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アテローム性動脈硬化:単一細胞解析から明らかになった、平滑筋表現型変化のアテローム形成抑制的役割とTCF21疾患遺伝子

Nature Medicine 25, 8 doi: 10.1038/s41591-019-0512-5

血管の平滑筋細胞(SMC)はさまざまな刺激に応答して、表現型調節(phenotypic modulation)として知られる過程により脱分化・増殖し、移動することがある。しかし、アテローム性動脈硬化症の間にin vivoでこの過程を経たSMCの表現型や、この過程が冠動脈疾患(CAD)のリスクに及ぼす影響については、まだよく分かっていない。今回我々は、単一細胞RNA塩基配列解読を用いて、マウスおよびヒト動脈のアテローム性動脈硬化病変部位においてin vivoでこの過程を経たSMCのトランスクリプトーム表現型の包括的な特性解析を行い、これらの細胞が、「fibromyocyte」と命名された独特な繊維芽細胞様細胞へと形質転換し、古典的なマクロファージ表現型をとらないことを見いだした。マウスでCADの原因遺伝子であるTCF21をSMC特異的にノックアウトすると、SMC表現型調節が著しく抑制され、病変内だけでなく、病変の保護的な繊維性被膜でもfibromyocyteの存在量が減少した。さらに、TCF21の発現は、病変の生じたヒト冠動脈でのSMC表現型調節と強く関連していて、TCF21の発現レベルの上昇は、ヒトCAD関連組織でのCADリスクの低下と関連していた。これらの結果は、アテローム性動脈硬化症ではTCF21とSMC表現型調節の両方が保護的な役割を持つことを明らかにしている。

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