Sheila Rowan
Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 1 | doi : 10.1038/ndigest.2021.210150
原文:Nature (2020-07-27) | doi: 10.1038/d41586-020-02212-9 | Where I Work: Sheila Rowan
Nature by Kieran Dodds
実験物理学者としては、より大きな目標に貢献できるような実験を卓上スケールで行うのが好きです。重力波、すなわち時空の歪みのさざ波を測定することは、そうした目標の1つです。重力波は星の衝突などの天体物理学的イベントによって発生し、地球に到達すると重力の向きをごくわずかだけ変化させ、距離を伸ばしたり縮めたりします。
重力波観測所では、レーザー光線を使って、これらの変化を測定しています。レーザー光源から出た2本の光線は、鏡で反射して、出発点のセンサーに戻るようになっています。重力波によって出発点と鏡の間の距離が変化すると、戻ってきた光が互いに干渉するので、センサー上で検出される光がちらつきます。これを実現するためには、鏡が完全に静止している必要があります。そこで私たちは極細のガラス繊維で鏡を吊り下げることで、地球の地震活動やその他の振動源から鏡を隔離しています。私が観測所で取り組んでいるのはごく小さな部分で、接着剤を使うことなく鏡にガラス繊維を接合させる化学結合の研究をしています。
写真は、グラスゴー大学(英国)の私の研究室で撮影しました。私の姿は、ガラス繊維に接合した鏡に映ったものです。鏡に反射する私の像のように、2つの異なる周波数のレーザー光線が鏡とガラス繊維の界面でどのように反射するかを測定することで、結合の厚みなど、光学系の設計において重要となる各種の特性を明らかにすることができます。
私はスコットランド政府首席科学顧問として、政策立案者に科学的な助言をすることの他、科学教育を受けたいと思っている在住者がそれを受けられるようにすることや、政府関係者や一般市民に科学の重要性をアピールすることも行っています。パンデミック中は自宅で仕事をし、同僚の臨床医学者や疫学者をサポートしています。
(翻訳:三枝小夜子)
Sheila Rowanは、 グラスゴー大学重力研究所(英国)所長、 スコットランド政府首席科学顧問