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退屈な環境にある系外惑星の方が調査に適している理由

Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 9 | doi : 10.1038/ndigest.2020.200904

原文:Nature (2020-06-25) | doi: 10.1038/d41586-020-01905-5 | Why boring could be good for this star’s two intriguing planets

Alexandra Witze

GJ 887はフレアや有害な放射線を出していないため、今回見つかった惑星には大気があるかもしれない。

赤色矮星GJ 887の周りに新たに発見された2つの惑星の想像図。 | 拡大する

Mark Garlick

このほど天文学者たちが、太陽系の近傍にある赤色矮星の周りを公転する、地球よりやや重い惑星を2つ発見した。惑星系を持つ恒星は活発なものが多いが、この恒星は比較的不活発で、惑星上に生命が存在する可能性を損なう恐れのある高エネルギーのフレアも放出していない。

この発見をしたチームを率いるゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲン(ドイツ)の天文学者Sandra Jeffersはこの恒星について、「太陽近傍の恒星の中で、惑星に大気があるかどうか、生命がいるかどうかを調べるのに最適な星です」と言う。今回の発見はScience 2020年6月26日号に掲載された1

GJ 887と呼ばれるこの恒星は、みなみのうお座の方向に地球から3.3パーセク(10.7光年)弱の所にあり、地球から見える赤色矮星の中では最も明るい。

赤色矮星は太陽よりも小さくて低温の恒星で、その多くが周囲を公転する惑星を持つ。しかし、赤色矮星のほとんどは非常に活発で、磁気エネルギーが表面で荒れ狂い、恒星フレアと呼ばれる噴出現象の際には大量の荷電粒子を宇宙に放出する。太陽から最も近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリや、地球サイズの惑星を7つ持つトラピスト1など、活発な赤色矮星を主星とする惑星系は多い。こうした惑星系の惑星は主星からの強力な放射線を絶えず浴びているため、生命を育むことはできないかもしれないと考えられている。

対照的に、今回発見された惑星系の惑星ならば、生命はあまり傷つかずに生き延びられるかもしれない。「興味深いことに、主星のGJ 887は非常に静かなのです。極めて異例のことです」とJeffersは言う。

彼女のチームは、複数の手法を用いてGJ 887の活動を測定した。NASAのトランジット系外惑星探索衛星TESSとアマチュア天文学者のグループもまた、数週間にわたってこの恒星を観測した。その結果、明るさの揺らぎがほとんどなく、極めて安定していることが分かった。研究者たちは、GJ 887がエネルギーを爆発的に放出しているかどうかを確認するため、星からのさまざまな波長の光の分光学的特徴も調べたが、やはり不活発であることが分かった。

ただし、GJ 887が常にこんなに静かだったとは限らないと、ワシントン大学(米国シアトル)の天文学者James Davenportは言う。惑星は何十億年も前からGJ 887の周りを回っているのかもしれず、当時の主星はもっと活発だったのかもしれない。「GJ 887は今では静かで穏やかな星ですが、惑星が形成されていた頃は、もっと危険な星だったのかもしれません」とDavenport。

そうであれば、GJ 887が惑星上に形成された初期の大気を破壊するのに十分な高エネルギーのフレアを吹き出し、惑星は大気を剥ぎ取られてむき出しの不毛な岩石惑星にされてしまった可能性もあると、メリーランド大学カレッジパーク校(米国)の天文学者Eliza Kemptonは言う。「惑星に大気があるのかどうか、現時点では確実なことは言えません」。

惑星の発見

Jeffersらは、ヨーロッパ南天天文台(チリ・ラシヤ)の3.6m望遠鏡で3カ月にわたって毎晩GJ 887を観測することで、その周りの2つの惑星を発見した。長期間観測していると、惑星の引力を受けて恒星の運動にわずかなふらつきが生じているのが見えてくる。「私たちは20年間、GJ 887のこのシグナルを探し続けてきました」とJeffersは言う。「本当に大変な仕事でした」。

惑星の1つは地球の4.2倍以上の質量を持ち、9日周期で主星の周りを駆け回っている。もう1つの惑星は地球の7.6倍以上の質量を持ち、22日周期で主星の周りを回っている。

天文学者は任意の惑星に生命が居住できるかどうかを、その表面に液体の水が存在できるかどうかで判断するが、今回の惑星はどちらも主星に近過ぎ、表面に液体の水は存在できない。しかし、おそらくどちらも地球のような岩石惑星で、公転周期が22日の方の惑星は厚い大気に包まれている可能性があるとJeffersは言う。さらに主星のふらつきは、この2つの惑星よりも大きい軌道を公転する第3の惑星が存在する可能性も示唆している。第3の惑星があるとしたら、その公転周期は51日で、GJ 887のハビタブルゾーン(生命が居住可能な領域)にある。

「今回の研究が素晴らしいのは、多くの小さな恒星を含め、宇宙のほとんど全ての恒星が惑星を持っていることを改めて示した点にあると思います」とDavenportは言う。「ごく近くにあるこうした恒星を調べることで、惑星系の特徴を本当の意味で明らかにし、理解できる可能性があります」。

(翻訳:三枝小夜子)

参考文献

  1. Jeffers, S. V. et al. Science 368, 1477–1481 (2020).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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