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舗装と洪水の関係

Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 9 | doi : 10.1038/ndigest.2020.200920a

洪水がひどくなる程度を正しく把握。

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ERIK WITSOE/EYEEM/GETTY

ハリケーン・ハービーなどによる大規模な洪水が大きく報じられたが、都市部の冠水も日常茶飯事で、次第にひどくなっている。2018年のある報告によると、調査に回答した米国の地方自治体の雨水・洪水管理者の83%が、担当地域でそうした洪水が発生したと答えた。気候変動によって豪雨がひどくなったのが一因だが、舗装などの不透水性表面の拡大が事態を悪化させている。地面が大量の雨水を吸収するのを邪魔しているのだ。この点で研究者の見方は大筋一致しているが、悪化の程度については意見がまとまっていない。

Geophysical Research Letters に、2020年3月に発表された研究によると、米国の都市が道路や歩道、駐車場を1%増やすごとに近くの水路の年間洪水流量が平均で3.3%大きくなるという(地面が吸収できなかった水の一部は近くの河川に流れ込むので、その水位は洪水のひどさを追跡する指標になる)。責任著者である水文学者のAnnalise Blumとその共著者らは、自分たちが使った数理モデルのおかげで以前の研究よりも正確さが増したと言う。またこのモデルは、人間が水系に与える影響に関する他の疑問に答えを出すのにも役立つと見られる。「社会水文学」と呼ばれる新分野だ。

大規模データを統計モデルで解析

1つか2つの水路だけを調べた以前の研究は対象が狭過ぎて、路面の舗装やダム、堤防などさまざまな人間の介入が洪水をどれだけ悪化させるかを解析できないとBlumは言う。不透水性領域の役割を他の影響の「ノイズ」から切り離すため、Blumとジョンズホプキンス大学(米国)の経済学者Paul Ferraroらの研究チームは非常に大規模なデータセットを使った。河川の水位を計測する量水標280カ所で記録された39年分のデータだ。

Blumらはまた、経済学の研究でよく用いられている統計モデルを採用した。経済学者はこの技法を使って、特定の政策によって人間の行動がどれほど変わったかを分離して捉えている。Blumらは、量水標の全データに見られる差異を活用できるようにこのモデルに手を加え、道路舗装の影響を他の人工的改変の影響から分離した。「時間的にも空間的にも広がりのあるデータを用いることで、そうしたノイズを全て排除して因果効果を分離できました」とBlumは言う。彼女はこの研究を行っていたときはジョンズホプキンス大学のポスドク研究員だったが、現在は米国科学振興協会(AAAS)の科学技術政策フェローとなっている。

(翻訳協力:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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