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タイタンの地形を網羅した全球地図

Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 2 | doi : 10.1038/ndigest.2020.200212

原文:Nature (2019-11-18) | doi: 10.1038/d41586-019-03539-8 | A whole new world: astronomers draw first global map of Titan

Jonathan O’callaghan

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NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/University of Idaho

土星最大の衛星であるタイタンの地表には、山や谷、平原、クレーター、湖といった多様な地形が存在することが、NASAの土星探査機カッシーニのデータを基に作製された全球地図から明らかになった。これほどまでに表情豊かな地形を持つ天体は、太陽系内では地球くらいだろう。

探査機カッシーニは、2004〜2017年の13年間にわたり、土星の軌道を周回しながら土星とその多数の衛星を間近から観測し続け、膨大なデータを収集した。中でも、タイタンへのフライバイ(接近通過)は実に127回に上り、厚い大気で覆われたこの巨大な衛星の真の姿をかつてない詳細さで見事に調べ上げた(2017年7月号「カッシーニによる土星探査が最終章へ」参照)。

今回、NASAのジェット推進研究所(米国カリフォルニア州パサデナ)の惑星科学者Rosaly Lopesらは、カッシーニが合成開口レーダー(SAR)を用いて撮影した画像をつなぎ合わせることでタイタンの全球地図を作製した。SAR画像が得られなかった地域については、画像化サブシステム(ISS)や可視赤外分光計(VIMS)などのデータとの相関を利用して拡張した。こうして得られた縮尺2000万分の1の全球地図は、2019年11月18日付けでNature Astronomy に発表された(R. M. C. Lopes et al. Nature Astron. http://doi.org/dfb8; 2019)。

「タイタンには地球のような大気があります。風も吹いていて雨も降り、山々もあります。実に興味深い環境で、太陽系内で生命を探すのに最適な場所の1つでしょう」とLopesは言う。

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SOURCE: R. M. C. LOPES ET AL. NATURE ASTRON. HTTP://DOI.ORG/DFB8 (2019)

地図からは、タイタンの表面の3分の2近くが平原からなり、赤道周辺を中心に17%が風によって形作られた砂丘に覆われていることが分かる。また、約14%は「ハンモック状(hummocky)」と呼ばれる小丘や山などが連なる地形に、1.5%は「ラビリンス」という雨や侵食によって刻まれた迷路状の谷を特徴とする地形に分類される。衝突クレーターは意外に少なく、これはタイタンの表面がかなり新しいことを示唆している。

タイタンは、表面に液体が存在することが分かっている、太陽系内では地球以外唯一の天体である。しかし、タイタンの海や湖を満たしているのは水ではなく液体メタンで、表面のわずか1.5%を占めるのみだ。

ジョンズホプキンス大学応用物理学研究所(米国メリーランド州ローレル)の惑星科学者Ralph Lorenzは、「カッシーニによる最も重要な発見は、タイタンの地形の多様性を明らかにしたことです」と言う。「これまで想像していたのとは違う、全くの別世界が広がっていました」。

NASAは、2034年までにタイタンにドローンを送り込む「ドラゴンフライ」ミッションを計画している。ドラゴンフライの着陸機には8枚の回転翼があり、大型のドローンさながらにタイタンの表面を飛び回り、複数の場所で繰り返し調査を行うことができる。だが、現時点では他に土星やその衛星に探査機を送り込む計画はない。このとっておきの一枚は当分の間、タイタンの全域を見渡すことのできる最高精度の地図であり続けるだろう。

(翻訳:三枝小夜子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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