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熱で見るヘビの“目”

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 3 | doi : 10.1038/ndigest.2021.210329a

「ピット器官」の信号変換の仕組み。

クサリヘビには、熱で物体を捉える非常に高感度の視力がある。 | 拡大する

JONNE SEIJDEL/500PX/GETTY

クサリヘビやニシキヘビなど一部のヘビは、暗闇の中で獲物が放つ熱を感知して狩りをすることが知られている。しかし、この熱をどのようにサーマルイメージに変えて“見て”いるのだろうか? ヒューストン大学とラトガース大学(いずれも米国)の研究チームが提唱したモデルは1つの回答を示唆している。Matter に掲載されたこの論文は、熱を電気に変換する柔軟な人工素材の開発につながるかもしれない。そうした素材はセンサーや環境発電などに有用だろう。

熱で見る“目”として働いているのは、これらのヘビの「ピット器官」だと考えられている。鼻孔の近くにある壺状のくぼみであり、壺の入り口には薄い膜がかかっている。ピット器官は非常に高感度で、真っ暗闇の中で約40cm離れた動物を0.5秒足らずで検知する。膜の神経線維の中にイオンを伝達するチャネルがあり、このチャネルは温度変化によって活性化することが既に明らかになっていた。この膜が熱を受けるとすぐに温度が上がることも分かっていたが、ピット器官の温度変化がどのように電気信号に変わって脳に伝わるのかは不明だった。

「自然界には熱を電気に変換する焦電体が確かに存在しますが、それらはまれであり、しかも硬い結晶です。そんな結晶はヘビでは見つかっていませんでした」と、論文を共著したヒューストン大学の機械工学者Pradeep Sharmaは言う。「今回分かったのは、生体細胞のような軟らかな物質が、ある特別な条件下では弱い焦電体としても機能する場合があるということです」。

数理モデルで検討

Sharmaらは変形しやすく熱に反応する物質中で静電荷がどのように移動するかを数理モデルに基づいて検討した。ピット器官の膜を、そうした物質でできた薄膜で、熱されると厚みが増すものとしてモデル化した。ピット器官の膜を構成している細胞を含め、一般に大半の細胞の表面には微小な電圧が自然に生じている。研究チームは、膜が厚くなると、膜を構成する細胞上で電荷が少し移動して電圧が変化するはずであり、神経細胞がこの変化を把握し得ることを明らかにした。

この理論モデルを実際のピット器官の数値に当てはめて検証した結果、本物のヘビが獲物を発見する速さと一致することが分かった。さらに、獲物までの距離や獲物と周囲との温度差がどれほどなら検出できるかも現実と一致した。

(翻訳協力:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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