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黒色腫:ヒトAPOE遺伝子のありふれた生殖細胞系列バリアントは黒色腫の進行と生存を調節する

Nature Medicine 26, 7 doi: 10.1038/s41591-020-0879-3

APOE遺伝子のありふれた生殖細胞系列バリアントは、神経変性疾患やアテローム性動脈硬化症の主要なリスク修飾因子だが、これらががんの転帰に与える影響についてはほとんど分かっていない。今回我々は、これらのバリアントはアルツハイマー病の場合とは逆に働き、黒色腫の不良な転帰に対してAPOE4バリアントは好ましい影響を、APOE2バリアントは悪い影響を及ぼすことを報告する。ヒトAPOE4対立遺伝子を発現させたマウスでは、APOE2マウスに比べて、黒色腫の進行と転移が抑制された。APOE4マウスは、APOE2マウスに比べて、抗腫瘍免疫活性化が促進されていて、黒色腫進行に対するAPOE遺伝子型の影響は腫瘍免疫の変化によって起こることが、T細胞枯渇実験により明らかになった。これと一致して、APOE4のバリアントを持つ黒色腫患者は、APOE2を持つ患者に比べて生存率が高かった。さらに、APOE4マウスも、PD1免疫チェックポイント阻害による転帰がAPOE2マウスよりも良く、APOE4を持つ患者は、フロントライン治療の間のがん進行後に行われた抗PD1免疫療法で、生存の改善が見られた。また、肝臓X受容体の薬理学的活性化を介したAPOE発現の増強(抗腫瘍免疫機能を高めることが以前に報告されている)は、APOE4マウスでは治療効果が見られたが、APOE2マウスでは見られなかった。これらの知見は、既存の遺伝的要因が、将来の悪性腫瘍の進行と生存転帰に影響を及ぼし得ることを実証したものであり、APOE遺伝子型を黒色腫の転帰や治療応答のバイオマーカーとして前向き研究を行う根拠となる。

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