遺伝子操作でトマトの糖度をアップ
トマトはサイズと糖度がトレードオフの関係にあり、両立が難しかった。今回特定された糖度を制御する遺伝子を改変すると、サイズを変えずに甘いトマトを作ることができる。 Credit: Vladimir Mironov/iStock/Getty
栄養価の高い植物を生産するため、そして人口が増加し続ける世界に食料を供給するためには、作物の改良が欠かせない。しかし改良戦略は、代謝と遺伝子両面のトレードオフが障害となることが多い1。このトレードオフは、必要としている別々の特性を制御する遺伝子が染色体上で物理的に近接している「遺伝的連鎖」によって生じており、そのため、一方の遺伝子に影響を与えずにもう一方の遺伝子を改変するのは難しくなる。このことは、世界中で栽培されている作物であるトマトの糖度とサイズという重要な特性にも当てはまる2。このほど、中国農業科学院蔬菜花卉(そさいかき)研究所(北京)の張金喆(Jinzhe Zhang)、中国農業科学院深圳農業基因組研究所(AGIS、広東省)・山東省農業科学院(中国済南)の呂宏君(Hongjun Lyu)、およびAGISの陳潔(Jie Chen)ら3が、糖を合成する酵素の分解を促進するタンパク質の遺伝子を標的にすることにより、果実のサイズに影響を与えずにトマトの甘みを強めることに成功したと、Nature 2024年11月21日号647ページに発表した。
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翻訳:小林盛方
Nature ダイジェスト Vol. 22 No. 2
DOI: 10.1038/ndigest.2025.250238
原文
Tomato engineering hits the sweet spot to make big sugar-rich fruit- Nature (2024-11-13) | DOI: 10.1038/d41586-024-03302-8
- Amy Lanctot & Patrick M. Shih
- 共にカリフォルニア大学バークレー校(米国)および ローレンス・バークレー国立研究所(米国カリフォルニア州)に所属
参考文献
- Gao, M., Hao, Z., Ning, Y. & He, Z. Plant Biotechnol. J. 22, 1198–1205 (2024).
- Tieman, D. et al. Science 355, 391–394 (2017).
- Zhang, J. et al. Nature 635, 647–656 (2024).
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