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肥満/免疫:肥満に関連するインスリン抵抗性の免疫治療による正常化

Nature Medicine 15, 8 doi: 10.1038/nm.2001

肥満と肥満に関連する代謝症候群は世界中で深刻な問題となりつつあるが、その病理機序の解明や現在の治療法は十分ではない。我々は、食餌誘導性肥満(DIO)マウスでは、内臓脂肪組織(VAT)に常在するCD4+ Tリンパ球がインスリン抵抗性を制御していることを見いだした。ヒト組織の解析から、同様の過程がヒトでも起こっている可能性が考えられる。DIOマウスのVAT関連T細胞は、非常に偏ったT細胞受容体Vα レパートリーを示すことから、抗原特異的な増殖が示唆される。DIOが進行して、VATに病因となるインターフェロンγ分泌性1型ヘルパーT(TH1)細胞が蓄積し、TH2(CD4+GATA-binding protein-3+)細胞および調節性Foxp3(forkhead box P3)+ T細胞の通常状態での数を超えた場合には、CD4+ Tリンパ球によるグルコース恒常性制御が障害される。CD4+T細胞をリンパ球の存在しないRag1-ヌルDIOマウスに移入すると、体重増加とインスリン抵抗性が、主にTH2細胞を介して回復するが、CD8+ T細胞ではそのような回復はみられない。肥満のWTマウスおよびob/ob(レプチン欠損)マウスで、CD3特異的抗体あるいはそのF(ab′)2断片を短期間投与すると、Foxp3+細胞よりもTH1細胞が多い状態が解消に向かい、高脂肪食を与え続けた場合でも数カ月間はインスリン抵抗性が回復した。我々のデータは、肥満に関連する代謝異常の進行はCD4+ T細胞による制御が異常となったためであることを示唆している。この制御が最終的に破綻し、肥満が進行して病因となるVAT T細胞が増加した状態は、免疫治療によって回復可能だと考えられる。

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