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脳疾患:罹患脳内皮の分子的特徴はCNSに対する酵素補充治療の新規標的部位となる

Nature Medicine 15, 10 doi: 10.1038/nm.2025

脳血管は極めて広範なネットワークを形成しているため、ほとんどの神経細胞は微小血管と接している。今回我々は、これらの血管を裏打ちしている内皮を、罹患脳に対する酵素補充療法での細胞貯蔵所として使用できる可能性について検討した。モデル系としては、リソソーム蓄積症による中枢神経系(CNS)障害マウス(LSDマウス)を使用した。この研究の基本的な考え方は、血管内皮で発現して分泌された組換え型酵素は、その下に存在する神経細胞およびグリアにエンドサイトーシスにより取り込まれ、神経病態を軽減させるだろうというものである。in vivoパンニングによってファージライブラリーのスクリーニングを行い、罹患および野生型マウスの血管内皮と結合するペプチドを同定した。罹患脳と結合する抗原決定基は、野生型脳からパンニングで得られるものとは異なっていた。また、異なる2種のLSD疾患モデルで別々の抗原決定基が同定されたことは、疾患の状態によって独特な特徴が血管に認められることを意味している。アデノ随伴ウイルス(AAV)のキャプシド上にこれらの抗原決定基を提示させることにより、静脈注射したAAVの体内分布が肝臓を主とするものからCNSを含むように拡張された。LSDマウスで欠損している酵素を発現する抗原決定基修飾型AAVの末梢投与では、異なる2種の疾患モデルで脳全体にわたって酵素活性が回復し、疾患の表現型が改善された。

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