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肥満:脳のPPAR-γは肥満を促進し、チアゾリジンジオン系薬剤のインスリン感受性増強効果に必要である

Nature Medicine 17, 5 doi: 10.1038/nm.2332

脂肪組織、筋肉、肝臓およびマクロファージでは、核内受容体であるペルオキシソーム増殖活性化受容体γ(PPAR-γ)によるシグナル伝達がインスリン感受性の決定因子であり、この受容体がチアゾリジンジオン系薬剤(TZD)のインスリン感受性増強効果を仲介する。PPAR-γはニューロンにも発現しているので、我々はニューロン特異的にPpargをノックアウト(Pparg brain knockout; BKO)したマウスを作製し、ニューロンでのPPAR-γシグナル伝達が体重増加あるいはインスリン感受性に寄与するかどうかを調べた。Pparg-BKOマウスは、高脂肪食(HFD)飼育の際にはPpargf/fマウスと比べて食物摂取量が少なく、エネルギー消費が多いために体重増加が軽減した。また、Pparg-BKOマウスはレプチン投与に対して、Ppargf/fマウスより高い反応を示した。Pparg-BKOマウスにTZDであるロシグリタゾンを投与すると、ロシグリタゾン誘導性の摂食亢進や体重増加に抵抗性がみられ、また、ロシグリタゾンを投与したPpargf/fマウスに比べて、グルコース代謝の改善はわずかだった。高インスリン正常血糖クランプ法によって、HFD飼育した場合にロシグリタゾン投与によって誘導される肝臓でのインスリン感受性増強が、Pparg-BKOマウスでは完全に消失していることが示された。この影響は、ロシグリタゾンが肝臓のインスリン受容体シグナル伝達を改善できないことに関連している。我々は、HFD飼育によって誘導される過剰な体重増加の一因が、ニューロンのPPAR-γシグナル伝達が熱産生を抑制し、食物摂取を増加させるためであると結論する。また、ニューロンのPPAR-γシグナル伝達はTZDによる肝臓でのインスリン感受性増強効果にも必要である。

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