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偏食の根底にある免疫学

アレルギー疾患は増加傾向にあり、世界人口の30~40%が罹患している1。研究では、アレルギー疾患や他の免疫介在性疾患に関連する症状や死亡に重点が置かれることが多いが、アレルギーにも何らかの防御の役割や利点があることを示唆する新たな証拠もある。例えば、食物嫌悪は有害な刺激への曝露を制限でき、さらなるダメージに対する防御戦略として機能している。しかし、アレルギーと食物嫌悪がどのように関係しているのか、その機構は分かっていない。このほど、マウスにおいては、アレルギー反応に関与する免疫系の「武器」、すなわち抗体を起点とする脳への情報伝達が食物回避につながるという証拠が、2つの研究チームによってNature 2023年8月17日号に報告された。ドイツがん研究センターのThomas Plumと同センターおよびハイデルベルク大学のRebecca Binzbergerらの研究チーム2(634ページ)、エール大学医学系大学院(米国コネチカット州ニューヘイブン)のNathaniel D. Bachtelと同大学院およびアリゾナ州立大学(米国テンピー)のEsther B. Florsheimらの研究チーム3(643ページ)である。

図1 食物アレルギーによる食物嫌悪行動に関与する免疫応答
PlumとBinzbergerら2、およびBachtelとFlorsheimら3は、マウスにおいて食物に対して生じるアレルギー反応を調べた。
a 腸内の食物が上皮細胞を通過して腸組織に入ると、アレルギー反応を開始させることがある。アレルゲンへの感作には、さまざまな免疫細胞とシグナル伝達分子が必要である。樹状細胞はアレルゲンを捕捉して、2型ヘルパーT細胞を活性化する。2型ヘルパーT細胞は、サイトカインのIL-4を放出する。これにより、B細胞と呼ばれる免疫細胞は、特異的なアレルゲンを認識できるIgEというタイプの抗体を放出する。このIgEはマスト細胞に結合する。
b アレルゲンに感作されたマウスが、その後同じアレルゲンに遭遇すると、マスト細胞はロイコトリエンと呼ばれる分子を放出し、上皮細胞はGDF15(growth and differentiation factor 15)というホルモンを放出する。ロイコトリエンとGDF15の放出は最終的に、孤束核(NTS)、外側結合腕傍核(PBN)、扁桃体として知られる脳領域の活性化につながり、信号入力が処理されて、行動応答が引き起こされる。この一連の事象は、マウスがアレルゲンを含む食物の摂取を避ける仕組みを説明している可能性がある。

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翻訳:三谷祐貴子

Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 11

DOI: 10.1038/ndigest.2023.231140

原文

The immunology that underlies picky eating
  • Nature (2023-08-17) | DOI: 10.1038/d41586-023-02179-3
  • Marc E. Rothenberg
  • シンシナティ小児病院医療センターおよび シンシナティ大学医学系大学院(共に、米国オハイオ州)に所属。

参考文献

  1. Pawankar, R., Canonica, G. W., Holgate, S. T. & Lockey, R. F. (eds) in The WAO White Book on Allergy 12 (World Allergy Org., 2011).
  2. Plum, T. et al. Nature 620, 634–642 (2023).
  3. Florsheim, E. B. et al. Nature 620, 643–650 (2023).
  4. Hadamitzky, M., Lückemann, L., Pacheco-López, G. & Schedlowski, M. Physiol. Rev. 100, 357–405 (2020).
  5. MacQueen, G., Marshall, J., Perdue, M., Siegel, S. & Bienenstock, J. Science 243, 83–85 (1989).
  6. Valent, P. et al. Theranostics 10, 10743–10768 (2020).
  7. Lockhart, S. M., Saudek, V. & O’Rahilly, S. Endocr. Rev. 41, bnaa007 (2020).
  8. Bernstein, I. L. Nutrition 15, 229–234 (1999).
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  10. Dantzer, J. A., Kim, E. H., Chinthrajah, R. S. & Wood, R. A. J. Allergy Clin. Immunol. 151, 1–14 (2023).
  11. Terhorst-Molawi, D. et al. Allergy 78, 1269–1279 (2023).
  12. Xiao, Q.-A., He, Q., Zeng, J. & Xia, X. Biomed. Pharmacother. 146, 112582 (2022).