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造血幹細胞移植:造血幹細胞移植のための化学療法によって脳ではミクログリアの老化と末梢マクロファージの生着が引き起こされる

Nature Medicine 28, 3 doi: 10.1038/s41591-022-01691-9

造血幹細胞移植(HSCT)は、多数の悪性疾患や非悪性疾患で使われる治療法であり、移植前の骨髄破壊には化学療法が用いられる。HSCT後の脳には、実質に生着した末梢マクロファージが含まれており、これらは正常な脳には存在しないが、その生着機構はまだ明らかになっていない。本論文では、マウスではHSCTのための化学療法が、成体での神経新生の永久的な喪失など、脳の再生可能な集団を広く破壊することを示す。マウスでは、化学療法によって脳内ミクログリア密度は半減したが、ミクログリアの突起は拡大した。これは広く用いられている老化の指標と一致している。ミクログリアは細胞増殖マーカーを発現していたが、細胞周期はS期で停止しており、多数が老化と抗アポトーシスのマーカーであるp21を発現していた。化学療法による脳内ミクログリア濃度減少からの回復後に、ミクログリアのin vivo単一細胞追跡を行うと、ミクログリアは再生能を喪失しており、消失したミクログリアはドナーマクロファージに置き換わっていた。我々は、HSCTのための化学療法によってミクログリアの老化が引き起こされ、ミクログリアが限界に近い密度にまで徐々に減少することで、脳への末梢マクロファージの生着が許容されるニッチが提供されると考えている。

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