Where I Work

Fabio Deelan Cunden

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 10 | doi : 10.1038/ndigest.2021.211056

原文:Nature (2021-08-23) | doi: 10.1038/d41586-021-02293-0 | Making sense of quantum-level chaos

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COSIMO SANITATE

私の前にある青いストリングアートは、1本の直線を動かすことで複雑な形の曲面を作り出す線織面の一例です。白い物体は「クレブシュ3次曲面」で、これも単純な方程式で定義される複雑な表面です。左下の赤いものは、さまざまな形をしたサイコロです。これを選んだのは、私がバーリ大学で研究している、確率とランダムネスの素朴な例であるからです。

私が興味を持っているのはカオス系です。カオス系では、非常に近い2つの点を選んでも、系の発展と共に離れ離れになっていきます。ビリヤード台を思い浮かべてください。これは普通の非カオス系です。2個のボールを同じような出発点から同じような角度で突けば、同じポケットの近くで止まると予測できます。ここで真ん中にビール用グラスのような障害物があると、系はカオス的になり、ボールがどこに行くかを予測することはできません。

私が研究しているのは原子や素粒子が相互作用する量子レベルのカオスです。このスケールでは、ビリヤード台に相当するものは「量子ドット」と呼ばれます。一種の箱のようなもので、この中に閉じ込められた電子はビリヤードのボールのように振る舞います。私は、ランダム行列理論という数学を使って、こうした電子のカオス的な運動を解明しようとしています。タンパク質のフォールディング(折り畳み)や機械学習と呼ばれる種類の人工知能の記述にもこの手法を応用したいと考えています。

私は、学会に参加したり研究者仲間とコーヒーを飲んだりしているときにインスピレーションを得ることが多いです。今回のパンデミックで社会的交流ができなくなりました。2020年12月にバーリ大学に来てからは、私のオフィスのすぐ上の階にある大学附属数学博物館「MuMa」に行くことが、その代わりになっています。この写真はMuMaで撮影しました。MuMaには数学的なオブジェや、天文学者で物理学者のガリレオ・ガリレイをはじめとする偉大な学者の古書がたくさんあります。煮詰まったときにはMuMaに来て、ほかの人のアイデアを見ます。そうすると、自分がガリレオから続いている1本の鎖の1つの環であることを実感できるのです。

(翻訳:三枝小夜子)

Fabio Deelan Cundenは、 バーリ大学(イタリア)の数学者・理論物理学者。

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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