2026年11月号Volume 23 Number 11
DNAの修復力が長寿への鍵か
細胞は、傷ついたDNA を日々修復し生命の設計図を守っている。この「修復力」を高め、老化を遅らせようとする研究が進む。 複数の修復機能を強める仕組みや、修復を助ける物質も見つかった。ただし、修復はがん細胞の生存も支えるため、単純な強化では済まない。発見はヒトの健康寿命の延長につながるのか。研究の最前線と課題を探る。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「菌糸でできた『生きた生地』」「肺炎球菌のユニバーサルワクチンは実現するか?」「河川交通が気候に及ぼす大きな影響」「ガラガラヘビ自身の抗毒素がヒトにも有効かもしれない」、他。
News in Focus
欧州で記録的な山火事、今後はどうなるのか
気候変動によって高温・乾燥の条件が生じやすくなる中、スペインやフランスなどでは、火災の発生傾向が米国カリフォルニア州のものに近づくと、科学者らは指摘する。
野生ナマズで希少な伝播性がんが発見された
伝播性腫瘍はこれまで限られた種類の動物でしか見つかっていないが、実際にはさらに多く存在している可能性がある。
COVID-19によって、体内に潜む多数の休眠ウイルスが再活性化することがある
通常は無害なアネロウイルスの再活性化がlong COVIDの発症と関連しているようだ。
半導体スピン方式が巻き返す
半導体スピン量子ビットを用いた量子コンピューターでの大きな進展を、4つの独立な研究チームが報告した。
米国科学機関に中国との共同研究制限を求める圧力
米国の政治家らは、中国による研究成果の窃取や不正利用を懸念しているが、問題の解決策については意見の一致を見ていない。
農耕の開始以来、数千の言語が消滅
言語の多様性は、遊動生活から農耕生活への転換がきっかけとなって一時的に高まったが、その後急速に失われた可能性がある。
ナルコレプシーの根本原因に効く初めての治療薬
オレキシン受容体作動薬であるオーゼイフルは、睡眠障害をはじめとする健康問題に対する新たな治療法につながる可能性がある。
AIエージェントが科学論文中に数十年前から残る誤りを発見
AIは論文やリファレンスデータベースの誤りを発見するのが得意であることが証明されつつある。
Obituary
追悼:利根川進
日本人初のノーベル生理学・医学賞受賞者
抗体と記憶の仕組みを解き明かした、恐れを知らぬ分子生物学者。
Japanese Author
Free access
DNA修復の仕組みを、生化学から構造へ
DNAの損傷を見つけ、確かめ、切り出す。神戸大学の菅澤薫教授は、その精巧な仕組みを、生体内反応を再現した実験系で探ってきた。構造生物学者との共同研究によって、長年のモデルが裏付けられ、修復因子の思いがけない役割が明らかになった。
News & Views
ヌクレオチドが分子接着剤として機能する
一部のヌクレオチドが、タンパク質同士を「接着」して代謝を制御することが示された。細胞が自然に作り出す他の小分子にも、同様の働きがあるのだろうか。
ナノフィルムの導入でポリマー光触媒の性能が向上
高分子(ポリマー)光触媒の結晶面をナノフィルムで被覆し、電荷キャリアの移動を誘導することで、水分解光触媒反応の活性が大幅に向上した。この戦略は、太陽光を用いた水からの「グリーン水素」の製造に役立つ。
ハダカデバネズミの社会を作る、女王の「におい」
ハダカデバネズミはコロニーを形成して生活しており、1匹の女王だけが繁殖を担うという特徴を持つ。この繁殖における階級社会の維持に、女王に存在する化学物質が役割を担っていることが明らかになった。
Advances
牧羊犬の戦略
「雑音」の多い少数のヒツジの群れを誘導する方法に、コンピューターアルゴリズムのヒントがある。
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