ヒトSer/Thrキナーゼのリン酸化モチーフの全容
タンパク質のリン酸化とは、タンパク質にリン酸基を選択的に付加することで、生命の基本的な調節機構である。逆に、リン酸化の調節不全は、アルツハイマー病、がん、糖尿病などの疾患に関与している1。キナーゼは、リン酸化を触媒する酵素で、薬剤の主な標的であるため2、キナーゼの調節機構を理解することは、新しい治療機会になる可能性がある。質量分析法を用いてリン酸化を特定および定量化する能力が進歩したことで、ヒトタンパク質の既知のリン酸化部位(ホスホプロテオームと総称される)の数は急速に増加し、今世紀初頭の数百から今日では10万以上になった3。しかし、これらのリン酸化部位と、実際にリン酸化するキナーゼとを結び付けるのは困難なままである3。このほどワイルコーネル医科大学(米国ニューヨーク)のJared L. JohnsonおよびTomer M. Yaronら4は、ある主要なクラスに属するヒトキナーゼのほぼ全てについて、基質となり得るモチーフを定義した包括的な情報資源をNature 2023年1月26日号759ページで報告し、この問題の解決に向けて大きな一歩を踏み出した。
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翻訳:三谷祐貴子
Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 4
DOI: 10.1038/ndigest.2023.230443
原文
Targets mapped for almost all human kinase enzymes- Nature (2023-01-26) | DOI: 10.1038/d41586-022-04583-7
- Sean J. Humphrey & Elise J. Needham
- Sean J. Humphreyは王立小児病院 (オーストラリア・ビクトリア州メルボルン)に所属。Elise J. Needhamはケンブリッジ大学(英国)に所属。
参考文献
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