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心疾患:基底状態および血行動態ストレス負荷時の心筋細胞に自食作用が果たす役割

Nature Medicine 13, 5 doi: 10.1038/nm1574

細胞質成分を大規模に分解する進化的に保存された過程である自食作用は、飢餓状態に置かれた細胞の生存機構として機能している。心肥大や心不全などの多様な心疾患で、自食作用の変化が認められているが、自食作用が心臓に有益なのか、あるいは有害に作用しているのかは不明である。本論文では、心臓特異的な自食作用の欠損がマウスで心筋症を引き起こすことを報告する。成体マウスでは、自食作用に必要なタンパク質Atg5(autophagy-related 5)の時間的に制御された心臓特異的な欠損によって、ユビキチン化レベルの上昇を伴う心肥大、左室拡張、収縮異常が生じる。またAtg5欠損心臓では、サルコメア構造の異常、ならびにミトコンドリアの配列異常と凝集が認められた。一方、心発生初期におけるAtg5の心臓特異的な欠損は、基底状態ではこのような心臓表現型を示さなかったが、圧負荷の1週間後に心機能異常および左室拡張がみられるようになった。これらの結果は、基底状態の心臓における構成的な自食作用が、心筋細胞のサイズや心臓の全体的な構造・機能を維持する恒常性維持機構であること、また不全心における自食作用の亢進が、細胞を血行動態ストレスから保護するための適応的な反応であることを示している。

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