2026年10月号Volume 23 Number 10
科学は本当に信頼を失ったのか
科学への信頼が崩壊したという見方に反し、国際調査では科学者への信頼は比較的高い。一方、政治的分断やワクチンへの疑念は深まり、確かな情報が埋もれる問題もある。科学と社会の関係を、信頼と影響力の両面から考える。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「謎めいた動きによって正体が明らかになったダークコメット」「AIツールが淋病に有効な抗生物質を特定」「高速ニュートリノを生み出した『シャドウ・ブラスター』銀河を特定」「海底に散在する二酸化炭素ハイドレートの不気味なドーム」、他。
News in Focus
欧州大陸は「新たな気候」に入ったのか?
ロンドン、パリ、ベルリンでは、焼け付くような夏が当たり前になったのだろうか。Natureが研究者に見解を聞いた。
引き裂かれる海底を史上初めて観測
中央海嶺が広がる様子が科学者チームによってリアルタイムで観測され、海底の動きや溶岩の噴出が記録された。
有償査読制度が機能している理由 ― ある学術誌編集長の見解
ある生物学系学術誌が査読者に報酬を支払ったところ、初回編集判断に要する時間が85%短縮され、査読の質も高い水準で維持された。
低体温によって脳損傷の進行を食い止める
マウスで2種類の薬剤を併用したところ、代謝が低下するとともに血管が拡張することで、低体温状態が誘導された。
世界初「原子核時計」には何ができる?
独立した2つの研究チームが、電子ではなく原子核のエネルギー準位間の遷移を利用して時を刻む、新しいタイプの時計を作った。
AI執筆の痕跡を消すツールに科学者が懸念
「ヒューマナイザー」ツールは、研究論文や研究助成金申請書に含まれる、人工知能に特徴的な言い回しを消去するよう指示する。
AIへの依存は専門家のスキルを低下させる?
人工知能ツールへの依存が医師やソフトウエアエンジニアの能力を低下させることが、複数の研究で示されている。
Features
CRISPRの次なる一手:エピゲノム編集
複数のスタートアップ企業が、特定のエピジェネティックマーカーを標的とし、高コレステロール血症や希少な筋疾患などを対象とする治療法の臨床試験を開始している。
科学への信頼を巡る意外な真実
科学は「信頼の危機」にあると主張する人々もいるが、データが語る物語は異なっている。
認知症を防ぐには — 科学的根拠に基づいて
意欲的な大規模研究で、食事や運動などの生活習慣への介入の効果について掘り下げた調査が続いている。
ナトリウムイオン電池は世界をどのように変え得るのか
ナトリウムイオンに基づく電池が量産段階に入りつつある。果たしてナトリウムイオン電池は、電気自動車などへのエネルギー供給において、リチウムイオン電池に代わる安価で安全な技術となれるのか。
ペプチドブームは科学的根拠に裏付けられているのか
ペプチド注射がウェルネス業界で流行している。しかし研究者らは、規制されていないペプチド薬への熱狂が、科学的な検証に先行していると指摘する。
Japanese Author
Free access
生殖細胞は「動く遺伝子」をどう封じているのか
ゲノム内を移動し、時に遺伝子を傷付けるトランスポゾン。生殖細胞は、小さな「piRNA」分子を道しるべに、その活動を抑制している。piRNA研究で世界をけん引してきた東京大学大学院理学系研究科の塩見美喜子教授に、Piwiに結合するRNAを発見した舞台裏や、今なお残る疑問について話を聞いた。
News & Views
98個の量子ビットを自在に動かせる量子コンピューター
トラップ(捕捉)されたイオンを使って、あらゆる2つの量子ビットを接続できる量子コンピューターが開発され、古典コンピューターでは実現できない性能を発揮した。
鉄依存性の細胞死を防ぐ分子障壁
鉄はフェロトーシスという細胞死の一種を引き起こす。今回、細胞においてスペルミンという分子が鉄と結合して、鉄によるフェロトーシスの開始を防いでいることが分かり、組織損傷やがんの治療に新たな道が開かれた。
AIシステムが仮説を立て、検証法を考案する
複数のAIエージェントが協働して生物医学の仮説を生成し、データを解析する。発見サイクルの全工程にAIが関与する研究の姿が現実味を帯びてきた。
Advances
ゾウの鼻の感覚
独特なひげは、周囲の物を触って感じ取るのに役立っている。
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