Escherichia coli)に感染するレビウイルスMのLysMという溶菌タンパク質が、リピドIIのフリッピングを阻害することによってペプチドグリカン合成を妨げる作用を持つ、新しい「タンパク質の抗生物質」であることを明らかにしている。
Communication via extracellular vesicles enhances viral infection of a cosmopolitan alga
doi: 10.1038/s41564-017-0024-3
Emiliania huxleyiという藻類が、これに特異的なEhVというウイルスに感染すると、ウイルスの崩壊および感染に影響する細胞外小胞の放出量が増加することを明らかにしている。この結果は、EhVが、藻類ブルームの過程で、この多数の細胞外小胞を利用して、効率的に藻類に感染していることを示唆している。
Metabolic crosstalk regulates Porphyromonas gingivalis colonization and virulence during oral polymicrobial infection
doi: 10.1038/s41564-017-0021-6
複数の微生物が口腔内感染していると、連鎖球菌が産生するパラ-アミノ安息香酸が、Porphyromonas gingivalisの定着を増強すると同時に、その病原性を低下させることを明らかにしている。
APOLs with low pH dependence can kill all African trypanosomes
doi: 10.1038/s41564-017-0034-1
アポリポタンパク質(APO)L1およびAPOL3をもとに作製されたいろいろな組換えタンパク質が、ブルース・トリパノソーマ(Trypanosoma brucei)のさまざまな病原性亜種を殺せることを明らかにしている。こうした組換えタンパク質には、マウスのガンビア・トリパノソーマ(T. b. gambiense)感染に対して有効なタンパク質バリアント(rPpMUT)が含まれており、これが睡眠病に対する治療薬になり得る可能性を示唆している。
Cryo-EM structure of the extended type VI secretion system sheath–tube complex
doi: 10.1038/s41564-017-0020-7
コレラ菌(Vibrio cholerae)由来のVI型分泌装置の伸長した鞘-管複合体の構造から、この鞘のコンホメーションが変化することで、内部の管が標的細胞に侵入できるようになる分子機構を明らかにしている。
CD81 association with SAMHD1 enhances HIV-1 reverse transcription by increasing dNTP levels
doi: 10.1038/s41564-017-0019-0
CD81がSAMHD1と相互作用して、プロテアソームによるSAMHD1の分解を引き起こすことで、初代ヒトT細胞においていろいろなデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)の利用能に影響を及ぼし、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の逆転写を増強することを示している。
Structural basis for the shielding function of the dynamic trypanosome variant surface glycoprotein coat
doi: 10.1038/s41564-017-0013-6
ブルース・トリパノソーマ(Trypanosoma brucei)由来の変異表面糖タンパク質(VSG)の複数の構造から、複数のVSGが異なるコンホメーションをとって、宿主の細胞膜に存在するさまざまな障害物に応答するので、VSGはいかなる時も保護外被を維持できることが示唆される。
Recovery of nearly 8,000 metagenome-assembled genomes substantially expands the tree of life
doi: 10.1038/s41564-017-0012-7
メタゲノムのアセンブリから7,903の細菌およびアーキアのゲノムが回収され、さまざまな公的ゲノムリポジトリが網羅している系統学的多様性が増大し、20の門候補の最初の代表種が示されている。
TRIM23 mediates virus-induced autophagy via activation of TBK1
doi: 10.1038/s41564-017-0017-2
TRIM23はウイルス誘導性オートファジーに必須の調節因子であり、数種類のRNAウイルスおよびDNAウイルスを制限する働きがあることを明らかにしている。K27を介したユビキチン化によって、TRIM23のGTPアーゼ活性が活性化され、TRIM23の再局在化および選択的オートファジーが引き起こされることを明らかにしている。
Asian Zika virus strains target CD14+ blood monocytes and induce M2-skewed immunosuppression during pregnancy
doi: 10.1038/s41564-017-0016-3
アフリカ系統のジカウイルス株およびエピデミック系統のジカウイルス株の両方がCD14+単球を標的としていること、また、妊娠中の女性では感染感受性が高まっていることを示している。そして、アフリカ系統のジカウイルス株はさまざまな炎症応答と関わっているのに対して、エピデミック系統のジカウイルス株は免疫寛容と関わっていることを明らかにしている。
A microfluidics-based in situ chemotaxis assay to study the behaviour of aquatic microbial communities
doi: 10.1038/s41564-017-0010-9
in situの走化性実験のためのマイクロ流体力学技術に基づく評価について説明している。
A myovirus encoding both photosystem I and II proteins enhances cyclic electron flow in infected Prochlorococcus cells
doi: 10.1038/s41564-017-0002-9
光化学系Iに関わる遺伝子群を持つシアノファージを単離している。このファージが宿主に感染すると、これらの遺伝子群が発現して、コードされるタンパク質が宿主の膜に挿入され、その結果として電子流が増強される。また、このような遺伝子群を持つファージは海洋環境に大量に存在している。
Efficient invasion by Toxoplasma depends on the subversion of host protein networks
doi: 10.1038/s41564-017-0018-1
トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)は、この寄生虫が産生するRON2、RON4およびRON5タンパク質を利用して、宿主のESCRT-I構成成分のALIXおよびTSG101を含むさまざまなタンパク質を、宿主細胞への侵入を可能にするムービングジャンクション(moving junction)という多分子構造に誘導することを明らかにしている。
Environmental drivers of a microbial genomic transition zone in the ocean’s interior
doi: 10.1038/s41564-017-0008-3
メタゲノム解析によって、限られた水深の範囲で、さまざまな微生物のゲノムの大きさおよびGC含量が微生物群集全体にわたって遷移することを明らかにして、栄養分の制限が海洋微生物のゲノムおよびプロテオームの進化の主要な原動力になっていることを示している。
An anti-CRISPR from a virulent streptococcal phage inhibits Streptococcus pyogenes Cas9
doi: 10.1038/s41564-017-0004-7
連鎖球菌の1種であるテルモフィルス菌(Streptococcus thermophilus)のビルレントファージが、抗CRISPRタンパク質の遺伝子を持つことを明らかにしている。この抗CRISPRタンパク質は、さまざまな細菌のCRISPR–Cas9に対して阻害活性を示し、ゲノム工学で一般的に使われている化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)のCas9(SpCas9)系を阻害する。
Clonal differences in Staphylococcus aureus bacteraemia-associated mortality
doi: 10.1038/s41564-017-0001-x
全ゲノム関連研究の手法によって、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による死亡率と関連があるバイオフィルム形成および毒力の特性に、黄色ブドウ球菌の2つの代表的なクローンタイプ間で違いがあることを明らかにしている。
Gut-homing Δ42PD1+Vδ2 T cells promote innate mucosal damage via TLR4 during acute HIV type 1 infection
doi: 10.1038/s41564-017-0006-5
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)1型の急性感染の際に、Δ42PD1を発現しているγδ T細胞のサブセットが腸へとホーミングし、Toll様受容体4(TLR4)とΔ42PD1の直接の相互作用によって自然免疫および炎症応答を活性化することを示している。この経路を阻止すると粘膜損傷が抑えられる。
Hexahydroquinolines are antimalarial candidates with potent blood-stage and transmission-blocking activity
doi: 10.1038/s41564-017-0007-4
ヘキサヒドロキノリン類(hexahydroquinolines)という新種の抗マラリア薬は、赤血球内の熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)による宿主ヘモグロビンのエンドサイトーシスを阻害し、治療活性と伝播阻止活性を兼ね備えていることを明らかにしている。
Broadly protective murine monoclonal antibodies against influenza B virus target highly conserved neuraminidase epitopes
doi: 10.1038/s41564-017-0011-8
この研究は、B型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ酵素の活性部位から離れた部位を標的とする、複数の広域防御性抗体を同定したことについて報告している。これらの抗体をマウスに1回投与すると、現在の標準治療薬の複数回投与よりも優れた防御効果を示すことを明らかにした。
Group A streptococcal M protein activates the NLRP3 inflammasome
doi: 10.1038/s41564-017-0005-6
A群連鎖球菌(group A Streptococcus)のMタンパク質という病原性因子は、感染の際にインフラマソームの活性化を誘導することを明らかにしている。
Specific inhibition of NLRP3 in chikungunya disease reveals a role for inflammasomes in alphavirus-induced inflammation
doi: 10.1038/s41564-017-0015-4
チクングニアウイルスに感染すると、関節炎に似た痛みを伴う関節の炎症が引き起こされる。この研究は、アルファウイルスに誘発される炎症においてNLRP3インフラマソームが重要な役割を果たしていること、また、NLRP3インフラマソームの阻害が有効な治療戦略になることを示している。
A plasmid from an Antarctic haloarchaeon uses specialized membrane vesicles to disseminate and infect plasmid-free cells
doi: 10.1038/s41564-017-0009-2
ウイルスと同様に、膜小胞に包まれて伝播できる高度好塩性アーキア由来プラスミドについて報告している。このプラスミドにコードされる複数のタンパク質は、宿主の膜および膜小胞に挿入され得るので、プラスミドとウイルスとの進化的なつながりについての手掛かりをもたらしている。
Stress and stability: applying the Anna Karenina principle to animal microbiomes
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.121
アンナ・カレーニナの原則の影響(すなわち、ストレスを受けている状態で微生物群集の構成の変動を増加させるさまざまな変化)が、いろいろな動物のマイクロバイオームに共通する重要な応答であって、 実際より少なく報告されてきたということについて論じる。
Translational fidelity and mistranslation in the cellular response to stress
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.117
この総説では、タンパク質の翻訳を忠実に遂行する仕組みと、翻訳の誤りのさまざまな利点について解説する。
Coordinated regulation of growth, activity and transcription in natural populations of the unicellular nitrogen-fixing cyanobacterium Crocosphaera
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.118
Crocosphaeraの自然個体群におけるin situ解析によって、さまざまな代謝経路の転写産物の存在量に日内周期があることを明らかにし、これらのシアノバクテリアが窒素固定を担う主要な微生物であり、一次生産力に寄与していることを示している。
Mechanical strain sensing implicated in cell shape recovery in Escherichia coli
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.115
大腸菌(Escherichia coli)の細胞がまっすぐな桿状形態をとることは、機械的ひずみを感知する増殖様式に合致する。
Biphasic growth dynamics control cell division in Caulobacter crescentus
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.116
Caulobacter crescentusの細胞の伸長および分裂の過程においては、二相性の増殖モデルが観察される。
Architecture of the type IV coupling protein complex of Legionella pneumophila
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.114
Legionella pneumophilaのDotLのC末端側伸長部分と、その結合相手分子であるDotN、IcmS、IcmWおよびLvgAの構造を解析することによって、この細菌のIV型分泌装置(T4SS)がさまざまなT4SSエフェクタータンパク質の誘導を仲介する仕組みを明らかにしている。
Identification and pathological characterization of persistent asymptomatic Ebola virus infection in rhesus monkeys
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.113
適切なモデルがないことが、エボラウイルス(EBOV)の持続生残および続発症に関する研究を妨げてきたが、今回、EBOV感染を生き延びたアカゲザルにおいて、EBOVの持続増殖が起こっていたことを明らかにしている。進行性EBOVは、潜在的なEBOVリザーバーとしてCD68<sup>+</sup>細胞を用いて、眼、脳および精巣に広がる。
Bacteriophage evolution differs by host, lifestyle and genome
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.112
ファージの遺伝的モザイクが、さまざまな多様性や遺伝的に別々の集団を生み出しているのかどうかは、はっきりしていない。この論文では、ファージの宿主、増殖様式および遺伝的構成によって遺伝子の水平伝播の範囲が異なる2つの機序でファージが進化することを示している。
Structural basis for human respiratory syncytial virus NS1-mediated modulation of host responses
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.101
この研究では、ヒトRSウイルス(ヒト呼吸器合胞体ウイルス:hRSV)のNS1という非構造タンパク質の結晶構造を報告している。NS1に特有の複数の構造領域を同定して、これらの領域が、宿主の遺伝子発現を調節するほか、I型インターフェロン(IFN-I)経路の阻害および樹状細胞の成熟の抑制に寄与することを示し、hRSVの弱毒化につながる新たな道を示している。
ETX2514 is a broad-spectrum β-lactamase inhibitor for the treatment of drug-resistant Gram-negative bacteria including Acinetobacter baumannii
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.104
Acinetobacter baumanniiを含む多剤耐性病原菌と闘うことができる広域スペクトルのβ-ラクタマーゼ阻害剤の開発について報告している。
Division site selection linked to inherited cell surface wave troughs in mycobacteria
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.94
マイコバクテリアの細胞の波状の表面には、母細胞(や祖母細胞)から受け継いだ複数の波形のくぼみが含まれており、これが染色体の配置と組み合わさって、細胞分裂が起こる場所を決めていることを明らかにしている。
Illuminating vital surface molecules of symbionts in health and disease
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.99
代謝標識法を利用して、腸内の生細菌のペプチドグリカン、リポ多糖および莢膜多糖を同時にタグ付けする、つまりin vivoでのペプチドグリカン標識によって、生きている哺乳類宿主内での宿主と細菌のさまざまな相互作用を明らかにしている。
Type VI secretion TssK baseplate protein exhibits structural similarity with phage receptor-binding proteins and evolved to bind the membrane complex
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.103
VI型分泌装置の尾部基盤の中心的構成要素であるTssKタンパク質の結晶構造を解析することによって、ファージの受容体結合タンパク質との構造的類似性を明らかにしている。
Nutrient recycling facilitates long-term stability of marine microbial phototroph–heterotroph interactions
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.100
in situの条件下で、シネココッカス属(Synechococcus)の光合成栄養細菌とロゼオバクター属(Roseobacter)の従属栄養細菌を長期間共培養する実験を行うことにより、さまざまな安定した相利共生的相互作用を維持するには、栄養分の循環が重要なことを明らかにしている。
The importance of anabolism in microbial control over soil carbon storage
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.105
微生物の同化作用と土壌微生物炭素ポンプによって微生物ネクロマスの蓄積と安定化が制御される仕組み(entombing effect)を解説する。
Surface-attached molecules control Staphylococcus aureus quorum sensing and biofilm development
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.80
クオラム調節ペプチドが共有結合によって表面に付着することにより、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のバイオフィルム形成が制御される。
Short-chain alkanes fuel mussel and sponge Cycloclasticus symbionts from deep-sea gas and oil seeps
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.93
イガイや海綿の共生細菌であるサイクロクラスティカス属(Cycloclasticus)細菌は、深海の油徴とガス徴に生息し、短鎖アルカンを一次エネルギー源として利用する能力を有していることから、化学合成共生に関するさらなる知見をもたらしている。
HBV RNA pre-genome encodes specific motifs that mediate interactions with the viral core protein that promote nucleocapsid assembly
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.98
B型肝炎ウイルスのヌクレオキャプシドの組立て経路は、プレゲノムとコアタンパク質の塩基配列特異的相互作用によって決まり、この相互作用が引き金となってウイルス様粒子が形成される。コアタンパク質とRNAの接触は、プレゲノムの構成を調節して、逆転写を促進している可能性がある。
Excess of non-conservative amino acid changes in marine bacterioplankton lineages with reduced genomes
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.91
スリム化したゲノムを有する海洋微生物の変異解析が行われ、より大きなゲノムを有する近縁系統と比べて有害なラジカル(非保存的)アミノ酸置換が過剰に存在することが判明し、遺伝的浮動が重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。
Attenuation of RNA viruses by redirecting their evolution in sequence space
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.88
ウイルスの弱毒化は、ワクチン株を得るために利用されている。この研究では、RNAウイルスの急速な進化を利用し、点変異により終止コドンが生じにくい部位をコードするゲノム部分を操作した。これは弱毒化ウイルスを生成する巧妙な方法と言える。
Epigenetic silencing of IRF1 dysregulates type III interferon responses to respiratory virus infection in epithelial to mesenchymal transition
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.86
この研究では、間葉系様の細胞への再プログラム化が起こった気道上皮細胞において呼吸器ウイルスの複製が促進される機構を調べて、インターフェロン経路のエピジェネティックサイレンシングが関係していることを示している。
Discovery of extremely halophilic, methyl-reducing euryarchaea provides insights into the evolutionary origin of methanogenesis
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.81
Methanonatronarchaeiaは、識別可能な高度好塩性メタン生成菌の綱レベルの系統で、典型的なメタン生成の特徴は見られないが、カリウムの細胞内濃度が高いため、カリウムによる浸透圧防御が示唆されている。
A stabilized microbial ecosystem of self-limiting bacteria using synthetic quorum-regulated lysis
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.83
直交する合成溶菌回路によって、代謝的に競合する細菌の安定な共培養が促進される。
A parts list for fungal cellulosomes revealed by comparative genomics
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.87
この研究では、真菌セルロソームの組立てに非常に重要なタンパク質が同定され、この複合体が進化的にキメラであり、腸内で共存する細菌から、この独立に進化した真菌複合体に触媒活性を取り入れたことが明らかになった。
Toxoplasma depends on lysosomal consumption of autophagosomes for persistent infection
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.96
トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)のVAC(vacuolar compartment)に局在するシステインプロテアーゼの阻害により、慢性感染の際に、この寄生虫が細胞内で生存するためにはオートファジーが必要であることが明らかになった。
Metabolic anticipation in Mycobacterium tuberculosis
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.84
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)は、低酸素条件下に置かれると、代謝を適応させて中間体を産生することで、ペプチドグリカン生合成再開に備えており、再び正常酸素条件下に置かれた時に直ちに利用できるようにしている。
Co-infecting microorganisms dramatically alter pathogen gene essentiality during polymicrobial infection
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.79
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の増殖に必要な遺伝子の全体像は、重感染によって変化する。
A decade of discovery: CRISPR functions and applications
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.92
この総説では、HorvathおよびBarrangouが、原核生物において適応免疫機構として働くCRISPR-Cas系の発見につながった出来事をふり返り、CRISPR-Cas系の分子装置の研究から浮かび上がった技術的応用について詳しく調べて説明している。
Zooming in on the phycosphere: the ecological interface for phytoplankton–bacteria relationships
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.65
この総説では、個々の植物プランクトン細胞を取り巻く藻圏(phycosphere)という微小環境の物理学的特徴、化学的特徴および生態学的特徴と、水生生態系での植物プランクトンと細菌の相互作用における藻圏の重要性について解説している。
LUBAC-synthesized linear ubiquitin chains restrict cytosol-invading bacteria by activating autophagy and NF-κB
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.63
ネズミチフス菌(Salmonella Typhimurium)ではE3リガーゼのLUBAC(ユビキチンリガーゼ複合体)により、ユビキチンに覆われた細菌表面に直鎖状ポリユビキチン鎖がまだら状に生じることを明らかにしている。この直鎖状ポリユビキチン鎖は、ゼノファジーに関与するオプチニューリン、およびNF-κBの局所的活性化に関与するNemoを呼び寄せるシグナル伝達のプラットフォームの役割を果たしていることを明らかにした。
Linear ubiquitination of cytosolic Salmonella Typhimurium activates NF-κB and restricts bacterial proliferation
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.66
脱ユビキチン化酵素のOTULINが、細胞質に侵入したネズミチフス菌(Salmonella Typhimurium)の表面にまだら状に分布する直鎖状ユビキチン鎖(M1鎖)を標的として、NEMO、IKKα/IKKβ、NF-κBのシグナル伝達を調整し、さまざまな炎症性サイトカインの分泌および細菌の増殖を調節していることを明らかにしている。
Longevity of major coenzymes allows minimal de novo synthesis in microorganisms
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.73
大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、および出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のメタボロミクス解析を行い、他の代謝産物とは異なって、ピリドキサール5’-リン酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、補酵素Aおよび種々のフラビンなどの補酵素群は、in vivoで寿命が長く、何世代にもわたって伝達されることを示している。
Regulation of PfEMP1–VAR2CSA translation by a Plasmodium translation-enhancing factor
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.68
熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のPTEFは翻訳促進因子であり、リボソームと相互作用してPfEMP1(Plasmodium falciparum erythrocyte membrane protein 1)ファミリーのVAR2CSA(Variant Surface antigen 2-CSA)タンパク質の翻訳を促進する。このタンパク質は妊娠関連マラリアの際に、感染赤血球の胎盤への接着を仲介するリガンドとして機能する。
Variability and host density independence in inductions-based estimates of environmental lysogeny
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.64
マイトマイシンCによるファージ誘発実験を利用して、天然の混合群集における溶原細胞の割合を決定すると、大きなばらつきがあることと、細菌宿主の密度の影響を受けないことが明らかになり、溶原性を測定するには他の方法を開発して利用する必要があることを示唆している。
Nitric oxide prevents a pathogen-permissive granulocytic inflammation during tuberculosis
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.72
一酸化窒素の欠乏は、好中球による炎症の増加を通して、結核を助長することを明らかにしている。
Structure of the MacAB–TolC ABC-type tripartite multidrug efflux pump
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.70
三者複合体を形成して機能するMacA-MacB-TolC多剤排出輸送体の低温電子顕微鏡構造を示している。
The Magnaporthe oryzae nitrooxidative stress response suppresses rice innate immunity during blast disease
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.54
イネいもち病菌(Magnaporthe oryzae)のニトロン酸モノオキシゲナーゼのNMO2は、イネ科植物において有害な脂質ニトロ化および宿主の活性酸素種(ROS)を媒介とした自然免疫応答の阻止に必要であり、NMO2のおかげでイネいもち病菌の生体栄養性増殖が可能になることを示している。
Structural basis for λN-dependent processive transcription antitermination
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.62
構造的な特徴付けを行い、λファージのNタンパク質に依存する前進的な抗転写終結の背後にある機構の手掛かりを得ている。
Structure of the hexagonal surface layer on Caulobacter crescentus cells
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.59
C. crescentusのS層(surface layer:表層)の構造を、唯一のS層タンパク質のX線結晶構造および細胞の柄部のcryo-ET(低温電子線トモグラフィー法)を組み合わせることによって明らかにしている。この解析によって得られたモデルは、S層が多孔性で、多数のカルシウムイオンによって安定化されていることを示している。
Multi-virion infectious units arise from free viral particles in an enveloped virus
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.78
水泡性口内炎ウイルスが、集合により感染性単位を作りあげて、複数のビリオンが集団として細胞に侵入できるようにしていることを明らかにしている。この集合体は、宿主の体液中で形成が促進され、ウイルスの力価を減少させるほか、ウイルスの進化と抗ウイルス防御の両方を促進することもあり得ることを示している。
Convergent evolution of a modified, acetate-driven TCA cycle in bacteria
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.67
改変された酢酸駆動型の不完全なTCA回路が、細菌門全体にわたってよく見られることを明らかにしている。
Microorganisms and ocean global change
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.58
この総説では、海洋の炭素循環および窒素循環に重要な役割を担っているさまざまな微生物が、地球の海洋生態系で起こる人為的起源の変化にどのように応答するかを検討している。
The path towards microbiome-based metabolite treatment
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.75
本稿では、SuezおよびElinavが、腸内マイクロバイオームによって分泌、修飾あるいは分解された代謝産物の利用に基づいた治療手法の可能性、およびこの治療手法を実施するために重要ないくつかの課題について記述している。
Bap180/Baf180 is required to maintain homeostasis of intestinal innate immune response in Drosophila and mice
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.56
ショウジョウバエ(Drosophila)の腸のBap180タンパク質は、病原細菌および共生細菌の両方に応答して、Relish転写因子が媒介する免疫不全によって誘導される。Bap180は、フィードバック機構によって、免疫不全シグナル伝達を抑制するとともに、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーに属する炎症促進性遺伝子のeigerの発現を抑制して、組織損傷を制限し、ハエの寿命を延ばすことができる。
Trypanosoma brucei metabolism is under circadian control
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.32
ヒトの睡眠病の原因となるブルース・トリパノソーマ(Trypanosoma brucei)が、固有の概日時計を持つことを示している。この概日時計は、代謝を調節しており、薬剤に対する感受性に影響を及ぼす。
Identification of Zika virus epitopes reveals immunodominant and protective roles for dengue virus cross-reactive CD8+ T cells
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.36
ジカウイルス(ZIKV)に特異的な複数のヒトHLAエピトープと、ZIKVおよびデングウイルス(DENV)に交差反応性を示す複数のヒトHLAエピトープを、ナイーブなマウスおよびDENV免疫マウスにおいて同定し、DENVによる免疫という状況で変化した免疫優性のパターンと、ZIKVに対するエピトープに特異的なCD8+T細胞の防御的役割を明らかにしている。
Global analysis of biosynthetic gene clusters reveals vast potential of secondary metabolite production in Penicillium species
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.44
アオカビ属(Penicillium)の9種のゲノム塩基配列を新たに解読し、これらを含めて24種のアオカビ属(Penicillium)のゲノム塩基配列の比較解析を行っている。1000を越える二次代謝産物遺伝子クラスターの特性を調べ、そのうちのいくつかの遺伝子クラスターについて実験的に検証し、これらの真菌が生理活性化合物の重要な未開発資源であることを明らかにしている。
Malaria parasites possess a telomere repeat-binding protein that shares ancestry with transcription factor IIIA
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.33
熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のテロメア反復配列に結合するジンクフィンガータンパク質(PfTRZ)は、テロメア、サブテロメア領域のvar遺伝子群、5SリボソームDNA遺伝子群に結合する。PfTRZは、この寄生虫において、テロメア長の恒常性および細胞周期の進行を含めた、さまざまな過程を調節している。
Widespread distribution of encapsulin nanocompartments reveals functional diversity
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.29
バイオインフォマティクス解析によって、原核生物において、さまざまな機能を遂行している積み荷タンパク質を包み込んでいる900以上のencapsulin nanocompartmentを同定している
Mefloquine targets the Plasmodium falciparum 80S ribosome to inhibit protein synthesis
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.31
低温電子顕微鏡構造によって、抗マラリア薬メフロキンの作用機構の1つを明らかにしている。すなわち、メフロキンは、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の80Sリボソームに結合して、この寄生虫のタンパク質合成を阻害する。
Cyclic-di-GMP regulates lipopolysaccharide modification and contributes to Pseudomonas aeruginosa immune evasion
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.27
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の感染の際には、c-di-GMP(cyclic-di-GMP)シグナル伝達が緑膿菌のリポ多糖の修飾を引き起こして、宿主による炎症応答を減少させる。
Guide-independent DNA cleavage by archaeal Argonaute from Methanocaldococcus jannaschii
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.34
アーキアの1種Methanocaldococcus jannaschiiのアルゴノートタンパク質(MjAgo)は、カノニカルなガイド鎖依存性エンドヌクレアーゼ活性の他に、ガイド鎖がなくてもDNAを切断できる活性を持つため、MjAgoはプラスミドやゲノムDNAをプロセシングすることができる。
Structural and mechanistic insights into an archaeal DNA-guided Argonaute protein
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.35
アーキアの1種Methanocaldococcus jannaschiiのアルゴノートタンパク質(MjAgo)の結晶構造を、アポ状態と、ガイドDNAに結合している複合体の状態で解析し、アーキアのDNAが誘導するDNAサイレンシングを推進する分子機構を明らかにしている。
Retroelement-guided protein diversification abounds in vast lineages of Bacteria and Archaea
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.45
DGR(diversity-generating retroelement)が、CPR(candidate phyla radiation;複数の門候補からなる放散)門に属する細菌と、DPANN(Diapherotrites、Parvarchaeota、Aenigmarchaeota、NanoarchaeotaおよびNanohaloarchaea)門に属するアーキアの縮小型ゲノムには大量に存在しており、シグナル伝達、転写調節、接着および防御に関与するさまざまなタンパク質の超可変性の原動力になっている。
Structure of the mycobacterial ESX-5 type VII secretion system membrane complex by single-particle analysis
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.47
電子顕微鏡構造の単粒子解析により、マイコバクテリアのVII型(別名ESX)分泌系の膜結合性ESX-5複合体の分子構造を解明している。
An insider's perspective: Bacteroides as a window into the microbiome
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.26
バクテロイデス属(Bacteroides)細菌の腸内定着および持続生残の仕組みを概説している。この仕組みは、微生物相に含まれる他の微生物種の生物学的性質を理解するための枠組みとして役立つ可能性もある。
Next-generation probiotics: the spectrum from probiotics to live biotherapeutics
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.57
伝統的なプロバイオティクスから得られた教訓が、次世代のプロバイオティクスならびに生きて腸まで届くバイオ医薬品、創薬に適した微生物の探究、そして、そのために必要な規制の枠組みについて、どのような情報を提供するかを解説している。
Systems-based analysis of RIG-I-dependent signalling identifies KHSRP as an inhibitor of RIG-I receptor activation
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.22
この研究では、レチノイン酸誘導遺伝子I(retinoic acid-inducible gene I:RIG-I)というRNAセンサーを調節する種々の因子を明らかにしている。この経路は、折りたたみ不全タンパク質の蓄積によって生じる小胞体ストレス応答、Wntシグナル伝達およびRNA代謝を含む、多種多様な過程によって調節されている。スプライシングの調節因子であるKHSRP(K-Homology Splicing Regulatory Protein)が、RIG-Iの負の調節因子であり、in vivo においてインフルエンザウイルスの複製に影響を及ぼすことが明らかにされている。
A Mesh–Duox pathway regulates homeostasis in the insect gut
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.20
Meshという腸管膜関連タンパク質は、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)およびキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)において、アレスチンが媒介するMAPK JNK/ERKリン酸化カスケードを介してDuox(dual-oxidase)の発現を調節することによって、腸内細菌の増殖を制御している。
A global analysis of transcription reveals two modes of Spt4/5 recruitment to archaeal RNA polymerase
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.21
Methanocaldococcus jannaschii における転写を解析して、Spt4/5がアーキアの一般的な伸長因子であり、2つの仕組みでRNAポリメラーゼに誘導されることを明らかにしている。
A tool named Iris for versatile high-throughput phenotyping in microorganisms
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.14
コロニーを利用して表現型スクリーニングを行う画像解析ツールを開発している。
Dynamics of the human gut microbiome in inflammatory bowel disease
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.4
炎症性腸疾患における腸内マイクロバイオームの長期間にわたる動的挙動を詳細に分析し、健康な人に観察される正常な変動と比較すると、いろいろな炎症性腸疾患の患者は、新たに定義した“健康な人の平面(healthy plane)”から大きく逸脱していることを実証している。
Dengue virus NS2B protein targets cGAS for degradation and prevents mitochondrial DNA sensing during infection
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.37
この研究は、デングウイルス感染の際にミトコンドリアDNAが細胞質中に漏出して、環状GMP-AMP合成酵素(cyclic GMP-AMP synthase:cGAS)というDNAセンサーが活性化することを示している。デングウイルスのNS2Bは、cGASをリソソームによる分解の標的とさせ、ウイルス感染細胞におけるI型インターフェロン応答を阻害する。
N-terminomics identifies Prli42 as a membrane miniprotein conserved in Firmicutes and critical for stressosome activation in Listeria monocytogenes
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.5
リステリア属細菌の1種であるListeria monocytogenes のプロテオームの解析および注釈付けによって、この細菌のストレソソーム応答に必要な小さなタンパク質を明らかにしている。
LoaP is a broadly conserved antiterminator protein that regulates antibiotic gene clusters in Bacillus amyloliquefaciens
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.3
Bacillus amyloliquefaciensにおいて、抗生物質遺伝子クラスターは、LoaPという進化的に保存された抗転写終結タンパク質によって調節されている。
Dimethylsulfoniopropionate biosynthesis in marine bacteria and identification of the key gene in this process
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.9
海洋の従属栄養細菌が、メチルトランスフェラーゼ遺伝子のdsyBを介して、ジメチルスルホニオプロピオナート(DMSP)というシグナル伝達分子を産生することから、大型海藻および植物プランクトンに加えて、細菌が海洋のDMSPプールに寄与していることが示唆される。
A Wolbachia deubiquitylating enzyme induces cytoplasmic incompatibility
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.7
昆虫の生殖の過程で生じる細胞質不和合は、ボルバキア属(Wolbachia)細菌のCidBという脱ユビキチン化酵素によって誘導される。CidBは、CidBに結合するCidAタンパク質とともに、2つの遺伝子からなるオペロンにコードされている。
Pentamidine sensitizes Gram-negative pathogens to antibiotics and overcomes acquired colistin resistance
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.28
グラム陰性細菌の外膜を透過する化合物のスクリーニングを行い、臨床的に承認されているペンタミジンという抗原虫薬が、薬剤耐性の病原性グラム陰性細菌の新しい種類の抗生物質に対する感受性を上昇させることを見いだしている。
Plasmodium falciparum CRK4 directs continuous rounds of DNA replication during schizogony
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.17
熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)に特異的なPfCRK4というキナーゼは、シゾントにおけるDNA複製を調節する重要な因子であり、マラリアに感染しているヒトの赤血球の中で原虫が増殖する時期および伝播の両方に必要である。
Insect symbiotic bacteria harbour viral pathogens for transovarial transmission
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.25
イネ萎縮病ウイルスのキャプシドタンパク質は、ツマグロヨコバイの絶対共生細菌であるSulcia属細菌の外膜タンパク質と結合する。これによってウイルスは、共生細菌が卵母細胞に入り込む通路を乗っ取り、経卵感染する。
Geomicrobiology of the built environment
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.275
環境の地球微生物学的研究は構築環境のマイクロバイオームの構造および機能についての知識をもたらす。
Why prokaryotes have pangenomes
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.40
集団遺伝学の理論と遺伝子の水平伝播のモデルを融合することによって、原核生物のパンゲノムが中立進化ではなく、適応進化から生じることが示唆される。
Antibody-independent mechanisms regulate the establishment of chronic Plasmodium infection
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.276
齧歯類モデルでは、感染した寄生性のマラリア原虫(Plasmodium)のうち、病原性に関連するいくつかのpir遺伝子クラスターのうちの1つを発現しているごく少数の原虫だけが、適応免疫とは無関係な仕組みで慢性感染を確立している。
Programmable transcriptional repression in mycobacteria using an orthogonal CRISPR interference platform
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.274
マイコバクテリアにおけるCRISPR干渉の効率を改善する目的で、Cas9のオルソログのスクリーニングを行い、広範な標的遺伝子の発現をノックダウンする機能を持った4つのCas9オルソログを同定している。そのうちの1つ(dCas9Sth1)は、最小限のタンパク質毒性で従来法の20~100倍の効率で内在性遺伝子の発現をノックダウンする。
Continental-scale pollution of estuaries with antibiotic resistance genes
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.270
中国沿岸の4000 km以上にわたる領域の18か所の河口から採取した堆積物を調査し、多種多様な抗生物質耐性遺伝子が大量に存在することを明らかにしている。社会経済的な要因の分析によって、抗生物質耐性遺伝子の存在が人間の活動と相関することが示唆される。
Wall teichoic acids mediate increased virulence in Staphylococcus aureus
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.257
市中感染型メチシリン耐性の黄色ブドウ球菌(Staphulococcus aureus)は細胞壁成分のテイコ酸の産生量が増えており、このテイコ酸産生の増加が毒力および膿瘍形成と相関している。
The signal recognition particle contacts uL23 and scans substrate translation inside the ribosomal tunnel
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.265
リボソームタンパク質uL23は、シグナル認識粒子と接触して、新生ポリペプチドの翻訳状態を監視している。
Myeloperoxidase targets oxidative host attacks to Salmonella and prevents collateral tissue damage
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.268
ミエロペルオキシダーゼは、H2O2を拡散しにくいHOClに変換することにより、サルモネラ属細菌(Salmonella)感染の過程で、抗菌活性を病原菌の表面に留めて、宿主にバイスタンダー損傷が及ぶことを抑える。
A novel pre-fusion conformation-specific neutralizing epitope on the respiratory syncytial virus fusion protein
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.271
呼吸器合胞体ウイルスの融合に関係するFタンパク質の融合前コンホメーションを認識する、複数のヒト中和モノクローナル抗体を単離して特性を解析し、これらの中和抗体の大部分がFタンパク質の球状頭部ドメインにある新しい抗原部位を標的とすることを示している。
Structural basis for antibody cross-neutralization of respiratory syncytial virus and human metapneumovirus
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.272
呼吸器合胞体ウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)およびヒトメタニューモウイルス(human metapneumovirus:HMPV)の融合に関係するFタンパク質に結合する交差反応性中和抗体の構造的基盤を、2つのそれぞれ独自に単離された関連抗体によって検討し、この両抗体とも、RSVとHMPVで保存されているFタンパク質表面領域と相互作用すること、このため交差反応性の出現が誘導される可能性があることを示している。
Architecture of the Vibrio cholera toxin-coregulated pilus machine revealed by electron cryotomography
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.269
低温電子線トモグラフィー法により、コレラ菌(Vibrio cholerae)のTCPM(toxin-coregulated pilus machine:毒素と同時調節される線毛装置)に、IVa型線毛と類似性がありIVa型線毛から分岐したとみられる構造があることを明らかにしている。
Comprehensive resistome analysis reveals the prevalence of NDM and MCR-1 in Chinese poultry production
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.260
疫学的な検体採取を行い、中国の家禽類生産に関連がある場所の至るところに、コリスチンおよびカルバペネム系抗生物質耐性遺伝子が広がっていることを見いだしている。
Global and regional dissemination and evolution of Burkholderia pseudomallei
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.263
全ゲノム塩基配列解読によって類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)の伝播および進化の実態を明らかにしている。
EspL is a bacterial cysteine protease effector that cleaves RHIM proteins to block necroptosis and inflammation
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.258
腸管病原性の大腸菌(Escherichia coli)のEspLは、システインプロテアーゼであり、感染の過程でRHIM(receptor-interacting protein 〔RIP〕homotypic interaction motif)含有タンパク質を切断して、インフラマソームのシグナル伝達を阻止する。
The anti-inflammatory drug mesalamine targets bacterial polyphosphate accumulation
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.267
潰瘍性大腸炎のゴールドスタンダードの治療薬メサラミンは、腸内マイクロバイオームの多様な細菌の菌体内ポリリン酸濃度を急速に減少させることによって、細菌の酸化ストレスに対する感受性を増加させ、炎症部位に定着する細菌を減らし、持続生残菌およびバイオフィルム形成を減少させる。
Carcinogenesis and therapeutics: the microbiota perspective
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.8
この総説は、微生物相が発がんの促進あるいは抑制に果たす役割について説明し、腫瘍発生の際の治療法としての微生物の有用性に着目している。
Mechanisms of envelope permeability and antibiotic influx and efflux in Gram-negative bacteria
doi: 10.1038/nmicrobiol.2017.1
グラム陰性細菌における抗生物質の透過および排出の機構について明らかにする。
Microbial stimulation of different Toll-like receptor signalling pathways induces diverse metabolic programmes in human monocytes
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.246
リポ多糖(LPS)によるToll様受容体(TLR)4の刺激は解糖の増加と酸化的リン酸化の減少につながるが、複雑な微生物構成成分による刺激やTLR2リガンドであるPam3CysSK4(P3C)は解糖および酸化的リン酸化の両方の上方制御を誘導する。
CryoEM structure of the Methanospirillum hungatei archaellum reveals structural features distinct from the bacterial flagellum and type IV pilus
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.222
アーキアの鞭毛であるアーキア鞭毛(archaellum)の低温電子顕微鏡構造は、細菌の関連構造とは異なる特徴を持つことを示している。
RodA as the missing glycosyltransferase in Bacillus subtilis and antibiotic discovery for the peptidoglycan polymerase pathway
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.253
RodA は枯草菌(Bacillus subtilis)で見い出されたペプチドグリカンポリメラーゼである。枯草菌抽出物由来の低分子がこのペプチドグリカンポリメラーゼ経路を標的とし、抗生物質として働くことができる可能性がある。
Tuning a cellular lipid kinase activity adapts hepatitis C virus to replication in cell culture
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.247
C型肝炎ウイルス(HCV)が、Huh7肝がん細胞で複製するためには、細胞のホスファチジルイノシトール 4-キナーゼIIIα(PI4KA)の過剰活性化を妨げる変異を獲得する必要がある。さまざまなPI4KA特異的阻害剤が、適応していないウイルス分離株の複製を促進し、C型肝炎患者由来ウイルスの細胞培養での複製を可能にする。
Horizontally acquired AT-rich genes in Escherichia coli cause toxicity by sequestering RNA polymerase
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.249
大腸菌(Escherichia coli)において水平伝播によって獲得されたATに富む塩基配列には、RNAポリメラーゼを隔離して毒性を媒介する潜在性プロモーターが含まれている。
Prophage-mediated defence against viral attack and viral counter-defence
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.251
10種類の溶原マイコバクテリオファージの特性解析によって、そのファージと近縁または無関係な、溶菌あるいは溶原ファージによる感染を防ぐ少なくとも5種類のプロファージ発現性ウイルス防御系を明らかにしている。
GRIL-seq provides a method for identifying direct targets of bacterial small regulatory RNA by in vivo proximity ligation
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.239
RNAを直接、標的に連結して塩基配列を決定する方法によって、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)において細菌の低分子RNAの標的を同定することができる。
Modulation of membrane phosphoinositide dynamics by the phosphatidylinositide 4-kinase activity of the Legionella LepB effector
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.236
Legionella pneumophilaのエフェクターLepBは、ホスファチジルイノシトール-3,4-二リン酸(PtdIns(3,4)P2)を作り出す潜在性の脂質キナーゼドメインを持っている。LCV(Legionella-containing vacuole)膜でのホスファチジルイノシトール-4-リン酸(PtdIns4P)の生成には、LepBのキナーゼ活性とSidFのホスファターゼ活性が連続して働く必要がある。
CozE is a member of the MreCD complex that directs cell elongation in Streptococcus pneumoniae
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.237
CozE (coordinator of zonal elongation)タンパク質は、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)が分裂する際に、ペニシリン結合タンパク質(PBP)1aの局在化およびその酵素活性に必要なMreCD複合体の構成因子である。
Relic DNA is abundant in soil and obscures estimates of soil microbial diversity
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.242
光反応性のDNA挿入色素であるプロピジウムモノアジドを利用したviability PCR(viability polymerase chain reaction)から、土壌中の原核生物および真菌のDNAの平均して40%が、土壌中に残存している細胞外DNA、つまりもはや生きていない細胞に由来していること、これが微生物の豊富さとタクソンの相対的存在量の推定値を混乱させていることを明らかにした。
Comparative genomics provides a timeframe for Wolbachia evolution and exposes a recent biotin synthesis operon transfer
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.241
宿主の系統とおよそ200万年間、共分岐してきた4系統のボルバキア(Wolbachia)のゲノム解析から、ボルバキアのスーパーグループAとBの起源がおよそ2億年前にあることが示唆され、また、進化的に最近、完全なビオチン合成オペロンの水平伝播が起こった証拠を明らかにしている。
Origins of pandemic Vibrio cholera from environmental gene pools
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.240
ゲノム解析によって、パンデミックを起こすコレラ菌(Vibrio cholera)が、おそらく、宿主への定着と適合する対立遺伝子を持った環境中のコレラ菌株の一部を起源とすることが示唆される。
Induction and suppression of antiviral RNA interference by influenza A virus in mammalian cells
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.250
インフルエンザウイルスに感染するとウイルス二本鎖RNA前駆体が作り出され、これが宿主細胞のDicerによって低分子干渉RNAに変換される。このようなRNA干渉機構は、ウイルスの非構造タンパク質1(non-structural protein 1:NS1)によって阻害される。
Lactate signalling regulates fungal β-glucan masking and immune evasion
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.238
Candida albicansでは、乳酸への暴露に応答して、Gpr1受容体およびCrz1転写因子が関与するシグナル伝達経路を介して、β‐グルカンという重要な病原体関連分子パターン(PAMP)の遮蔽が誘発される。
Reduction of translating ribosomes enables Escherichia coli to maintain elongation rates during slow growth
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.231
抗生物質は、翻訳の伸長を遅らせるというよりも、活性のあるリボソームの割合を減らすが、この過程は、大腸菌(E. coli)がゆっくり増殖する条件に適応する際にも観察される。
A mouse model for MERS coronavirus-induced acute respiratory distress syndrome
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.226
CRISPR–Cas9を利用してジペプチジルペプチダーゼ4受容体をコードする遺伝子を改変することによって、マウスを中東呼吸器症候群コロナウイルス(Middle East respiratory syndrome coronavirus:MERS-CoV)に感受性にすると、肺でウイルスが効率よく増殖し、重症急性呼吸ストレスを示す症状が現れる。
Mycobacterium tuberculosis EsxH inhibits ESCRT-dependent CD4+ T-cell activation
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.232
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)のEsx-3 というVII型分泌装置によって分泌されるEsxHは、ESCRT(endosomal sorting complex required for transport)の機能を阻害し、感染の過程でT細胞への効率的な抗原提示を阻止する。
Dual-specificity phosphatase 6 deficiency regulates gut microbiome and transcriptome response against diet-induced obesity in mice
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.220
二重特異性ホスファターゼ6遺伝子(dusp6)欠損マウスは食餌性肥満になりにくい。dusp6欠損マウス由来の糞便微生物相を、高脂肪食を与えた無菌の野生型レシピエントマウスに移植すると、エネルギー消費の増加と、体重増加の低減が見られた。
An essential role for bacterial nitric oxide synthase in Staphylococcus aureus electron transfer and colonization
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.224
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、微好気性条件下および定着の過程で、一酸化窒素を産生して細菌の呼吸を調節し、膜電位を維持している。
Influence of early life exposure, host genetics and diet on the mouse gut microbiome and metabolome
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.221
遺伝的に多様なCollaborative Cross(CC)マウスシステムの研究によって、生後早期の生活史がマウスの腸内マイクロバイオームの組成に影響を及ぼすこと、また、食餌を変えても腸内マイクロバイオームに中程度の影響しかないとはいえ、腸内メタボロームを形作っているのは食餌だということを明らかにしている。
Unusual marine unicellular symbiosis with the nitrogen-fixing cyanobacterium UCYN-A
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.214
UCYN-Aとハプト植物ピコプランクトン藻類との共生は、海洋の窒素循環において重要な役割を果たしている。この共生関係は、淡水生態系に見いだされる共生の例に類似しているところがあるので、窒素固定を担う細胞小器官の進化を考える興味深い海洋環境モデルになるとはいえ、UCYN-Aに多様性が見られることは、多数の疑問が残されていることを意味している。
Origin of modern syphilis and emergence of a pandemic Treponema pallidum cluster
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.245
梅毒患者由来の検体をDNA捕捉技術および全ゲノム塩基配列解読技術を利用して解析し、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)の世界的大流行(パンデミック)の起源となる細菌集団(クラスター)を明らかにしている。
Genome-guided design of a defined mouse microbiota that confers colonization resistance against Salmonella enterica serovar Typhimurium
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.215
無菌マウスで確立されてしまえば、従来の微生物群集と同程度にネズミチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhimurium)に対する定着抵抗性を有する最小限の細菌群集を明らかにしている。
Lyme disease spirochaete Borrelia burgdorferi does not require thiamin
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.213
これまで全ての生物に不可欠だと考えられてきたチアミン(ビタミンB1)という化合物を除去しても、ライム病病原体 Borrelia burgdorferi の増殖や生存には影響がない。
Genomic diversity in Onchocerca volvulus and its Wolbachia endosymbiont
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.207
河川盲目症の病因となる回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)を世界規模で27分離株集めてゲノムを比較することにより、回旋糸状虫の進化史を解明するとともに、森林地帯の分離株、サバンナの分離株およびそれらの遺伝的混合が起こった分離株を区別することができる一連の祖先情報遺伝子座を明らかにしている。
The genome of Onchocerca volvulus, agent of river blindness
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.216
河川盲目症を引き起こす寄生虫である回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)およびそれと共生するボルバキア属(Wolbachia)細菌のゲノムの特性を解析して、治療に有効と考えられる標的を明らかにしている。
Aspergillus fumigatus CalA binds to integrin α5β1 and mediates host cell invasion
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.211
Aspergillus fumigatus の細胞壁表面に発現するタンパク質CalAは、宿主の上皮細胞および内皮細胞の表面にあるインテグリンα5β1と相互作用して肺への侵入を媒介することにより、エンドサイトーシスを誘導し、病原性を増強する。
Retroviruses integrate into a shared, non-palindromic DNA motif
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.212
レトロウイルスのHTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)およびHIV-1(ヒト免疫不全ウイルス1型)の個々の組み込み部位には、パリンドローム構造のヌクレオチド配列は存在しないが、宿主ゲノムのプラス鎖とマイナス鎖にほぼ等しい比率で見いだされる非パリンドローム構造のヌクレオチドモチーフにより、組み込み部位になりうるパリンドローム構造が集団平均で生じている。
Single-cell RNA-seq ties macrophage polarization to growth rate of intracellular Salmonella
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.206
単一細胞RNA塩基配列解読により、活発に複製しているサルモネラ(Salmonella)に感染したマクロファージでは炎症促進性のM1極性化免疫応答が起こること、また、そこに存在する感染していないマクロファージあるいは複製していないサルモネラに感染したマクロファージでは炎症抑制性のM2様免疫応答が起こることを見いだしている。
An HIV-1 antibody from an elite neutralizer implicates the fusion peptide as a site of vulnerability
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.199
さまざまなヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)株に対して強力なエリート中和抗体を保持する患者由来の1つのHIV-1広域中和抗体の低温電子顕微鏡構造により、将来の治療設計に利用できる可能性がある脆弱性のある部位として、エンベロープ糖タンパク質(Env)の融合ペプチドを明らかにしている。
Two fundamentally different classes of microbial genes
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.208
定常状態の進化モデルを利用してアーキアのゲノム進化について研究し、2種類の微生物遺伝子群、すなわち、即時的に遺伝子置換が起こる遺伝子群と、有限で分散型の置換率を持つ遺伝子群を見いだしている。
Deletion of toxin–antitoxin systems in the evolution of Shigella sonnei as a host-adapted pathogen
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.204
毒素–抗毒素系は、環境温度での病原性プラスミドの保持に関係している。つまり、毒素–抗毒素系の欠失は、人から人へと伝播可能な病原体としてのD群赤痢菌(Shigella sonnei)の進化を促進してきた可能性がある。
Culture of previously uncultured members of the human gut microbiota by culturomics
doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.203
培養技術を最適化することにより、ヒト腸内マイクロバイオームのレパートリーに含まれる1,057種の原核生物を同定できた。これによりヒトの腸から分離された微生物種の数がこれまでの2倍になった。
Structure to function of an α-glucan metabolic pathway that promotes Listeria monocytogenes pathogenesis
doi: 10.1038/microbiol.2016.202
リステリアの1種 Listeria monocytogenes の宿主への定着および感染に必要なシクロアルテルナン代謝経路の構造の特性を解析している。
Targeting the ATP-dependent formation of herpesvirus ribonucleoprotein particle assembly as an antiviral approach
doi: 10.1038/microbiol.2016.201
細胞のhTREX(human transcription/export complex)タンパク質UAP56のATPアーゼ活性を阻止する小分子阻害剤は、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)のウイルスリボ核タンパク質粒子(vRNP)の形成を妨げる。
Genome reduction in an abundant and ubiquitous soil bacterium ‘Candidatus Udaeobacter copiosus’
doi: 10.1038/microbiol.2016.198
“Candidatus Udaeobacter copiosus”が、1,000を超える土壌試料において最も大量に存在する微生物の1種であることを見いだしている。その小さいゲノムの代謝系を再構築した結果は、この土壌細菌がたくさんの栄養要求性を持った好気性従属栄養生物であることを示唆している。
Indexing the Pseudomonas specialized metabolome enabled the discovery of poaeamide B and the bananamides
doi: 10.1038/microbiol.2016.197
260株のシュードモナス(Pseudomonas)属細菌のメタボロームの索引作成によって、4つの分子、すなわち、poaeamideアナログ1つと、環状リポペプチドの分子サブファミリーに属する3つの分子、bananamide1、2および3の発見とこれらの進化的関係の探索が可能になった。
A mucosal imprint left by prior Escherichia coli bladder infection sensitizes to recurrent disease
doi: 10.1038/microbiol.2016.196
大腸菌(Escherichia coli)による膀胱感染の既往歴があるマウスは、エピジェネティックな機構を介して、上皮細胞の成熟が不完全になり、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)依存的な炎症が起こりやすくなり、その結果として将来繰り返し感染が起こりやすくなる。
Optical and force nanoscopy in microbiology
doi: 10.1038/microbiol.2016.186
光学フォースナノスコピー(optical and force nanoscopy)によって、微生物の細胞内や細胞外の構造を前例のない分解能で可視化することができる。この総説では、利用できる主要な光学フォースナノスコピー技術の原理、利点および限界について論じている。
Staphylococcus aureus inactivates daptomycin by releasing membrane phospholipids
doi: 10.1038/microbiol.2016.194
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、膜のリン脂質を放出して、ダプトマイシンを不活化している。
LadS is a calcium-responsive kinase that induces acute-to-chronic virulence switch in Pseudomonas aeruginosa
doi: 10.1038/microbiol.2016.184
カルシウムは、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)において、二成分情報伝達系のヒスチジンキナーゼLadSを活性化して、Gac/Rsm慢性型病原性調節プログラムを誘導する。
Nitrogen fixation in a chemoautotrophic lucinid symbiosis
doi: 10.1038/microbiol.2016.193
二枚貝であるトウブツキガイ(Codakia orbicularis)の硫黄酸化共生菌のゲノムには、生物学的窒素固定に必要な全てのタンパク質の遺伝子がある。この共生菌のニトロゲナーゼ還元酵素(NifH)は、海草堆積物と関係がある自由生活性で窒素固定を行うプロテオバクテリアのNifHと系統発生学的に近縁である。
Chemosynthetic symbionts of marine invertebrate animals are capable of nitrogen fixation
doi: 10.1038/microbiol.2016.195
二枚貝の1種Loripes lucinalisあるいは線虫の1種Laxus oneistusと共生関係にある化学合成性細菌のゲノムには窒素固定遺伝子群がコードされていることを見いだし、活発な窒素固定が起きていることを証明している。
Helicobacter pylori adhesin HopQ engages in a virulence-enhancing interaction with human CEACAMs
doi: 10.1038/microbiol.2016.189
ピロリ菌(Helicobacter pylori)の外膜タンパク質HopQは、ヒトのがん胎児性抗原関連細胞接着分子(carcinoembryonic antigen-related cell adhesion molecule;CEACAM)ファミリーの分子と結合し、アドヘシンとして働く。
Genome-scale analysis of the non-cultivable Treponema pallidum reveals extensive within-patient genetic variation
doi: 10.1038/microbiol.2016.190
臨床試料から直接にゲノム塩基配列を解読し、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)には宿主に感染している間に多様化が起きていることを示している。
Helicobacter pylori exploits human CEACAMs via HopQ for adherence and translocation of CagA
doi: 10.1038/microbiol.2016.188
ピロリ菌(Helicobacter pylori)の外膜タンパク質HopQは、ヒトのがん胎児性抗原関連細胞接着分子(carcinoembryonic antigen-related cell adhesion molecule;CEACAM)群と相互作用して細菌の接着を媒介する。
Secreted tryptophanyl–tRNA synthetase as a primary defence system against infection
doi: 10.1038/microbiol.2016.191
細菌感染の過程で、単球によってトリプトファニルtRNAシンテターゼが分泌される。これは、TLR4–MD2複合体を介してマクロファージに結合して、ファゴサイトーシスとケモカイン産生を誘導することによって、感染に対する第一の防御システムとして働く。
Whole genome-based population biology and epidemiological surveillance of Listeria monocytogenes
doi: 10.1038/microbiol.2016.185
系統発生学的解析により、リステリア菌(Listeria monocytogenes)分離株の集団構造と伝播の仕組みを明らかにして、疫学的調査の全球的枠組みを構築している。
Integrated multi-omics of the human gut microbiome in a case study of familial type 1 diabetes
doi: 10.1038/microbiol.2016.180
メタゲノム解析、メタトランスクリプトーム解析およびメタプロテオミクス解析を利用して、多数の1型糖尿病症例が認められる4つの家系由来の消化管内微生物相の分類学的特性と機能的特性を解明している。
The type VII secretion system of Staphylococcus aureus secretes a nuclease toxin that targets competitor bacteria
doi: 10.1038/microbiol.2016.183
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は自身のVII型分泌装置を利用して、競合する非免疫性細菌を標的とするヌクレアーゼを搬出する。
Asynchronous division by non-ring FtsZ in the gammaproteobacterial symbiont of Robbea hypermnestra
doi: 10.1038/microbiol.2016.182
線虫の1種Robbea hypermnestraと共生するガンマプロテオバクテリアは、宿主指向的に長軸方向に非同調的に分裂する。
Attached biofilms and suspended aggregates are distinct microbial lifestyles emanating from differing hydraulics
doi: 10.1038/microbiol.2016.178
河川生態系では水力学的条件によって、バイオフィルム群集を形成するか集塊群集を形成するかを決定する分類学的選択圧が生じることを実験的に証明している。
A quorum-sensing signal promotes host tolerance training through HDAC1-mediated epigenetic reprogramming
doi: 10.1038/microbiol.2016.174
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のクオラム・センシング分子である2-アミノアセトフェノン(2-AA)は、HDAC1の発現量と活性を上方制御して、サイトカインのプロモーターでのアセチル化を減少させ、感染過程に伴う宿主の寛容を促進する。
Methylotrophic methanogenesis discovered in the archaeal phylum Verstraetearchaeota
doi: 10.1038/microbiol.2016.170
Verstraetearchaeota門のアーキアのゲノムに、メチロトローフによるメタン生成に必要な多様なメチル補酵素M還元酵素遺伝子群がコードされていることが分かり、メタン生成菌の多様性および全球的なメタンサイクルの複雑さが増大している。
Dog and human inflammatory bowel disease rely on overlapping yet distinct dysbiosis networks
doi: 10.1038/microbiol.2016.177
炎症性腸疾患の根底にあるディスバイオーシス(構成バランス異常)ネットワークはヒトとイヌでは違っていて、いくつかの細菌種の役割がヒトとイヌの間ではディスバイオーシスの促進から抑制に切り替わっていた。イヌにおいてこのネットワークに寄与する細菌種の分類には糞便試料で十分だったが、ヒトの場合には粘膜生検が必要である。
A competitive trade-off limits the selective advantage of increased antibiotic production
doi: 10.1038/microbiol.2016.175
大腸菌(E. coli)においてコリスチン産生量を中程度にすると、近傍のコリスチン感受性菌を阻害することで受ける恩恵が最大になり、近くで増殖するコリスチン耐性の搾取菌(cheater)との生存競争は最小になる。
The dissemination of multidrug-resistant Enterobacter cloacae throughout the UK and Ireland
doi: 10.1038/microbiol.2016.173
全ゲノム塩基配列解読により、英国およびアイルランドにおける多剤耐性Enterobacter cloacae感染のまん延は、さまざまな地域社会で耐性菌株集団が生じることで推進されていることが示唆される。
Root-hair endophyte stacking in finger millet creates a physicochemical barrier to trap the fungal pathogen Fusarium graminearum
doi: 10.1038/microbiol.2016.167
シコクビエと根毛に生息するエンテロバクター属(Enterobacter)細菌種M6との共生によって、根毛の周囲に物理的障壁が作り出される。真菌(Fusarium graminearum)は、この障壁に捕捉され、M6が障壁多層構造の内部に放出する殺菌物質によって死滅する。
Co-transfer of blaNDM-5 and mcr-1 by an IncX3–X4 hybrid plasmid in Escherichia coli
doi: 10.1038/microbiol.2016.176
ハイブリッド接合性プラスミドがblaNDM-5遺伝子およびmcr-1遺伝子の一段階同時伝達を媒介し、β-ラクタム系抗生物質およびコリスチンへの耐性を与えることを見い出している。
A reference gene catalogue of the pig gut microbiome
doi: 10.1038/microbiol.2016.161
ブタの腸内マイクロバイオームの遺伝子カタログに770万個の重複しない遺伝子を記録した。機能性経路では、ヒトのカタログと96%が類似していること、また性別、年齢、宿主の遺伝学的性質および抗生物質投与の影響を受けることを明らかにしている。
Cross-reactive antibodies enhance live attenuated virus infection for increased immunogenicity
doi: 10.1038/microbiol.2016.164
不活化された日本脳炎ワクチンで免疫すると交差反応性抗体が生じて、次に弱毒生黄熱ワクチンを免疫した際にはその免疫原性が高められた。これは臨床試験において抗体依存的に感染が増進したことを実証している。
Bacterial cell wall biogenesis is mediated by SEDS and PBP polymerase families functioning semi-autonomously
doi: 10.1038/microbiol.2016.172
細胞が増殖するには、ペニシリン結合タンパク質(PBP)とともにトランスグリコシラーゼ活性を供給するSEDSファミリータンパク質のRodAが必要である。
UDP-galactose and acetyl-CoA transporters as Plasmodium multidrug resistance genes
doi: 10.1038/microbiol.2016.166
熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のこれまでに報告されていない2つの遺伝子、すなわちアセチルCoA輸送体遺伝子(pfact)とUDP-ガラクトース輸送体遺伝子(pfugt)の変異は、2種類のイミダゾロピペラジン抗マラリア化合物に対する耐性を伝達する。
Exploiting rRNA operon copy number to investigate bacterial reproductive strategies
doi: 10.1038/microbiol.2016.160
細菌ゲノムにあるリボソームRNA(rRNA)オペロンの数は、最大増殖率と正の関係があり、炭素利用効率とは負の関係にあるほか、走化性やゲノムの合理化などの特色の予測にも利用できる。
The small unicellular diazotrophic symbiont, UCYN-A, is a key player in the marine nitrogen cycle
doi: 10.1038/microbiol.2016.163
共生生物のシアノバクテリアUCYN-Aが、熱帯の北大西洋における窒素固定の約20%に寄与しており、これまで考えられていたよりも広範に、熱帯、温帯および極地の海洋に分布していることを見いだした。
Combating multidrug-resistant Gram-negative bacteria with structurally nanoengineered antimicrobial peptide polymers
doi: 10.1038/microbiol.2016.162
星形に設計したペプチドナノ粒子は、in vivoでさまざまな多剤耐性病原性グラム陰性細菌を殺菌する作用があり、宿主毒性は低く、耐性の獲得は観察されなかった。
Structural basis of haem-iron acquisition by fungal pathogens
doi: 10.1038/microbiol.2016.156
真菌が分泌するヘモフォア(haemophore)の結晶構造を、Candida albicans由来のCsa2について初めて報告し、病原性真菌がヘモグロビンからヘムを抽出して、それを自身の細胞質に移行させ、細胞質でヘムが鉄の供給源となる仕組みを理解する手掛かりを与えている。
Microbial metabolisms in a 2.5-km-deep ecosystem created by hydraulic fracturing in shales
doi: 10.1038/microbiol.2016.146
地表下生物圏の微生物群集は、メチルアミン循環を経てメタン生成を支えており、水圧破砕によって生じた亀裂の注入液を発酵することで持続できる。微生物による硫化物の産生は、貯留層の酸性化と基盤設備の腐食の一因となる。
Conserved patterns hidden within group A Streptococcus M protein hypervariability recognize human C4b-binding protein
doi: 10.1038/microbiol.2016.155
A群連鎖球菌(Streptococcus)の超可変性Mタンパク質の結晶構造によって、C4b結合タンパク質との結合を補完する保存された結合様式を明らかにしている。
Intra-host dynamics of Ebola virus during 2014
doi: 10.1038/microbiol.2016.151
西アフリカにおける最近のエボラウイルス大流行の間に感染した患者に由来する試料について、詳細な塩基配列解読を行い、エボラウイルスの核タンパク質をコードする遺伝子の発現を調節する変異などの宿主内一塩基多様性を明らかにしている。
Structure of human Aichi virus and implications for receptor binding
doi: 10.1038/microbiol.2016.150
子どもに重篤な胃腸炎を引き起こすが特性解析が進んでいないアイチ(愛知)ウイルスというピコルナウイルスの構造は、エンテロウイルスの構造とカルジオウイルスの構造の中間的性質を示し、その細胞の受容体を同定する手掛かりを与えている。
Rescue of non-human primates from advanced Sudan ebolavirus infection with lipid encapsulated siRNA
doi: 10.1038/microbiol.2016.142
ウイルスのVP35遺伝子を標的とするsiRNAを封入した脂質ナノ粒子を用いた治療によって、致死量のスーダンエボラウイルス(Sudan ebolavirus)を感染させたアカゲザルを救済することができる。
Cell-to-cell spread of microsporidia causes Caenorhabditis elegans organs to form syncytia
doi: 10.1038/microbiol.2016.144
細胞内寄生体の微胞子虫類は、宿主の細胞を再構築して隣り合う細胞どうしの融合を誘導することによって、胞子形成に依存せずに細胞間を伝播することができる。
Antibiotic-mediated gut microbiome perturbation accelerates development of type 1 diabetes in mice
doi: 10.1038/microbiol.2016.140
抗生物質を投与する期間と投与しない期間を周期的に繰り返すパルス療法は、非肥満糖尿病(NOD)マウスにおける1型糖尿病の発症率を上昇させた。この発症率の上昇は、腸内微生物の組成、脂質代謝、宿主のコレステロール生合成遺伝子の発現、Th17細胞とTreg細胞の比率の変化と関連していた。
Widespread formation of alternative 3′ UTR isoforms via transcription termination in archaea
doi: 10.1038/microbiol.2016.143
RNAの3′末端領域の塩基配列を解読し、数種のアーキア遺伝子には複数の連続して位置するターミネーターが含まれ、これによって転写の際には真核生物で観察されるのと類似した仕組みで、数種類の選択的3′非翻訳領域(3′ UTR)アイソフォームが生じることを明らかにしている。
NPF motifs in the vaccinia virus protein A36 recruit intersectin-1 to promote Cdc42:N-WASP-mediated viral release from infected cells
doi: 10.1038/microbiol.2016.141
ワクシニアウイルスは、宿主のタンパク質を動員して感染細胞からのウイルス放出を促進する。この役割を担うウイルスタンパク質A36には、宿主タンパク質のインターセクチン1およびEps15と相互作用する3つのNPF(Asn-Pro-Phe)モチーフが含まれている。
Structure of the essential Haemophilus influenza UDP-diacylglucosamine pyrophosphohydrolase LpxH in lipid A biosynthesis
doi: 10.1038/microbiol.2016.154
リピドX基質に結合したLpxH(リピドA生合成においてジアシルグルコサミンに作用するピロホスホヒドロラーゼ)の構造を示している。
Surveys, simulation and single-cell assays relate function and phylogeny in a lake ecosystem
doi: 10.1038/microbiol.2016.130
湖の生態系の内部で微生物群集と化学的勾配との空間的相関を観察し、硫酸塩還元能力がある生物が少数しか含まれていないことによって、微生物が協同して地球化学的機能を遂行することを立証している。
Suppression of autophagy and antigen presentation by Mycobacterium tuberculosis PE_PGRS47
doi: 10.1038/microbiol.2016.133
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)のPE_PGRS47タンパク質は、感染過程においてオートファジーの回避とMHC-IIによる抗原提示の防止に必要である。
Pseudomonas aeruginosa infection augments inflammation through miR-301b repression of c-Myb-mediated immune activation and infiltration
doi: 10.1038/microbiol.2016.132
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の感染は、TLR4依存性経路を介して宿主のmiR-301bというマイクロRNAを誘導し、c-Myb炎症性サイトカインシグナル伝達および好中球浸潤を阻止している。
The Mouse Intestinal Bacterial Collection (miBC) provides host-specific insight into cultured diversity and functional potential of the gut microbiota
doi: 10.1038/microbiol.2016.131
マウス腸内細菌コレクション(Mouse Intestinal Bacterial Collection;miBC)は、マウスの腸由来の細菌株および関連ゲノムの公的リポジトリである。その18菌種からなる最小限のコンソーシアム(共同体)がメタゲノムの既知の機能的潜在能力の50~75%を占めている。
Spirochaete flagella hook proteins self-catalyse a lysinoalanine covalent crosslink for motility
doi: 10.1038/microbiol.2016.134
スピロヘータの鞭毛のフックは、運動性のために、リシノアラニンを生成する共有結合架橋を必要とする。
Structures of Ebola virus GP and sGP in complex with therapeutic antibodies
doi: 10.1038/microbiol.2016.128
低温電子顕微鏡を利用して、エボラウイルスの糖タンパク質(GP)および分泌型糖タンパク質(sGP)を、GP特異的抗体あるいはGP/sGP交差反応性抗体との複合体として観察した構造によって、sGPの多量体配置を理解する手掛かりを得て、GPとsGPの構造およびエピトープ提示を比較している。
Probing the metabolic heterogeneity of live Euglena gracilis with stimulated Raman scattering microscopy
doi: 10.1038/microbiol.2016.124
生きた微細藻類Euglena gracilisの代謝産物を無標識で高速に分子イメージングする手法を利用して、さまざまな培養条件における細胞内代謝産物の空間時間分布を示している。
Microbial mercury methylation in Antarctic sea ice
doi: 10.1038/microbiol.2016.127
南極の雪、ブライン、海氷および海水に含まれる水銀の化学種の測定とメタゲノム解析は、水銀のメチル化が南極の海氷中の海洋微好気性細菌Nitrospinaによって行われている可能性があることを示唆している。
Protein folding in the cell envelope of Escherichia coli
doi: 10.1038/microbiol.2016.107
大腸菌(Escherichia coli)K12株において、タンパク質の輸送、フォールディング、膜への挿入を支配している相互に連関した過程について概説している。
Model-based projections of Zika virus infections in childbearing women in the Americas
doi: 10.1038/microbiol.2016.126
疫学的な理論を血清有病率および伝播のドライバーに関するデータと組み合わせて地域特異的な予測を立てる手法により、ジカウイルスの流行が165万人の出産可能年齢の女性と全体で9340万人の人々に感染をもたらす可能性が示唆された。
The physiology and habitat of the last universal common ancestor
doi: 10.1038/microbiol.2016.116
系統発生学的手法を利用して、全ての生物の分岐点となった共通祖先(last universal common ancestor;LUCA)の生理的性質を明らかにし、LUCAが水素、二酸化炭素および鉄に富んだ熱水環境のH2依存性独立栄養生物であったという説を裏付けている。
Interplay between microbial D-amino acids and host D-amino acid oxidase modifies murine mucosal defence and gut microbiota
doi: 10.1038/microbiol.2016.125
マウスの腸内微生物相は、遊離D-アミノ酸を産生し、腸上皮細胞によるD-アミノ酸酸化酵素の産生を誘導する。微生物相が産生するD-アミノ酸の酸化的脱アミノ反応によって生じる過酸化水素は、粘膜をコレラ菌(Vibrio cholerae)から防御する。
Enrichment of the lung microbiome with gut bacteria in sepsis and the acute respiratory distress syndrome
doi: 10.1038/microbiol.2016.113
敗血症モデルマウスおよび確立された急性呼吸促迫症候群の患者は、生存可能な腸関連細菌を豊富に含んだ肺マイクロバイオームを持っており、これが炎症の強さと相関していた。
Whole metagenome profiling reveals skin microbiome-dependent susceptibility to atopic dermatitis flare
doi: 10.1038/microbiol.2016.106
アトピー性皮膚炎になりやすい患者の皮膚マイクロバイオームは、連鎖球菌(Streptococcus)およびGemella属細菌を豊富に含んでおり、これが適応免疫応答、真核生物群集の変化およびマイクロバイオーム全体にわたる遺伝子レパートリーの機能的移行と関連している。
The binary toxin CDT enhances Clostridium difficile virulence by suppressing protective colonic eosinophilia
doi: 10.1038/microbiol.2016.108
Clostridium difficileのCDT毒素はToll様受容体2(TLR2)シグナル伝達を介して宿主に炎症を誘導し、宿主防御機能を持つ好酸球増加応答を抑制する。
High-affinity monoclonal IgA regulates gut microbiota and prevents colitis in mice
doi: 10.1038/microbiol.2016.103
W27免疫グロブリンAの経口投与によってマウスの腸内微生物相を調節すると、リンパ増殖性疾患および大腸炎のモデルマウスに治療効果が見られた。
Caulobacter crescentus intrinsic dimorphism provides a prompt bimodal response to copper stress
doi: 10.1038/microbiol.2016.98
Caulobacter crescentusは二形性の生活環に依存して、排出応答と走化性応答を別個に開始し、銅毒性を回避する。
Colonic transit time is related to bacterial metabolism and mucosal turnover in the gut
doi: 10.1038/microbiol.2016.93
大腸を通過する時間が長いのは大腸内の細菌量が豊富なことや、タンパク質の異化への代謝の移行と関連があるが、短い通過時間は大腸粘膜の再生が増加している可能性と関連がある。
Cell division licensing in the multi-chromosomal Vibrio cholera bacterium
doi: 10.1038/microbiol.2016.94
2つの染色体(Chr1およびChr2)を持つコレラ菌(Vibrio cholerae)において、Zリング形成を阻害する因子の結合モチーフ群を持つのはChr1ではなく、Chr2である。このことは、細胞の中心部に分裂複合体(divisome)を正確に配置させることに役立っており、分裂複合体の組み立てを細胞周期の最後の最後まで延期する。
Wall proficient E. coli capable of sustained growth in the absence of the Z-ring division machine
doi: 10.1038/microbiol.2016.91
細胞壁を持つがZリングを持たない細菌が分枝状の形態で増殖し分裂することは、細菌の形態形成の進化を解明する手掛かりになる可能性がある。
Drug resistance in eukaryotic microorganisms
doi: 10.1038/microbiol.2016.92
真核生物に属する病原微生物における耐性の出現は大きな懸案事項である。この総説では、病原真核生物がもたらす課題、病原真核生物を標的として用いられる治療法および耐性の出現と、既存治療法を持続しながら新治療法を開発する新たな取り組みについて論じている。
MicrobeJ, a tool for high throughput bacterial cell detection and quantitative analysis
doi: 10.1038/microbiol.2016.77
MicrobeJ は、細菌細胞の検出および定量的解析に利用できるオープンソースのImageJ プラグインである。
Flavivirus NS1 protein in infected host sera enhances viral acquisition by mosquitoes
doi: 10.1038/microbiol.2016.87
デングウイルス(DENV)および日本脳炎ウイルス(JEV)のNS1(non-structural protein-1)は感染した宿主の血清中に分泌される。血清中に分泌されたNS1は、ウイルスを媒介する蚊の中腸内で免疫障壁を乗り越えてウイルスの伝播を促進する。
Phenotypic lentivirus screens to identify functional single domain antibodies
doi: 10.1038/microbiol.2016.80
ラクダ科動物由来のH鎖のみで構成される抗体の可変領域断片(VHH)のレンチウイルススクリーニングプラットホームを開発し、A型インフルエンザウイルスあるいは水泡性口内炎ウイルスのvRNPの核内移行またはmRNAの転写を妨げることでヒト細胞をウイルス感染から防御する19種類の抗ウイルス性VHHを同定している。
Inactivation of CRISPR-Cas systems by anti-CRISPR proteins in diverse bacterial species
doi: 10.1038/microbiol.2016.85
バイオインフォマティクス解析により、CRISPR-Cas I-F系とCRISPR-Cas I-E系の両方を標的とするものを含めた5種類の新しい抗CRISPR-Casファミリーを発見している。
A global map of genetic diversity in Babesia microti reveals strong population structure and identifies variants associated with clinical relapse
doi: 10.1038/microbiol.2016.79
世界中で分離されたBabesia microti 原虫のゲノム解析により、1つの集団が複数の別個の地理的系統に分かれたことを明らかにし、シトクロムbおよびリボソームタンパク質サブユニットL4の薬剤結合領域の変異体のいくつかがバベシア症の再発と関係があることを同定している。
Endemic hydrothermal vent species identified in the open ocean seed bank
doi: 10.1038/microbiol.2016.86
これまでは海洋の熱水噴出孔に固有であると考えられていた生物が、量的には少ないが、遠洋領域で見いだされていることは、地理的に離れた熱水噴出孔の生息地に定着するための外洋シードバンク仮説を裏付けている。
Species–function relationships shape ecological properties of the human gut microbiome
doi: 10.1038/microbiol.2016.88
(メタ)ゲノムデータ解析のために手作業で精選された代謝モジュールの枠組みを用いて、腸内微生物ゲノムとマイクロバイオームにおける細菌種と機能の関連を確認し、細菌の生活戦略と関連がある重要な代謝の多様化が属のレベルで起こっていることを明らかにしている。
Platelet-derived growth factor-α receptor is the cellular receptor for human cytomegalovirus gHgLgO trimer
doi: 10.1038/microbiol.2016.82
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)のgHgLgO三量体は、血小板由来増殖因子-α受容体(PDGFRα)にgOサブユニットを介して高親和性で結合する。PDGFRαは繊維芽細胞表面に発現しているが、上皮細胞表面には発現していない。
Network analysis identifies Rv0324 and Rv0880 as regulators of bedaquiline tolerance in Mycobacterium tuberculosis
doi: 10.1038/microbiol.2016.78
調節応答のシステム生物学的解析により、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)のベダキリンに対する耐性に必要な2種類の転写因子、Rv0324およびRv0880を見いだしている。
Anti-cas spacers in orphan CRISPR4 arrays prevent uptake of active CRISPR–Cas I-F systems
doi: 10.1038/microbiol.2016.81
オーファンCRISPR4配列群には、さらなるCRISPR-Cas系の取り込みを阻止するcas遺伝子抑制スペーサーが含まれている。
Selection of antigenically advanced variants of seasonal influenza viruses
doi: 10.1038/microbiol.2016.58
ヘマグルチニン(赤血球凝集素)タンパク質にさまざまな変異を持ったヒトH1N1およびH3N2インフルエンザウイルスライブラリーを、ヒトおよびフェレットの回復期血清と培養することによって抗原変異株を選択した。これにより、自然界で出現する抗原変異株に類似した変異株を同定している。
HIV–host interactome revealed directly from infected cells
doi: 10.1038/microbiol.2016.68
外来性エピトープの標識を1つずつ持つように遺伝的操作を行った完全複製が可能なHIV-1ウイルスを利用して、ヒトリンパ球への自然感染過程で起こるウイルスのEnvおよびVifのタンパク質と細胞のタンパク質との相互作用全体(インタラクトーム)の特徴を偏りなく解析できるようにした。
Maternal colonization with Streptococcus agalactiae and associated stillbirth and neonatal disease in coastal Kenya
doi: 10.1038/microbiol.2016.67
母親の直腸-膣へのB群連鎖球菌(Streptococcus agalactiae)の定着、死産および新生児疾患の評価と併用して全ゲノム塩基配列解読を行い、ケニア沿岸部における疾病負荷と細菌の集団構造を明らかにしている。
The host protein CLUH participates in the subnuclear transport of influenza virus ribonucleoprotein complexes
doi: 10.1038/microbiol.2016.62
インフルエンザウイルスのPB2タンパク質とM1タンパク質は、宿主タンパク質CLUHの細胞質から核質、あるいはSC35陽性スペックルへの移行を誘導した。核スペックルに到達したCLUHはウイルスのリボ核タンパク質の核内輸送に関わる役割をしている。
Effective assembly of fimbriae in Escherichia coli depends on the translocation assembly module nanomachine
doi: 10.1038/microbiol.2016.64
大腸菌(Escherichia coli)のTAM(translocation assembly module)は、BAM(β-barrel assembly machinery)複合体とともに機能して、アッシャー(usher)タンパク質という細菌線毛の生合成に重要な分子基盤の迅速な組み立てを媒介する。
Biogeography and environmental genomics of the Roseobacter-affiliated pelagic CHAB-I-5 lineage
doi: 10.1038/microbiol.2016.63
全球的な試料採取作戦を行い、CHAB-I-5系統のRoseobacter群が海洋環境に豊富に存在し、極地から熱帯地方にまで見いだされることを示している。SB2株の概要ゲノムを解析し、貧栄養の生活様式に適応していることを明らかにした。
The abundant marine bacterium Pelagibacter simultaneously catabolizes dimethylsulfoniopropionate to the gases dimethyl sulfide and methanethiol
doi: 10.1038/microbiol.2016.65
Pelagibacter属細菌はジメチルスルホニオプロピオナート(DMSP)から生物起源ガスのメタンチオールとジメチルスルフィドを同時に産生しているが、これは、細胞の硫黄需要に依存して、この2つのDMSP分解経路へのDMSPの分配のバランスをとる動力学的な切り替えによって調節されている。
Antibiotic failure mediated by a resistant subpopulation in Enterobacter cloacae
doi: 10.1038/microbiol.2016.53
診断検査で耐性は検出されないが、コリスチン耐性表現型のEnterobacter cloacae亜集団が、抗生物質治療の失敗の原因になっている。
Phenotypic heterogeneity driven by nutrient limitation promotes growth in fluctuating environments
doi: 10.1038/microbiol.2016.55
ナノメートル規模の二次イオン質量分析法(nanometre-scale secondary ion mass spectrometry;NanoSIMS)を利用して単一細胞の代謝活性を測定することにより、栄養基質を制限するとクレブシエラ属の窒素固定細菌Klebsiella oxytocaの代謝における表現型の不均一性が増加し、細胞が栄養分の変動に対処できるようになることを明らかにしている。
Reconstructing metabolic pathways of hydrocarbon-degrading bacteria from the Deepwater Horizon oil spill
doi: 10.1038/microbiol.2016.57
2010年のメキシコ湾の原油掘削施設ディープウォーターホライズンからの原油流出事故後の表層海水および汚染海水に豊富に含まれる海洋細菌の概要ゲノムを再構築した結果から、細菌群集全体の炭化水素分解能力が複合して、群集を構成する個々の細菌の分解能力より大きくなっていることが分かった。
Microbially cleaved immunoglobulins are sensed by the innate immune receptor LILRA2
doi: 10.1038/microbiol.2016.54
自然免疫受容体のLILRA2は、微生物によって切断された宿主の免疫グロブリンを特異的に感知する。
Global microbialization of coral reefs
doi: 10.1038/microbiol.2016.42
3つの大洋の海盆の60か所のサンゴ礁の解析結果から、サンゴ礁に多肉質藻類がはびこることが、溶存無機炭素の供給を介して、微生物の存在量の増加を支えていること、また栄養に富む環境に見いだされる病原性をおよぼしかねない細菌が優位を占めることが示唆される。
Persister formation in Staphylococcus aureus is associated with ATP depletion
doi: 10.1038/microbiol.2016.51
黄色ブドウ球菌における抗生物質耐性の誘導にはATPの枯渇が関わっている。
Highly heterogeneous mutation rates in the hepatitis C virus genome
doi: 10.1038/microbiol.2016.45
忠実度の高い超高深度塩基配列解読法を改変レプリコン系に適用し、C型肝炎ウイルスの変異率はゲノム全域にわたる部位間で1000倍以上の違いがあり、隣接ヌクレオチド間でも極端な変動があることを明らかにしている。
Natural selection underlies apparent stress-induced mutagenesis in a bacteriophage infection model
doi: 10.1038/microbiol.2016.47
本研究では、増殖と変異生成とを物理的に切り離せるバクテリオファージ感染モデルを利用して、ストレスへの適応の基礎としてランダム変異の自然選択があることを裏付けている。
The hemifusion structure induced by influenza virus haemagglutinin is determined by physical properties of the target membranes
doi: 10.1038/microbiol.2016.50
ボルタ位相板低温電子断層撮影法を利用して、インフルエンザウイルスの赤血球凝集素が2つの別個のウイルス膜融合経路、つまり「脂質性結合」につながる経路あるいは融合孔につながる経路を誘導することを示している。
A new view of the tree of life
doi: 10.1038/microbiol.2016.48
「生物の系統樹」の最新版は、さまざまな生態系における細菌の多様性の優位性および系統樹の枝のいくつかにおける広範な進化を明らかにしている。この新しい系統樹は、今後の研究のために培養できるようになった生物がどれほど少ないかも浮き彫りにしている。
A fungal pathogen secretes plant alkalinizing peptides to increase infection
doi: 10.1038/microbiol.2016.43
病原性真菌の1種であるFusarium oxysporumが、植物の調節ペプチドRALF (rapid alkalinization factor)と相同な機能を持つペプチドを利用して植物のアルカリ化を誘導し、病気を引き起こすことを示している。
Antibiotics as a selective driver for conjugation dynamics
doi: 10.1038/microbiol.2016.44
抗生物質による選択は、集団構造、細胞の生理学的状態およびエネルギー利用能に依存して、接合動態を促進あるいは抑制する可能性がある。
Enrichment of the lung microbiome with oral taxa is associated with lung inflammation of a Th17 phenotype
doi: 10.1038/microbiol.2016.31
外見上健康な人の気管支肺胞洗浄液が口腔微生物相に富む状態が炎症促進性表現型と関連していることから、誤嚥に由来する微生物相が基礎炎症状態を調節する役割を担っていることが示唆される。
Identifying lineage effects when controlling for population structure improves power in bacterial association studies
doi: 10.1038/microbiol.2016.41
遺伝子座特異的な関連の詳細なマッピングが不可能な場合でさえも、系統レベルの関連をとらえる全ゲノム関連解析(GWAS)法は、結核菌(M. tuberculosis)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、大腸菌(E. coli)および肺炎桿菌(K. pneumoniae)における抗菌剤耐性の根底にある種々の遺伝子および遺伝的バリアントを検出する。
Genomic and enzymatic evidence for acetogenesis among multiple lineages of the archaeal phylum Bathyarchaeota widespread in marine sediments
doi: 10.1038/microbiol.2016.35
遺伝的証拠により、Bathyarchaeota門に属する複数の系統が、これまではバクテリアだけに見いだされていたホモ酢酸生成(homoacetogenesis)という代謝反応を行う能力を持つことを実証している。
Lokiarchaeon is hydrogen dependent
doi: 10.1038/microbiol.2016.34
比較ゲノム解析から、真核生物に最も近縁なことが知られている原核生物のロキアーキオータ門(Lokiarchaeota)の古細菌が水素依存性であることが示唆され、真核細胞の起源の「水素仮説」を裏付けている。
Evidence for the sexual origin of heterokaryosis in arbuscular mycorrhizal fungi
doi: 10.1038/microbiol.2016.33
アーバスキュラー菌根菌は太古から存在する無性生殖系統と伝統的に見なされている。Rhizophagus irregularis の比較ゲノム解析から、この真菌の有性生殖を示す証拠が得られている。
Global phylogeography and evolutionary history of Shigella dysenteriae type 1
doi: 10.1038/microbiol.2016.27
世界各地で分離されたA群赤痢菌(Shigella dysenteriae)株の系統発生解析を行い、近代における主要な赤痢流行の背後にある大陸横断伝播という出来事と抗生物質耐性の進化を明らかにしている。
The role of the priming loop in influenza A virus RNA synthesis
doi: 10.1038/microbiol.2016.29
A型インフルエンザウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼは、「thumb」サブドメインにβヘアピンがあり、このβヘアピンはウイルス複製の開始に必須だが、その他の複製段階とウイルスRNAの転写には補助的に働くことを示している。
Mosquito C-type lectins maintain gut microbiome homeostasis
doi: 10.1038/microbiol.2016.23
蚊の腸内マイクロバイオームは、C型レクチン群を利用して、宿主由来の抗菌ペプチドの殺菌能力を回避することにより、マイクロバイオーム誘導的に宿主免疫を操作して、腸内恒常性を維持する仕組みを与えている。
Host SHP1 phosphatase antagonizes Helicobacter pylori CagA and can be downregulated by Epstein–Barr virus
doi: 10.1038/microbiol.2016.26
宿主細胞のSHP1ホスファターゼは、ピロリ菌病原性因子CagAを脱リン酸化してその発がん活性に対抗する。EBVが共感染した細胞ではSHP1の発現が抑制され、CagAの病原性が著しく増強される。
Intermediate filaments enable pathogen docking to trigger type 3 effector translocation
doi: 10.1038/microbiol.2016.25
3型分泌装置のタンパク質が形成するトランスロコンが宿主の中間径フィラメント群に結合することによって、赤痢菌(Shigella)、サルモネラ属(Salmonella)細菌およびエルシニア属(Yersinia)細菌は宿主細胞に結合し、これら病原菌のエフェクタータンパク質の移行が促進される。
Frequency of antibiotic application drives rapid evolutionary adaptation of Escherichia coli persistence
doi: 10.1038/microbiol.2016.20
大腸菌の高度多剤耐性の進化は、単一の点変異によって急速に起こるが、これは抗生物質による治療の頻度に適応したものである。逆に、抗生物質治療をしない場合に元の状態に戻るのは遅く、部分的な効果が見られるにすぎない。
Self-organized patchiness facilitates survival in a cooperatively growing Bacillus subtilis population
doi: 10.1038/microbiol.2016.22
限定された空間環境における枯草菌の細胞間の相互作用は、自己組織化された不均一集団を形成できるようになるのに十分で、増殖を維持するには低すぎるとされる細胞密度での生存を可能にする。
Developmental dynamics of the preterm infant gut microbiota and antibiotic resistome
doi: 10.1038/microbiol.2016.24
抗生物質による治療は、早産児の腸内微生物相に存在する種の豊富さにさまざまな影響を及ぼすが、治療により多剤耐性種が優勢になり、種々の抗生物質耐性遺伝子の濃縮が引き起こされうる。
Fungi use the SakA (HogA) pathway for phytochrome-dependent light signalling
doi: 10.1038/microbiol.2016.19
糸状菌のAspergillus nidulansにおける光の感知が、浸透圧の感知に欠かせないことが知られているSakA(別名HogA)経路に依存することを示し、SakA経路が真菌において環境からのシグナルの統合中枢になっていることを明らかにしている。
Pronounced daily succession of phytoplankton, archaea and bacteria following a spring bloom
doi: 10.1038/microbiol.2016.5
春季ブルームで生じた植物プランクトン群集と細菌プランクトン群集の急速な変動から、プランクトンの遷移に影響を及ぼす生物学的要因と物理学的要因を知る新しい手がかりが得られている。
Slam is an outer membrane protein that is required for the surface display of lipidated virulence factors in Neisseria
doi: 10.1038/microbiol.2016.9
トランスポゾンを利用したタンパク質探索法により、ナイセリア属の複数の細菌種のリポタンパク質病原性因子の細胞表面発現に重要な外膜タンパク質ファミリーを同定し、Slam(surface lipoprotein assembly modulator)と名付けている。
Eliminating Legionella by inhibiting BCL-XL to induce macrophage apoptosis
doi: 10.1038/microbiol.2015.34
BCL-XLを阻害すると、感染したレジオネラが排除されることから、宿主に作用するBH3模倣薬による治療が、宿主細胞のタンパク合成を阻害する細胞内病原菌に対して効果がある可能性が示唆される。
MERS coronavirus induces apoptosis in kidney and lung by upregulating Smad7 and FGF2
doi: 10.1038/microbiol.2016.4
中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)による腎感染は、Smad7および繊維芽細胞増殖因子2(FGF2)のタンパク質発現を増加させてアポトーシスを誘発するとともに、腎不全を引き起こす。
Growth control switch by a DNA-damage-inducible toxin–antitoxin system in Caulobacter crescentus
doi: 10.1038/microbiol.2016.8
Caulobacter crescentus のHigBA毒素-抗毒素系は、HigA抗毒素、HigB毒素およびその標的mRNAの量に依存して、細菌増殖の促進と阻害を切り替えるスイッチとして働くことができる。
Dynamics of the human and viral m6A RNA methylomes during HIV-1 infection of T cells
doi: 10.1038/microbiol.2016.11
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の感染は、ウイルスと宿主の両方のmRNAのN6-メチルアデノシン(m6A)修飾の増加を誘発することにより、ウイルスの複製およびウイルスRNAの核外移行に影響を与える。
Endothelial cells are a replicative niche for entry of Toxoplasma gondii to the central nervous system
doi: 10.1038/microbiol.2016.1
トキソプラズマ原虫は、細胞層を通過する移動を利用して、あるいは移動中の感染細胞の内部で、生物学的関門を突破する。本論文では、中枢神経系に到達する新しいルートとして、脳血管系の内皮細胞への感染とその溶解を明らかにしている。
Genomic inference of the metabolism of cosmopolitan subsurface Archaea, Hadesarchaea
doi: 10.1038/microbiol.2016.2
温泉堆積物のメタゲノムからゲノムを再構築することにより、「Hadesarchaea」のゲノムは、合理化されているが代謝的には多用途であり、COおよびH2の酸化に関与する遺伝子群が亜硝酸のアンモニアへの還元と共役している可能性が示される。
Genome-based characterization of hospital-adapted Enterococcus faecalis lineages
doi: 10.1038/microbiol.2015.33
英国およびアイルランドで収集されたバンコマイシン耐性Enterococcus faecalis分離株の全ゲノム塩基配列解読により、バンコマイシン耐性Enterococcus faecalisは3つの主要系統を持つ集団構造であることと、主要系統のうち2つの系統は薬剤耐性の獲得と消失を何度も繰り返したことを明らかにしている。
The metabolic background is a global player in Saccharomyces gene expression epistasis
doi: 10.1038/microbiol.2015.30
アミノ酸生合成経路の欠損(栄養要求性)は、選択マーカーとして広く利用されているが、酵母(Saccharomyces)のトランスクリプトーム、プロテオームおよびメタボロームの大きな変化を引き起こすので、栄養要求性株を利用する際には交絡因子になる。
Metagenomics uncovers gaps in amplicon-based detection of microbial diversity
doi: 10.1038/microbiol.2015.32
微生物の多様性の解析結果にはまだかなりの空白が残っている。このPCR増幅産物に基づいたリボソームRNA遺伝子調査のメタ解析では、環境微生物由来の塩基配列のおよそ10%が見落とされており、そのほとんどは細菌ドメイン内の下位区分にあたる「candidate phyla radiation(CPR;複数の門候補からなる放散)」に属することを示している。
Altered carbon turnover processes and microbiomes in soils under long-term extremely high CO2 exposure
doi: 10.1038/microbiol.2015.25
高濃度のCO2は湿地土壌の微生物の多様性および機能に影響を与え、地質由来の炭素の流入を著しく増加させる。
pks5-recombination-mediated surface remodelling in Mycobacterium tuberculosis emergence
doi: 10.1038/microbiol.2015.19
pks5座位の組換えが媒介する細菌細胞表面の再構築は、マイコバクテリウム属の1菌種Mycobacterium canettiiの病原性を高め、広範な宿主域を持つ推定上の祖先マイコバクテリウム属細菌から哺乳類を専門宿主とする病原菌へと進化する原動力となった。
The microenvironment of injured murine gut elicits a local pro-restitutive microbiota
doi: 10.1038/microbiol.2015.21
損傷を受けた腸粘膜の微小環境は、粘膜の傷の修復につながる微生物相成分の迅速な出現を誘発する。
Re-examination of the relationship between marine virus and microbial cell abundances
doi: 10.1038/microbiol.2015.24
25カ所の海洋調査で得た微生物細胞とウイルスの推定存在量を分析して、微生物細胞に対するウイルスの比率が微生物細胞密度に伴って減少することを明らかにし、ウイルス存在量の方がつねに10倍高いという考えに疑問を投げかけている。
Emergence of host-adapted Salmonella Enteritidis through rapid evolution in an immunocompromised host
doi: 10.1038/microbiol.2015.23
ミスマッチ修復遺伝子の変異は、免疫低下した患者に感染した腸炎菌(Salmonella Enteritidis)のゲノム変異率を増加させ、限定された宿主への適応に成功した病原細菌と同じような急速な進化を引き起こす。
Evolution of atypical enteropathogenic E. coli by repeated acquisition of LEE pathogenicity island variants
doi: 10.1038/microbiol.2015.10
分離された185菌株の非定型腸管病原性大腸菌(atypical enteropathogenic Escherichia coli ;aEPEC)の全ゲノム解析により、30サブタイプのLEE(locus of enterocyte effacement;腸細胞消滅遺伝子座)を同定した。各サブタイプは系統発生学的に3つの主要系統に分類され、染色体上の優先的挿入部位とLEE以外の領域にコードされるエフェクター遺伝子のレパートリーが異なっていた。
Activation of band 3 mediates group A Streptococcus streptolysin S-based beta-haemolysis
doi: 10.1038/microbiol.2015.4
化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes。別名、A群連鎖球菌またはGAS)が産生するストレプトリシンS(SLS)が媒介する赤血球溶解は、赤血球の主要な陰イオン交換タンパク質であるバンド3の機能が乱されることで起こり、塩素イオンの流入を引き起こす。
Genomic diversity of EPEC associated with clinical presentations of differing severity
doi: 10.1038/microbiol.2015.14
分離された70菌株の致死性、非致死性、症候性、無症候性の腸管病原性大腸菌(EPEC)の比較ゲノミクスにより、症候性感染や致死感染で高頻度に見いだされる病原性関連遺伝子を同定した。
THPP target assignment reveals EchA6 as an essential fatty acid shuttle in mycobacteria
doi: 10.1038/microbiol.2015.6
テトラヒドロピラゾ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド(THPP)は 、以前には結核菌(Mycobacterium tuberculosis)においてMmpL3を標的とすると考えられていたが、哺乳類のエノイルCoAヒドラターゼと相同で結核菌に必須の非触媒性EchA6を標的とすることが分かった。
Speciation driven by hybridization and chromosomal plasticity in a wild yeast
doi: 10.1038/microbiol.2015.3
自然界のサッカロミセス属酵母の1種Saccharomyces paradoxusの集団では、染色体構造の急速な進化および新生種間の二次接触をもたらした生態学的状況が、同倍数性雑種の種分化による新種形成の原動力となった。
NusA-dependent transcription termination prevents misregulation of global gene expression
doi: 10.1038/microbiol.2015.7
全ゲノム3'末端マッピングの解析結果から、枯草菌(Bacillus subtilis)のNusAに依存する転写ターミネーターは、弱いRNAヘアピン構造とポリU配列の末端側での中断の両方、あるいはそのどちらか一方を持つことが示され、NusAが転写終結機構に直接関与していることが示唆された。
A capsidless ssRNA virus hosted by an unrelated dsRNA virus
doi: 10.1038/microbiol.2015.1
ほとんどのウイルスのゲノムおよび複製酵素は、キャプシドとして知られているタンパク質性の外殻に包み込まれている。今回著者らは、2種類のRNAウイルス間の絶対的なつながり、つまり、一方のウイルスがもう一方のウイルスのキャプシド外殻を流用する“トランスキャプシド形成”として知られている過程の興味深い実例を明らかにしている。
Predicted global distribution of Burkholderia pseudomallei and burden of melioidosis
doi: 10.1038/microbiol.2015.8
ヒトおよび動物の類鼻疽症例の分布地図と、環境中の類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)の存在を正式なモデル化の枠組みのなかで組み合わせて、この疾患の世界的負担を推定し、それが非常に過少報告されていることを明らかにしている。
Local and global consequences of flow on bacterial quorum sensing
doi: 10.1038/microbiol.2015.5
細菌のクオラムセンシング(Quorum sensing;QS)系は、自己誘導物質と呼ばれる分泌型シグナル分子を利用して集団の挙動を調整している。今回著者らは、黄色ブドウ球菌(S. aureus)およびコレラ菌(V. cholera)において流体流動がQSを活性化あるいは抑制できる条件を明らかにしている。
Obligate bacterial mutualists evolving from environmental bacteria in natural insect populations
doi: 10.1038/microbiol.2015.11
自然界のサッカロミセス属酵母の1種Saccharomyces paradoxusの集団では、染色体構造の急速な進化および新生種間の二次接触をもたらした生態学的状況が、同倍数性雑種の種分化による新種形成の原動力となった。
Crystal structure of Clostridium difficile toxin A
doi: 10.1038/microbiol.2015.2
C. difficileの毒素TcdAの結晶構造を解析し、この毒素の自己プロセシング過程には亜鉛が必要なことと、TcdAをエンドソームから脱出させられるpH依存性ポア形成に関与する送達ドメインを明らかにしている。
MATE transport of the E. coli-derived genotoxin colibactin
doi: 10.1038/microbiol.2015.9
MATE(Multidrug and toxic compound extrusion:多剤・毒性化合物排出)型輸送体ClbMは、コリバクチン(colibactin)の活性および輸送に関与する重要な構成要素である。