News in Focus

ダイヤモンドが運んできた地球深部の貴重な鉱物

Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 1 | doi : 10.1038/ndigest.2022.220104

原文:Nature (2021-11-11) | doi: 10.1038/d41586-021-03409-2 | Diamond delivers long-sought mineral from the deep Earth

Alexandra Witze

ダイヤモンド片に封入されて地上に届けられた鉱物「デイブマオアイト」は、それ自体が、マントルの加熱に関わる放射性同位体を運ぶ媒体だった。

デイブマオアイトの微小な黒い結晶が封入されたダイヤモンド片。デイブマオアイトは、地球深部の高温高圧下で形成された鉱物である。 | 拡大する

Aaron Celestian, Natural History Museum of Los Angeles County

アフリカの鉱山で採掘されたダイヤモンド片で見つかった微小な黒い包有物が、地球深部を構成する極めて重要な鉱物であることが明らかになった。このような鉱物は数十年にわたって探し求められてきたが、自然界で形成されたものが発見され、新鉱物として認められたのは今回が初めてである。「めったに見られない貴重な鉱物です。通常、地上の環境では存在し得ない鉱物で、地球深部の熱の流れに重要な役割を果たしています」と、今回の研究を主導したネバダ大学ラスベガス校(米国)の地球化学者Oliver Tschaunerは言う。この成果は、Science 2021年11月12日号で発表された1

Tschaunerはこの新鉱物を、高圧地球化学や地球物理学の分野において数々の先駆的発見をした科学者Ho-kwang ‘Dave’ Mao(毛河光)にちなんで、「デイブマオアイト(davemaoite)」と名付けた。

デイブマオアイトの化学組成は、大部分がケイ酸カルシウム(CaSiO3)だが、結晶構造内に他のさまざまな元素を取り込むことができ、そうした元素には、放射性元素であるウラン(U)とトリウム(Th)、放射性同位体を持つ元素のカリウム(K)が含まれる。放射性元素や放射性同位体が放射壊変の際に発する熱は、地球内部の熱源となっている。UとThとKはまた、上部マントル(地球の内部構造は、外側から順に、地殻、上部マントル、下部マントル、外核、内核となる)の鉱物結晶には取り込まれにくい、いわゆる「不適合元素」である(2016年9月号「地球の内核と磁場形成に新たな議論!」参照)。すなわち、こうした元素を含むデイブマオアイトは、下部マントルでの熱生成や熱移動、ひいては、プレートテクトニクスなどの過程を駆動するマントル–地殻間の熱循環において、重要な役割を担う存在と言える。

デイブマオアイトは、下部マントル(深さ660~2700km)で見られるような高温高圧の環境でしか存在できない。だが、今回確認されたデイブマオアイトの微小な結晶は、ダイヤモンドの内部に閉じ込められていたために、そのままの状態で地球深部から地上へと送り届けられたという。「ダイヤモンドの硬さのおかげで、内部の包有物が高圧のまま維持されたのです」とTschaunerは説明する。

世界最大の露天掘りダイヤモンド鉱山であるボツワナのオラパ鉱山。デイブマオアイトの微小な結晶を含んだダイヤモンド片は、この鉱山で採掘された。 | 拡大する

PER-ANDERS PETTERSSON/GETTy

この緑がかった八面体形状のダイヤモンド片は、世界最大の露天掘りダイヤモンド鉱山であるボツワナのオラパ鉱山で数十年前に掘り出されたもので、1987年にカリフォルニア工科大学(米国パサデナ)の鉱物学者George Rossmanが鉱物商から購入していた。TschaunerとRossmanの研究グループは、地球深部起源のダイヤモンド中の包有鉱物を対象とした調査の一環として、数年前からこの鉱物を調べてきた。

Tschaunerらは、アルゴンヌ国立研究所(米国イリノイ州レモント)の先端放射光施設(APS)で、このダイヤモンド片にX線を照射し、包有物の分析を行った。その結果、この包有物にはCa鉱物が多く含まれていることが明らかになり、さらなる分析から、それがCaSiO3であることが確認された。CaSiO3は、形成時の温度と圧力に応じていくつかの異なる結晶形をとる。このダイヤモンド中のCaSiO3は立方晶ペロフスカイト構造をとっており、Tschaunerによると、この構造は深さ660~900kmに相当する温度と圧力でしか形成されないという。このようなCaSiO3ペロフスカイトは、過去に実験室で合成されており2、理論的には下部マントルに存在するはずだと考えられていた。だが、地質学的試料中で実際に、この構造のCaSiO3ペロフスカイトが疑いの余地なく観察されたことは、これまでなかった。

Tschaunerとは別の研究チームが、2018年に深部起源のダイヤモンド中にCaSiO3ペロフスカイトを発見したと報告した3が、このチームはこれを新鉱物として国際鉱物学連合(IMA)に申請していなかった。そこでTschaunerらは、自分たちが見つけたダイヤモンド中の鉱物を新鉱物として申請することにした。TschaunerはMaoに電話をかけ、この新鉱物にMaoにちなんだ名前を付けてよいか尋ねたという。「もちろん、快諾しましたよ」とMao。彼は、高圧科学技術先端研究センター(中国・上海)の所長を務めている。

2020年、IMAはデイブマオアイトを新鉱物として承認した。実は、Maoにちなんだ名前が付けられた高圧鉱物はこれが2例目である。1例目は、中国の研究者によって衝突クレーター内の岩石から発見され、2017年に承認された「マオホーカイト(maohokite)」だった。ちなみに、鉱物名には申請者の名前を使ってはいけないというルールがある。

Tschaunerによると、デイブマオアイトは下部マントルを構成する3つの主要鉱物の1つで、下部マントル中の物質のおよそ5~7%を占めるという。しかし、UやThを取り込む鉱物はデイブマオアイトだけであり、これらの放射性元素は、デイブマオアイトの独特な結晶構造に起因して、Caと容易に置き換わることができると考えられる。

デイブマオアイトの結晶を含むダイヤモンド片は、他にもどこかに眠っている可能性がある。オラパ鉱山で発見された今回のダイヤモンド中のデイブマオアイトには、Kが豊富に含まれていた。そのため、デイブマオアイトを見つける方法の1つは、Kが豊富な地域で深部起源ダイヤモンドを探すことかもしれない、とカーネギー科学研究所(米国ワシントンD.C.)の地球化学者Yingwei Feiは言う。

「必ず探します」とTschaunerは意気込む。

(翻訳:藤野正美)

参考文献

  1. Tschauner, O. et al. Science 374, 891–894 (2021).
  2. Liu, L.-G. & Ringwood, A. E. Earth Planet. Sci. Lett. 28, 209–211 (1975).
  3. Nestola, F. et al. Nature 555, 237–241 (2018).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

プライバシーマーク制度