新型コロナウイルス研究注目の論文(1月)
1月29日
コロナウイルスの「アキレス腱」を攻撃する抗体
科学者たちが、SARS-CoV-2およびその近縁のコロナウイルスを効果的に無効化する抗体を作製した。
バイオ医薬品会社Adimab(米国ニューハンプシャー州レバノン)のLaura Walkerらは、SARS-CoV-2と近縁のウイルスSARS-CoVに2003年に感染して回復した人の免疫細胞から抗体を分離した(C. G. Rappazzo et al. Science https://doi.org/fsbc; 2021)。研究者たちは、この抗体の構造を改変してADG-2という抗体を作製し、この抗体が実験室の培養皿の中のSARS-CoV-2を効果的に無効化することを確認した。
彼らが作製した抗体は、SARS-CoV-2と近縁の各種のコロナウイルスも不活化することができた。マウスに投与すると、その肺の中でSARS-CoV-2が増殖するのを阻止し、呼吸器疾患を防ぐことができた。
実験により、ADG-2がSARS-CoV-2および近縁の各種のコロナウイルスの表面に見られる受容体を標的としていることが示された。著者らは、この受容体はSARS-CoV-2および近縁のコロナウイルスの「アキレス腱」であるとし、この脆弱性を利用して新興のコロナウイルスに対するワクチンを作成できることを示唆している。
1月28日
私たちの食卓を支える職種の人々はCOVIDのリスクが特に高い
米国カリフォルニア州の死亡記録の分析から、COVID-19のパンデミックの発生から最初の8カ月間は、いくつかの分野のエッセンシャル・ワーカーの死亡リスクが予想より20~40%も高かったことが明らかになった。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校(米国)のYea-Hung Chenらは、同州の18~65歳の死亡記録を分析し、パンデミック期間中の現役世代の成人の死亡数が、パンデミックがなかった場合の予想よりどのくらい多かったかを推定した(Y.-H. Chen et al. Preprint at medRxiv https://doi.org/frx9; 2021)。研究チームは、パンデミックがなかった場合の予想と比較して、食品・農業従事者の死亡率は39%、輸送・物流従事者の死亡率は28%も上昇していたのに対し、非エッセンシャル・ワーカーの死亡率は11%の上昇にとどまっていたことを明らかにした。
COVID関連リスクが最も高かったのは、料理人、パン職人、農業労働者、出荷用の商品を梱包したり準備したりする人々だった。リスクは人種や民族によってもばらつきがあった。パンデミックが発生しなかった場合と比較すると、パンデミック中の18~65歳の死亡率は、ラテンアメリカ系の人々では全体で36%上昇し、中でも食品・農業従事者では59%も上昇していた。
著者らは、エッセンシャル・ワーカーには無料の個人防護具を支給し、検査を受けやすくしなければならないと主張する。なお、この知見はまだ査読を受けていない。
1月26日
モデルナ社の新型コロナワクチンは変異株にも有効
COVID-19ワクチンの代表格であるモデルナ社のワクチンは、急速に感染が拡大しているSARS-CoV-2の新しい変異株に対しても効果を発揮するようだ。
バイオテクノロジー企業モデルナ(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)のDarin Edwardsらは、同社のワクチンの接種を2回受けた8人と24頭のアカゲザルから血液検体を採取した(K. Wu et al. Preprint at bioRxiv https://doi.org/fr2g; 2021)。このワクチンがコロナウイルスのスパイクタンパク質を作るように体に指示すると、ウイルスが細胞に感染するのを阻止する「中和」抗体を免疫系に産生させることができる。ワクチン接種を受けた人とサルの血液検体の全てにウイルスに対する中和抗体が含まれていた。
研究者たちはこれらの血液検体を、英国で最初に発見された変異株や南アフリカで最初に発見された変異株501Y.V2を含む数種類の変異株に曝露させた。英国で最初に発見された変異株に対するこの検体中の中和抗体の有効性は、従来型のウイルスに対する場合と同程度だったが、501YV.2を中和する効果は約5分の1〜10分の1しかなかった。それでも、抗体は両方の変異株に対する防御として十分な効果があったと著者らは述べている。
モデルナ社は、変異株に対する免疫力を高めるためのブースターの試験を計画しているという。なお、この知見はまだ査読を受けていない。
1月21日
COVIDワクチンは新しい変異株には効果がないかもしれない
速いペースで感染が拡大している新型コロナウイルスの新しい変異株は、2つの主要なワクチンによる防御効果を低下させるかもしれない。
ロックフェラー大学(米国ニューヨーク市)のMichel Nussenzweigらは、モデルナ社のワクチンかファイザー社とビオンテック社が共同開発したワクチンのいずれかの接種を2回受けたボランティア20人の血液を分析した(Z. Wang et al. Preprint at bioRxiv https://doi.org/frdn; 2021)。どちらのワクチンも、ウイルスが細胞に感染する際に用いるスパイクタンパク質を作るようにヒト細胞に指示するRNAを含んでいる。これにより、体はスパイクタンパクを認識する抗体を産生するようになる。
研究参加者は2回目の接種から3~14週間以内に数種類の抗体を産生するようになり、その中にはSARS-CoV-2 が細胞に感染するのを阻止できる抗体も含まれていた。こうした中和抗体のいくつかは、従来型のウイルスのスパイクタンパク質に一定の変異が生じたウイルスに対しても同様の効果を示した。しかし、いくつかの中和抗体は、変異株の感染を阻止する効果が3分の1しかなかった。
研究チームが検証した変異の一部は、英国、ブラジル、南アフリカで最初に確認された変異株に見られるもので、これらの変異株のうち少なくとも1つは、現在感染が広がっている他のウイルス株よりも感染しやすい。
今回の知見は、ワクチン耐性変異株が出現する可能性があることを示唆しており、このことはCOVID-19ワクチンの更新が必要となる可能性があることを意味している。なお、これらの知見はまだ査読を受けていない。
1月20日
SARS-CoV-2が持つあまり知られていない特徴が治療に役立つ可能性
SARS-CoV-2の主要なタンパク質の中の見落とされがちな領域が、ウイルスの鎧の重要な隙間になっている。
SARS-CoV-2に対する中和抗体は、ウイルス粒子が細胞に侵入するのを阻止するため、体内で最も強力な武器となる。研究者たちがこれまで調べてきた中和抗体のほとんどが、ウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)と呼ばれる領域を標的としている。しかし、これまでの研究から、スパイクタンパク質の別の領域、特にN末端ドメイン(NTD)と呼ばれる領域に作用する中和抗体も確認されている。
ワシントン大学(米国シアトル)のDavid Veeslerらは、COVID-19から回復した人々の血液を分析し、NTDを認識する抗体を41種類同定した(M. McCallum et al. Preprint at bioRxiv https://doi.org/fq92; 2021)。その中のいくつかには、RBDを認識する抗体と同程度に感染を防ぐ効果があることが証明された。最も強力なNTD標的抗体を投与されたハムスターは、SARS-CoV-2に感染しなかった。
なお、著者らは、英国と南アフリカで最初に同定されたコロナウイルス変異株が、一部の NTD抗体の効果を弱める可能性がある変異を持っていることも明らかにしている。なお、この知見はまだ査読を受けていない。
1月19日
免疫細胞は少なくとも半年間はCOVIDを「記憶」している
免疫系は、最初の感染後少なくとも半年間は新型コロナウイルスを撃退する抗体の作り方を覚えている。
SARS-CoV-2に対する抗体の濃度は感染後数カ月で低下することが多く、ウイルスに対する免疫力が急速に低下することが懸念されている。ロックフェラー大学(米国ニューヨーク市)のMichel Nussenzweigらは、ウイルスに感染した87人から感染の約1カ月後と6カ月後に血液検体を採取した(C. Gaebler et al. Nature https://doi.org/fq6k; 2021)。研究チームは、研究参加者の抗体とメモリーB細胞(研究参加者が再感染した場合にウイルスに対する抗体の産生を刺激する免疫細胞)の濃度をモニターした。
研究チームは、コロナウイルスのスパイクタンパク質に対する抗体のレベルは6カ月間で低下したことを発見した。しかし、スパイクタンパク質に対する抗体を作る特異的メモリーB細胞の濃度は変わらなかった。研究者らは14人の参加者につき感染から4カ月後に腸から検体を採取したところ、その半数がSARS-CoV-2のタンパク質またはRNAを持続的に保持しており、免疫系に対して継続的に刺激を与えているらしいことが分かった。
1月15日
COVIDによる死を防ぐ2種類の抗炎症薬
体の免疫反応を減弱させる2種類の薬物が、COVID-19重症患者の命を救うことが分かった。
COVID-19重症患者の一部は、自分自身の免疫反応によって組織が損傷され、IL-6というタンパク質によって調節される免疫系分子や免疫細胞の活性が上昇している。IL-6の活性を抑える治療の効果を調べるために、ロンドン大学インペリアルカレッジ(英国)のAnthony Gordonらは、免疫細胞がIL-6を感知するために利用するタンパク質を阻害する薬物トシリズマブとサリルマブの試験を行った(A. C. Gordon et al. Preprint at medRxiv https://doi.org/fqgf; 2021)。
研究チームは、集中治療室で人工呼吸器や高流量酸素などの呼吸サポートを受けているCOVID-19患者(成人)803人にこれらの薬物を投与した。参加者のうち353人にトシリズマブが投与され、48人にサリルマブが投与された。402人はどちらも投与されなかった。薬物治療は死亡率を低下させた。対照群では36%近かった死亡率が、トシリズマブ投与群では28%、サリルマブ投与群では22%に減少した。なお、この知見はまだ査読を受けていない。
1月14日
持続的な免疫反応を誘導するCOVIDワクチン候補
SARS-CoV-2に対するあるワクチン候補は若者にも高齢者にも抗体を作らせることが、初期の臨床試験から明らかになった。
ジョンソン・エンド・ジョンソン(米国ニュージャージー州ニューブランズウィック)が開発中のこのワクチンは、無害なウイルスを利用して、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質を作るための指示を細胞内に注入するものである。ヤンセン・ワクチン予防社(オランダ・ライデン)のHanneke Schuitemakerらは、18歳以上の800人以上を対象にワクチンの安全性と免疫刺激特性を検証した(J. Sadoff et al. N. Engl. J. Med. https://doi.org/fqnt; 2021)。
18~55歳の試験参加者のほぼ100%が、1回の低用量接種から57日後の時点でウイルスに対する強力な抗体を産生していた。65歳以上を対象とする臨床試験の別の群では、同じ用法でワクチンを接種してから29日後の時点で、参加者の96%が抗体を発現していた。副反応のほとんどが軽度または中等度で、抗体はワクチン接種後少なくとも71日後まで持続していた。
このワクチンのより大規模な有効性試験の結果も近いうちに発表される。
1月13日
SARS-CoV-2に対する免疫反応を弱める変異
SARS-CoV-2の変異のいくつかは、ウイルスが一部の感染者の免疫反応から逃れるのを助ける可能性がある。
研究者はSARS-CoV-2試料から数千種類の変異を突き止めているが、その圧倒的多数は、ウイルスの生物学的特性に大した影響は及ぼさないと考えている。フレッド・ハッチンソンがん研究センター(米国ワシントン州シアトル)のJesse Bloomらは、潜在的に重要な変異を同定するために、COVID-19から回復した人々の血清から分離された抗SARS-CoV-2抗体を調べた(A. J. Greaney et al. Preprint at bioRxiv https://doi.org/ghr85d; 2021)。
研究チームは、ウイルスのスパイクタンパク質試料に対する抗体の反応を試験した。スパイクタンパク質には宿主細胞を認識する受容体結合ドメイン(RBD)と呼ばれる領域があり、抗体の主要な標的となっている。研究チームが調べたのは、RBDにさまざまな変異があるスパイクタンパク質試料に対する、抗体の反応である。
RBDの数千種類の変異のうち、抗体がスパイクタンパク質に強く結合する能力を低下させるものが少数あった。この変化は、抗体がウイルスを無効化する能力も低下させる可能性がある。
しかし、その影響は人によって大きく異なっていた。最も影響が大きかったのはE484と呼ばれる部位の変異で、一部の人々の抗体の能力を大幅に低下させた。南アフリカとブラジルで確認されたSARS-CoV-2バリアントは、この部位に変異を持っている。なお、この知見はまだ査読を受けていない。
1月12日
暴走する免疫細胞がCOVIDの肺損傷と関連付けられた
COVID-19の重篤な呼吸器症状の一部は特定の免疫細胞の活動に起因し、これにより肺に長期的な炎症が起きている可能性がある。
ノースウェスタン大学(米国イリノイ州エバンストン)のAlexander Misharinらは、SARS-CoV-2感染により重症の肺炎を発症した88人の患者の肺から採取した体液を調べた(R. A. Grant et al. Nature https://doi.org/fqds; 2021)。これらの患者のほとんどで、肺に特定の種類のT細胞(免疫細胞の一種)が数多く見られた。研究者らはまた、肺胞マクロファージ(免疫細胞の一種で、肺の中の空気を含む小さな袋に見られる)の70%近くにSARS-CoV-2が含まれていることも発見した。ウイルスを抱えた肺胞マクロファージでは、炎症に関与する遺伝子の発現が比較的高かった。
今回の知見は、ウイルスが肺に到達するとマクロファージに感染し、このマクロファージがT細胞を引き付ける炎症性分子を産生することを示唆している。このT細胞が産生するタンパク質はマクロファージを刺激し、より多くの炎症性分子を作らせる。このようにして肺に持続的な炎症が起こることが原因で、SARS-CoV-2感染により生命を脅かす状況が引き起こされている可能性がある。
1月11日
「裏切り者」抗体はCOVIDによる死と関連している
通常、抗体は病原体を攻撃するが、時に裏切り者の抗体が、体を構成する要素(免疫細胞など)を攻撃してしまうことがある。こうした「自己抗体」をCOVID-19患者の予後不良と関連付ける研究が相次いでいるが、このほど、また新たな研究成果が発表された。
ニューヨーク大学グロスマン医学大学院(米国)のAna RodriguezとDavid Leeらは、COVID-19により入院が必要となった86人から採取した血清中の自己抗体レベルを調べた。研究者らが特に関心を寄せていたのは、細胞膜構造の安定化に寄与するアネキシンA2というタンパク質に対する自己抗体である。アネキシンA2は、肺の細い血管の維持にも関わっていて、アネキシンA2を阻害すると肺が損傷される。肺損傷はCOVID-19の特徴である。
科学者たちは、COVID-19により最終的に死亡した人々の抗アネキシンA2抗体レベルの平均値が、生き延びた人々の平均値よりも高かったことを見いだした。その差は統計的に有意であった(M. Zuniga et al. Preprint at medRxiv http://doi.org/fqdd;2021)。 SARS-CoV-2と比較的稀な自己抗体である抗アネキシンA2抗体との明確な因果関係を示すためには、さらなる研究が必要である。なお。この知見はまだ査読を受けていない。
1月8日
抗体を含む血液を使った迅速な治療がCOVID重症化のリスクを低下させる
高齢のCOVID-19患者を対象とする臨床試験により、回復した人の血漿を早期に投与することで重症化を防げることが示された。
COVID-19から回復した人の血漿には、SARS-CoV-2に対する抗体が含まれている。しかし、こうした血漿を用いた治療の結果はまちまちで、一部の科学者は、効果を得るためには病初期に血漿を投与する必要があると示唆してきた。非営利組織フンダシオンINFANT(アルゼンチン・ブエノスアイレス)のFernando Polackらは、発症から72時間以内の患者に血漿を投与した場合の効果を評価するために、厳格な臨床試験を実施した。臨床試験には、75歳以上の人と、糖尿病など少なくとも1つの既往症を持つ65~74歳の人が参加した(R. Libster et al. N. Engl. J. Med. https://doi.org/10.1056/NEJMoa2033700; 2021)。
血漿を投与された試験参加者80人のうち16%と、プラセボ群の参加者80人のうち31%が重症化した。研究チームは、高濃度の抗SARS-CoV-2抗体を含むドナー血漿が、重症化リスクのより大きな低下と関連していることを見いだした。これは、抗体自体が治療効果の原因であることを示す証拠である。
1月7日
新しいバリアントの伝播の速さを裏付ける証拠が次々に
2つの独立の分析から、英国で猛威を振るっている新しいSARS-CoV-2バリアントは、確かに他のバリアントよりも伝播しやすいことが明らかになった。
ロンドン大学インペリアルカレッジ(英国)のEric VolzとNeil Fergusonらは、Variant of Concern(VOC)-202012/01と名付けられたこのバリアントの2000近いゲノムを調べた。これらのゲノムは、2020年10月〜12月上旬に英国で採取されたものである。研究チームは、2020年後半に英国で実施された約27万5000件のCOVID-19検査の結果も分析した(E. Volz et al. Preprint at medRxiv https://doi.org/ghrqv8; 2021)。
バリアントの頻度を経時的に推定した著者らは、このバリアントは他のバリアントよりも約50%伝播しやすいと結論付けた。著者らはまた、2020年11月に英国で実施されたロックダウンにより、ほとんどのバリアントによるCOVID-19症例が抑制されたが、新しいバリアントに関連した症例は増加していたことも明らかにした。この知見はまだ査読を受けていない。
別のチームは、ゲノムデータやその他のデータを用いて、2020年の最後の数カ月間における、このバリアントの広がりを分析した。ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(英国)のNicholas Daviesらは、新しいバリアントは他のバリアントに比べて56%以上伝播しやすいと推定した(N. Davies et al. Preprint at medRxiv https://doi.org/fp3v; 2020)。ただし、Nicholas Daviesらは、VOC 202012/01が他のバリアントよりも感染者を重症化させやすいことを示す証拠は発見していない。この知見は現在査読中である。
1月6日
感度の低いCOVID検査が流行の抑制に役立つかもしれない
COVID-19迅速検査は、スピードのために信頼性をある程度犠牲にしているが、COVIDが猛威を振るっているコミュニティーでは貴重な公衆衛生ツールになる可能性がある。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校(米国)のDiane Havlirらは、1週間で市内の約3300人に対してSARS-CoV-2の検査を行った(G. Pilarowski et al. Clin. Inf. Dis. https://doi.org/fpzv; 2020)。研究に参加したボランティアは全員、2種類の検査を受けた。1つは標準的なPCR検査で、米国では通常2~4日で結果が出る。もう1つは、抗原と呼ばれるウイルスタンパク質を検出する迅速検査BinaxNOW(アボット・ラボラトリーズ社製)で、約1時間で結果が出る。
迅速検査では、PCR検査で陽性と判定された237人のうち89%が検出され、中でもウイルス濃度が高かった人は全員検出された。迅速検査で陽性となった参加者は、結果が出てから2時間以内に自己隔離を勧める電話を受けた。この迅速な対応は、人々がPCR検査の結果が出るのを待っていた場合よりも感染を広まりにくくしたと考えられる。なお、迅速抗原検査で陽性となった人の約1%はPCR検査では陰性で、偽陽性だったことになる。
論文著者のHavlirは、この論文とは無関係の研究でアボット社から非金銭的な支援を受けていることを明らかにしている。
1月4日
ワクチンがCOVID-19予防効果を速やかに発揮
大規模な臨床試験によると、このほど米国の規制当局によって承認されたRNAワクチンは、初回投与から2週間以内にCOVID-19からの防御を提供することができるという。
2020年12月18日、米国食品医薬品局(FDA)は、モデルナ社(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)が製造したワクチンの緊急使用を承認した。その後間もなく、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院(米国マサチューセッツ州ボストン)のLindsey Baden、ベイラー医科大学(米国テキサス州ヒューストン)のHana El Sahlyらが、3万人以上のボランティアが参加したワクチンの臨床試験の結果を発表した。参加者の半数には28日間隔でプラセボを2回接種し、残りの半数には同じ間隔でワクチンを2回接種した(L. R. Baden et al. N. Engl. J. Med. https://doi.org/ghrg8m; 2020)。
著者らによると、ワクチンは症候性COVID-19の予防に94%の効果があり、予備的な分析からは、1回の接種でもCOVID-19の無症候性感染に対してある程度の防御が得られる可能性が示唆されているという。試験参加者のうちCOVID-19に罹患して重症化した30人は全員プラセボ群だった。
ワクチンの接種を受けたボランティアの約半数は、2回目の接種後に頭痛などの副作用を経験した。しかし重篤な副作用は稀で、プラセボ群でもワクチン接種群と同じ頻度で発生していた。
翻訳:三枝小夜子
Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 2
DOI: 10.1038/ndigest.2021.210215
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