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ようやく力を発揮し始めたジェミニ天文台

Nature ダイジェスト Vol. 9 No. 4 | doi : 10.1038/ndigest.2012.120417

原文:Nature (2012-01-19) | doi: 10.1038/481251a | Gemini’s twin telescopes reboot

Eric Hand

最新の補償光学装置を備え、最先端の天文台によみがえった。

ジェミニ南望遠鏡で多重補償光学システムGeMSなどが稼働し始め、最先端の天文台へとよみがえった。

Gemini Observatory/AURA

ジェミニ天文台は世界最大級の望遠鏡のうちの2基を持ち、ハワイとチリに置かれた天文台から北半球の空と南半球の空の両方を観測することができる。しかし、その本来の力を発揮し始めるまでにはずいぶん時間がかかった。2000年に稼働し始めたものの、科学的成果の面ではライバルに後れを取り、また、あまりに野心的で特殊な装置に数百万ドルの予算を費やし、結局、それらの装置は実現しなかった。天文学者Frederic Chaffeeは、ライバルであるハワイのマウナケア山にあるケック天文台の台長としてジェミニ天文台の苦闘を見てきた。「それはまるで道に迷った子どものようでした」と振り返る。

カリフォルニア大学アーバイン校の天文学者Virginia Trimbleは、「望遠鏡1基当たりで比較すると、ジェミニ天文台の発表論文数と引用数は、ケック天文台やすばる望遠鏡、超大型望遠鏡VLTなどのライバルの天文台に大きく差をつけられていました」と指摘する。

2011年、Chaffeeはケック天文台を退職していたが、ジェミニ天文台長の退職に伴い、請われて同天文台の暫定的な台長になった。それから1年も経っていないが、一時は迷走していた天文台はようやく、その期待に恥じない成果を挙げ始めた。Chaffeeは、米国テキサス州オースティンで今年1月8日から開かれた米天文学会(AAS)で、いくつかの新装置の成果を報告した。アリゾナ州トゥーソンにある米国立光学天文台(NOAO)のDavid Silva台長は「ジェミニ天文台は昨年、大きな成果を見せ、状態を好転させたと思います」と話す。

ジェミニ天文台は、7つの計画参加国(米国、英国、カナダ、チリ、オーストラリア、ブラジル、アルゼンチン)によって運営されている。これらの国の天文学者たちの多くが、ジェミニ南望遠鏡で2011年12月にファーストライトを迎えた新装置、ジェミニ多重共役補償光学システム(GeMS)を利用する計画を進めている。

補償光学は地上の大型望遠鏡で使われる技術で、地球の大気の揺らぎによる画像のぼやけを補正するものだ。具体的には、明るいガイド星、あるいは天文台から発射されるレーザービームの後方散乱を観測して光の波面の乱れを測定し、鏡の形状を即座に変えて補正を行う。しかし、従来は鮮明にできるのは望遠鏡の視野の小さな部分だけだった。もっと大きな領域にわたって補正する方法も10年以上前に提案されている。複数のレーザーを使って空の3次元断層撮影を行うものだ(R. Ragazzoni et al. Nature 403, 54–56; 2000)。しかし、これを実際に行うのは容易ではなかった。

ジェミニ天文台は、5本のビームに分けた50ワットのレーザーを使い、広い領域の補正を初めて実現した。鮮明な画像が得られる領域の大きさは、ほかのシステムの10倍以上ある。日本がハワイに建設した口径8.2mのすばる望遠鏡で補償光学を担当しているOlivier Guyonは「これは大きな成果です。どの望遠鏡も同じことをやろうとするでしょう。このシステムを使えば、近くにある銀河などの大きな天体の全体を鮮明にすることができたり、より遠くの天体を1回の撮影で調べることができるようになるなど、観測がさらに効率的になるでしょう」と話す。

ジェミニ南望遠鏡は2011年12月、研究者たちがその完成を待っていた分光写真器も公開した。これを使えば、クエーサー(遠方の銀河の巨大ブラックホールからなる明るい中心核)など、宇宙の最も遠くにある天体の距離を求めることができるはずだ。遠い星の周囲を回っている惑星を見つけるための撮影装置も今年の終わりまでに完成予定だ。

Chaffeeの天文台長としての契約は1年で、今年5月に終わる。

(翻訳:新庄直樹、要約:編集部)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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