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がん治療:再発したB細胞悪性腫瘍のための二重特異性を持つ抗CD20、抗CD19 CAR T細胞:用量漸増および用量拡大第1相試験

Nature Medicine 26, 10 doi: 10.1038/s41591-020-1081-3

CD19を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞は、再発・難治性B細胞悪性腫瘍の画期的な治療手段である。結果は目覚ましいものだが、CD19である疾患の再発は、いまだに難問である。我々は、再発・難治性B細胞悪性腫瘍に対する二重特異性抗CD20、抗CD19(LV20.19)CAR T細胞のFIH(first-in-human)試験によって、この問題に取り組んだ。B細胞非ホジキンリンパ腫もしくは慢性リンパ球性白血病の成人患者は、用量漸増および拡大についての第1相試験(NCT03019055)で投与を受け、4-1BB–CD3ζLV20.19 CAR-T細胞の安全性とCliniMACS Prodigyシステムを用いたオンサイト細胞産生の実行可能性が評価された。CAR T細胞の用量は、1 kg当たり2.5 × 105~2.5 × 106の範囲であった。細胞の作製は、凍結保存されたことのないLV20.19 CAR T細胞の14日目での投与を目標に設定された。LV20.19 CAR T細胞の標的用量は、CAR療法を行ったことのない患者全員で満たされており、22人の患者は、プロトコルに従ってLV20.19 CAR T細胞を投与された。用量制限毒性がなかったので、用量拡大には1 kg当たり2.5 × 106個という細胞数が選択された。グレード3~4のサイトカイン放出症候群が1人の患者(5%)で起こり、グレード3~4の神経毒性が3人の患者(14%)で生じた。18人の患者(82%)で28日目で総合応答が達成され、14人(64%)で完全奏効、4人(18%)で部分奏効が見られた。凍結保存されていない状態の細胞を、1 kg当たり2.5 × 106個投与された患者(n = 12)の用量に対する全奏効率は100%(完全奏効92%、部分奏効8%)であった。注目すべきことに、CD19抗原の喪失は、再発あるいは治療失敗を経験した患者で認められなかった。結論として、オンサイト作製による非凍結保存LV20.19 CAR T細胞の投与は実行可能であり、治療として安全で、毒性は低く、有効性は高かった。二重特異性を持つCARは、再発機序としての標的抗原の発現低下を緩和することで、臨床応答を改善すると考えられる。

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