News & Views
ヒトは「動くDNA断片」によって尾を失った?
尾は動物界に広く見られる特徴であり、全ての哺乳類は胚発生のどこかの時点で尾を持つ1。ヒトでは、胚段階が終わる胎齢8週ごろに尾が体内に吸収されて消失する2が、尾骨はその後も残存する。尾の喪失は、ヒト上科(ヒトと類人猿)に独特な特徴と考えられており、直立二足歩行というヒトの歩行様式に影響を与えた可能性がある。このたび、ニューヨーク大学ランゴーンヘルス(米国)、ブロード研究所およびハーバード大学(共に米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)に所属するBo Xiaら3は、こうした尾の喪失に、「転位性遺伝因子(可動性遺伝因子ともいう)」と呼ばれる、進化の過程でゲノム内を動き回ったDNA配列の挿入が関連した可能性を見いだし、Nature 2024年2月29日号1042ページで報告した。
全文を読むには購読する必要があります。既に購読されている方は下記よりログインしてください。
本サービスでは、サイトご利用時の利便性を向上させるためにCookiesを使用しています。詳しくは、シュプリンガーネイチャー・ジャパン株式会社の「プライバシー規約」をご覧下さい。
翻訳:小林盛方
Nature ダイジェスト Vol. 21 No. 5
DOI: 10.1038/ndigest.2024.240545
原文
A mobile DNA sequence could explain tail loss in humans and apes- Nature (2024-02-28) | DOI: 10.1038/d41586-024-00309-z
- Miriam K. Konkel & Emily L. Casanova
- Miriam K. Konkelはクレムソン大学(米国サウスカロライナ州)に所属。Emily L. Casanovaはロヨラ大学ニューオーリンズ(米国)に所属。
参考文献
- Mallo, M. Cell. Mol. Life Sci. 77, 1021–1030 (2020).
- Gasser, R. F. Atlas of Human Embryos (Harper and Row, 1975).
- Xia, B. et al. Nature 626, 1042–1048 (2024).
- Chester, S. G. B., Williamson, T. E., Bloch, J. I., Silcox, M. T. & Sargis, E. J. R. Soc. Open Sci. 4, 170329 (2017).
- Deininger, P. Genome Biol. 12, 236 (2011).
- Herrmann, B. G., Labeit, S., Poustka, A., King, T. R. & Lehrach, H. Nature 343, 617–622 (1990).
- Buckingham, K. J. et al. Mamm. Genome 24, 400–408 (2013).
- Pattison, K. Fossil Men: The Quest for the Oldest Skeleton and the Origins of Humankind (William Morrow, 2020).
- Massaro, L., Massa, F., Simpson, K., Fragaszy, D. & Visalberghi, E. Primates 57, 231–239 (2016).
- Nabeshima, J., Sariji, M. Y. & Minamizawa, K. ACM SIGGRAPH 2019 Posters, 52 (2019).
- Stevens, N. J. et al. Nature 497, 611–614 (2013).
- Whitlock, M. C. Evolution 54, 1855–1861 (2000).
関連記事
ブラジルの記録的な洪水で露出した化石の救出を急げ
2024年12月号
クロマチンの動きをクライオ電顕で解く
2024年12月号
損傷部位との境界細胞が心破裂のリスクを上昇
2024年12月号
細孔によるタンパク質配列解読へ新たな一歩
2024年12月号
タイで初期のティラノサウルス類の歯を発見
2024年11月号
Advertisement