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ES細胞:現行技術で培養したヒト胚性幹細胞は免疫原性のある非ヒト由来シアル酸を発現する

Nature Medicine 11, 2 doi: 10.1038/nm1181

ヒト胚性幹細胞(HESC)はあらゆる種類の体細胞を生み出す能力をもつ可能性があり、細胞や組織置換療法の材料としてきわめて有望な候補となっている。HESCは通常、マウスのフィーダー層上で動物由来の「血清代替添加物」とともに培養される。これらはどちらも非ヒト由来シアル酸であるNeu5Gcの供給源となるが、多くのヒトはNeu5Gcに対する血中抗体を有している。現行の標準的条件下では、HESCもそれに由来する胚様体も相当量のNeu5Gcを代謝的に取り込むことになる。こうしたHESCがNeu5Gc特異的抗体を含むヒト血清にさらされると、免疫グロブリンが結合し補体が沈着するため、in vivoではHESCの死につながりかねない。HESCや胚様体中のNeu5Gcの濃度は、熱で不活性化した抗Neu5Gc抗体陰性のヒト血清で培養すると低下し、その後に高力価血清由来の抗体や補体への結合率が減少するが、なおかつ未分化状態も維持された。Neu5Gcの完全排除には、ヒト細胞からなるフィーダー層とヒト血清を使うことが必要だと考えられるが、理想的には他の動物の産物に一度もさらされたことのない新鮮なHESCからスタートすべきだろう。

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