Editorial

医学における制度的人種差別を終わらせる

Nature Medicine 26, 7 doi: 10.1038/s41591-020-0993-2

2020年5月25日、ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性ジョージ・フロイドが白人警察官によって殺害された。その後の数週間で、彼の死は、国内国外を問わず、制度的人種差別の結果と見なされるようになり、社会のあらゆる分野での人種差別とその責任に対するさらに広い意味でのアセスメントにつながった。

米国では、国が認可した人種隔離施策は1960年代に禁止されたが、現実社会では、隔離は事実上、依然として存在している。黒人のコミュニティーはさまざまな機会が与えられず、健康、教育、仕事、住居や安全に対する権利が奪われ、幸福で充実した生活が否定されているのだ。Nature Medicine は、このような格差を是正する責任は、黒人にではなく、反黒人主義の人種差別に対して(何ができるかはともかくとして)立ち上がることも、声を上げることもしなかった人々の方にあると信じている。

Nature Medicine の編集チームは、全員が白人ではないが、黒人は1人もいないので、反黒人主義の人種差別が横行する社会に黒人としてあることの難しさについて語ることはできない。しかし、まさにこの理由で、我々は自らの特権とそれから生じる責任について常に学び続け、科学界の黒人メンバーからの意見を求め、それに対しできる限り最良の解決策を講じることを確約する。制度的人種差別を根絶することへの編集者としての責任は、当然ながらこのジャーナルの内容にも関わってくる。

個人の努力では人種差別をなくすことはできないと思っても、こうした目標に向かって進み続けることが重要なのであり、我々は制度的人種差別について、それが消滅するまで論じ続け、書き続けていくことを誓う。ジョージ・フロイドの悲劇的な死は社会の事実上の変化の可能性を解き放った。そして今、この可能性が実現される時が来ている。

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