生前に確定診断できるタウオパチー(脳内にタウタンパク質が異常蓄積する疾患)は現在、遺伝性のものと、アミロイドβタンパク質の異常蓄積を特徴とするアルツハイマー病のみだ。ワシントン大学医学部の佐藤千尋氏と堀江勘太氏らは、この疾患のバイオマーカーを求め、 脳と脳脊髄液中のタウ種について、相関関係を詳細に解析。脳脊髄液中の特定のタウ種が、原発性タウオパチーの指標となり得ることを見いだした。
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–– お二人で協働し、新規タウバイオマーカーの発見につながる成果を上げられました。
佐藤 私は大学院時代からアルツハイマー病(AD)を対象にアミロイドβタンパク質(Aβ)の代謝研究をしており、卒業後は米国のワシントン大学医学部でAβを切り出す酵素ガンマセクレターゼの研究をし、その後、ランドール・ベイトマン(Randall Bateman)先生のチームに加わって研究を続けています。ベイトマン先生はAβの代謝研究、最近ではADの血液バイオマーカーの研究を主に行っていますが、2013年に、ADのもう1つの病因であるタウタンパク質の代謝も検討したいと考え、私に白羽の矢が立ちました。被験者さまから試料を集めたり、この論文につながるパイロットプロジェクトを立ち上げたりして基礎解析を進めていたところ、2019年に堀江先生がチームに加わり、今回の成果に至りました。
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Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 8
DOI: 10.1038/ndigest.2023.230832