Article

がん:PICT1による核小体RPL11を介した、MDM2-P53経路と腫瘍増殖の制御

Nature Medicine 17, 8 doi: 10.1038/nm.2392

PICT1(GLTSCR2ともいう)はPTEN(phosphatase and tensin homolog)を安定化することから、がん抑制遺伝子であろうと考えられているが、PICT1が存在する染色体領域19q13を欠損する乏突起神経膠腫患者は、欠損しない同腫瘍患者より予後が良好である。PICT1の機能を明らかにするため、我々はPict1欠損マウスとPict1欠損胚性幹(ES)細胞を作製して以下の点を明らかにした。Pict1は胎児発生やES細胞の生存に不可欠な核小体タンパク質である。Pict1欠損は、DNA損傷がない場合にもp53依存性にG1期での細胞周期停止やアポトーシスを引き起こす。Pict1欠損細胞では、Mdm2の機能が低下して、p53が蓄積する。Pict1はRpl11と結合するが、Pict1が欠損するとRpl11は核小体から遊離する。Pict1欠損細胞では、Rpl11とMdm2との結合が増加することによって、Mdm2によるp53のユビキチン化が抑制される。ヒトのがんの場合、PICT1の発現が弱い腫瘍を持つ患者はよりよい予後を示す。正常なP53シグナル伝達が見られる腫瘍細胞でPICT1の発現を抑制すると、細胞の増殖は遅くなり、P53が蓄積する。したがって、PICT1はMDM2-P53経路の強力な調節因子であり、RPL11を核小体に保持することにより腫瘍進展を促進する。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度