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心不全:急性心不全による入院患者でのSGLT2阻害剤エンパグリフロジンの有効性:多国籍無作為化試験

Nature Medicine 28, 3 doi: 10.1038/s41591-021-01659-1

ナトリウム–グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤であるエンパグリフロジンは、慢性心不全患者の心血管死あるいは心不全による入院のリスクを低減するが、急性心不全で入院した患者でエンパグリフロジン投与を開始した場合にも、臨床転帰が改善するかどうかは分かっていない。今回の二重盲検試験(EMPULSE、NCT04157751)では、左心室駆出率に関係なく、新規の急性心不全あるいは非代償化した慢性心不全と初期診断を受けた患者530人が、エンパグリフロジン10 mgの1日1回投与群あるいはプラセボ投与群に無作為に割り付けられた。患者は、臨床的に安定した後に病院内で無作為化され(入院から無作為化までの期間の中央値は3日)、最長90日まで投与を受けた。この試験の主要評価項目は、患者が受けた臨床的利益とされた。比較項目として、あらゆる原因による死亡、心不全事象の数、最初に発生する心不全事象までの期間、90日目でのカンザスシティー心筋症質問票総合症状スコアのベースライン時から5ポイント以上の変化が、階層的な複合評価項目として規定された。臨床的利益が見られた患者は、エンパグリフロジン投薬群の方がプラセボ群よりも多く(層別化されたWIN比 1.36、95%信頼区間1.09~1.68、P =  0.0054)、主要評価項目を満たした。WIN比で評価された臨床的利益は、新規急性心不全および非代償化した慢性心不全の両方で投薬群に多く観察され、駆出率あるいは糖尿病の有無には関係なかった。エンパグリフロジンは耐容性が良好で、重篤な有害事象は、エンパグリフロジン群で32.3%、プラセボ群で43.6%であった。これらの知見は、急性心不全で入院した患者へのエンパグリフロジン投与開始は十分に許容され、治療開始後90日中に有意な臨床的利益があることを示している。

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