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COVID-19に立ち向かう低・中所得国

Nature Medicine 26, 7 doi: 10.1038/d41591-020-00020-2

主に南半球に位置を占める発展途上国、いわゆるグローバルサウスの低・中所得国は今、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに立ち向かおうとしている。こうした国々は、COVID-19のパンデミックで北米や欧州よりも大きな犠牲を強いられると予測されている。カラチ(パキスタン)などの大都市にある高密度のスラム街では、ソーシャル・ディスタンシングは不可能であり、コロナウイルスSARS-CoV-2への曝露の危険性は必然的に高くなる。また、低・中所得国は、COVID-19合併症と関連する慢性疾患の罹患率が高いので、重篤な症例が増えて集中治療が必要な患者が急増すれば、救命医療資源が不足し、死亡率が上昇して最悪の事態となる。スラム街でのインフルエンザ流行をシミュレートした数年前の研究では、スラム街が都市全体での流行に「乗数効果」を及ぼし、集団発生サイズを増大させ拡散速度を速めるという予測が得られた。インフルエンザはCOVID-19ほど接触感染率が高くなく、無症状性感染もないのだから、COVID-19では全てがこれより大幅に悪化すると思っていいだろう。HIV根絶計画や麻疹ワクチン接種プログラムが軌道に乗りかけたこれらの国々で、医師たちはいまだに脆弱な医療制度でCOVID-19に立ち向かうだけでなく、従来からの感染症の復活の脅威への対策にも追われなければならない。

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