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ティラノサウルス・レックスの総個体数が推定された!

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 6 | doi : 10.1038/ndigest.2021.210602

原文:Nature (2021-04-15) | doi: 10.1038/d41586-021-00984-2 | How many T. rex ever existed? Calculation of dinosaur’s abundance offers an answer

Freda Kreier

現生動物に見られる体重と個体群密度の関係を用いて、「暴君トカゲ王」がかつて何頭存在したかが割り出された。

オランダのナチュラリス生物多様性センター(ライデン)で展示されている、ティラノサウルス・レックスの骨格標本「トリックス」。 | 拡大する

MARTEN VAN DIJL/AFP via Getty Images

地球上には一体、どれだけの数のティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus rex)が存在したのだろう? そんな疑問に対する答えが、Science 2021年4月16日号で報告された1。それは「約240万年という期間に計約25億頭存在した」というもの。この数字は、動物の化石化がいかに稀な事象であるかを示している。

カリフォルニア大学バークレー校(米国)の古生物学者Charles Marshallが率いる研究チームは今回、現生動物を研究する生態学者たちと同じ方法を用いて、後期白亜紀の恐竜ティラノサウルス・レックスの総個体数を推定した。

「私たちは、化石が珍しいものだと知っています。では、実際どのくらい珍しいのでしょうか」とMarshallは問う。「その答えを見いだすには、その動物が何頭存在したかを知る必要があります」。

Marshallらがそれを割り出す上で頼ったのは、「ダムスの法則」と呼ばれる、現生動物に見られる体重と個体群密度の関係だった。この法則によれば、種の平均個体群密度は、体重が増大するにつれて予測可能な形で低下する。

Marshallらはまず、生態と推定体重に基づいて、ダムスの法則の関係式から個体群密度を割り出し、これを、化石の産出記録から推定された地理的分布と組み合わせて、任意の時点での総個体数を約2万頭と算出した。これは、米国カリフォルニア州の面積なら約3800頭が、ワシントンDCの面積なら2頭が同時に生息していたことを意味する。

研究チームはまた、寿命と性成熟に達する年齢、各年齢での平均子孫数から世代時間を割り出し、約240万年という推定存在期間中の総世代数を約12万7000世代と算出。これと、常時の総個体数から、出現から絶滅までの間に計約25億頭が存在したという結論を得た。これまでに発見されているティラノサウルス・レックスの成体化石は32体にすぎず、これは、化石化の確率が約8000万頭につきわずか1頭と限りなく低かったことを示している。

この結果は、化石の全般的な希少さを物語っており、個体数の少なかった種の多くは保存されなかったのではないかとMarshallは言う。「化石記録は、想像を超えた過去の歴史に関する唯一の直接的な情報なのです」。

メリーランド大学カレッジパーク校(米国)の古脊椎動物学者Thomas Holtzは、今回の計算を「興味深い推測」と呼び、「化石化の確率が具体的に算出されたのは初めてです」と語る。彼はまた、一連の推算を現生種で検証して正確さを明確にするのが好ましいと言い、より化石が豊富な絶滅種でも同様の研究が行われ、過去の生態系の理解が深まることに期待を寄せる。

(翻訳:小林盛方)

参考文献

  1. Marshall, C. R. et al. Science 372, 284–287 (2021).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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