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喘息:ヒト肺の細胞センサスによって明らかになった、健常時と喘息時の新規な細胞状態

Nature Medicine 25, 7 doi: 10.1038/s41591-019-0468-5

ヒト肺は効率的なガス交換を可能にするだけでなく、環境との境界面を形成し、粘膜免疫に依存して感染性因子に対する防御を行っている。肺の恒常性を保つためには、構造を形成する細胞と免疫細胞との間の厳密に制御された相互作用が必要である。今回我々は、単一細胞トランスクリプトミクスを用いて、健康な肺の上気道および下気道と肺実質、また喘息状態の肺の下気道の細胞全体像を図表化した。本論文では、気道上皮細胞の位置依存的状態と組織常在性記憶T細胞の新規サブセットについて報告する。喘息患者の下気道では、粘膜細胞の過形成が、粘膜絨毛細胞のこれまで知られていなかった状態と杯細胞過形成から生じることが分かった。また、喘息状態の肺には病原性エフェクター2型ヘルパーT細胞(TH2)が存在することが見いだされ、変化した上皮細胞状態の維持に2型サイトカインが必要とされることの証拠が得られた。細胞–細胞間相互作用の不偏解析によって、健康な肺で見られる気道構造細胞間コミュニケーション状態が、喘息状態の肺ではTH2が優勢なインタラクトームに移行することが明らかになった。

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