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新型コロナウイルス研究注目の論文(11月)

Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 12 | doi : 10.1038/ndigest.2020.201215

原文:Nature (2020-05-22) | doi: 10.1038/d41586-020-00502-w | Coronavirus research updates

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)とその感染症(COVID-19)に関する文献で重要なものをNature が精査し、まとめた(2020年11月)。10月分はこちら

11月20日

SARS-CoV-2に対する免疫反応は6カ月以上持続する

ほとんどの人の免疫系は、SARS-CoV-2の記憶を少なくとも6カ月間は保持している。

SARS-CoV-2への散発的な再感染や抗体濃度の急速な低下が報告されていることから、このウイルスに対する免疫は、感染から回復後数週間以内に低下するのではないかという懸念が高まっている。ラホヤ免疫学研究所(米国カリフォルニア州)のShane Crottyらは、COVID-19のさまざまな症状を示す185人の血液検体について免疫反応のマーカーを分析し、41人の研究参加者を少なくとも6カ月間追跡調査した(J. M. Dan et al. Preprint at bioRxiv https://doi.org/ghkc5k; 2020)。

研究チームは、参加者の免疫反応には大きなばらつきがあることを発見した。しかし、SARS-CoV-2の免疫記憶のいくつかの構成要素は、少なくとも6カ月間は持続する傾向が見られた。持続的な免疫防御因子の中には、病原体と再遭遇した際に抗体産生を速やかにスタートさせるメモリーB細胞と、メモリーCD4+およびメモリーCD8+という2種類の重要なT細胞が含まれていた。この結果はまだ査読を受けていない。

デンマークのミンク農場でSARS-CoV-2のアウトブレイクが発生していた時期に、ネストベズのミンク農場で殺処分するミンクを集める作業員。 | 拡大する

Mads Claus Rasmussen/Ritzau Scanpix/AFP/Getty

11月19日

ミンク農場を猛スピードで広がりながら急速に変異するコロナウイルス

SARS-CoV-2に感染したミンク農場のミンクの遺伝子解析の結果は、このウイルスが宿主であるミンクに適応しつつあることを示唆している。

2020年4月以降、欧州と米国のミンク(Neovison visonおよびMustela lutreola) を飼育する農場で、SARS-CoV-2のアウトブレイクが報告されている。 ロンドン大学ユニバーシティーカレッジ(英国)のFrançois Ballouxらは、オランダとデンマークの農場で飼育されているミンクから分離された239のウイルスゲノムを調べた(L. van Dorp et al. Preprint at bioRxiv https://doi.org/fjj6; 2020)。

研究チームは、SARS-CoV-2に感染した人からミンクへの感染が起きた独立の事例を少なくとも7つ特定した。研究チームは、少なくとも2回独立に生じた変異も23個発見しており、これはウイルスが新しい宿主に速やかに適応しつつあることを示唆している。

これらの頻繁な変異のいくつかは、SARS-CoV-2が細胞に感染するために用いるスパイクタンパク質をコードするゲノム領域で生じた。しかし研究者らは、ミンクの体内で生じたSARS-CoV-2のこれらの変化が、再び人に感染した場合に人の間で広がる能力に影響を与える証拠はないと言う。なお、この知見はまだ査読を受けていない。

11月17日

季節性コロナウイルスで風邪をひいても、COVID-19からの防御にはならないかもしれない

SARS-CoV-2 は感染者の命を奪う可能性があるが、風邪の原因の1つである季節性コロナウイルスはおとなしい。一部の科学者はこれまで、最近季節性コロナウイルスに感染した人はSARS-CoV-2に感染しないかもしれないと示唆していた。

ペンシルベニア大学(米国フィラデルフィア)のScott Hensleyらは今回、パンデミック前に採取した約500人の血液検体を調べた(E. M. Anderson et al. Preprint at medRxiv https://doi.org/fh2n; 2020)。研究チームは、研究参加者の全員がパンデミック前の時点で、OC43という季節性コロナウイルスを認識できる抗体を持っていたことを見いだした。また、参加者の4分の1はSARS-CoV-2を認識できる抗体も持っていたが、これはおそらく風邪コロナウイルスへの感染に反応して産生されたものである。

参加者の半数が、後にSARS-CoV-2 に感染した。感染した人と感染しなかった人では、SARS-CoV-2を認識する抗体の濃度は同程度であった。この事実は、SARS-CoV-2を認識する抗体もOC43を認識する抗体も、感染に対する防御にはなっていないことを示唆していると著者らは述べている。

11月17日

迅速COVID検査で検出されるのは最も感染させやすい人

SARS-CoV-2の迅速抗原検査は、標準的な診断検査よりも迅速で、安価で、使い勝手が良い。今回、各種の迅速抗原検査の評価が行われ、それらの抗原検査の中には、最も感染させやすい人を高い精度で判定できるものがあることが明らかになった。

抗原ベースの検査では、SARS-CoV-2粒子の表面にある特異的なタンパク質(抗原)を検出する。シャリテ・ベルリン医科大学(ドイツ)のChristian Drostenらは、市販されている7種類の迅速抗原検査の性能を分析した。研究者らは、基準となるPCR検査によりSARS-CoV-2やその他の呼吸器ウイルスにつき陽性と判定されている人々から採取した数十点のぬぐい液を含む幅広い検体について、迅速抗原検査を行った(V. M. Corman et al. Preprint at medRxiv https://doi.org/ghj3wt; 2020)。

最も感度の高い5種類の抗原検査では、ぬぐい液1ml当たり340万~7400万コピーに相当するウイルス遺伝物質濃度がある検体については、95%の検査でSARS-CoV-2の存在が検出された。このような高いウイルス濃度が観察される時期は、症状が現れてから最初の1週間であり、他の人にウイルスを広げる可能性が高い時期である。なお、この知見はまだ査読を受けていない。

11月13日

SARS-CoV-2が1人の感染者の体内で迅速に変異

SARS-CoV-2は、感染した患者男性の体内で何度も勢いを盛り返し、速いペースで進化している証拠を見せながら、患者を死に至らしめた。

ブリガム・アンド・ウィメンズ病院(米国マサチューセッツ州ボストン)のManuela CernadasとJonathan Liらは、長年にわたり自己免疫疾患を患い、強力な免疫抑制剤を含む投薬レジメンを受けていた45歳男性のCOVID-19の経過を追跡した(B. Choi et al. N. Engl. J. Med. https://doi.org/fhv8; 2020)。この男性が最初にSARS-CoV-2陽性と判定されてから約40日後、追跡検査でウイルス量が減少していることが示されたが、抗ウイルス治療にもかかわらずウイルス量は再び急増した。

男性の感染は治まったが、COVID-19と診断されてから5カ月後に死亡するまでにさらに2回再発した。ゲノム解析の結果、この男性は複数回感染していたわけではなく、ウイルスが体内に残り、速いペースで変異を起こしていたことが示された。

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)粒子(画像は着色してある)。 | 拡大する

NIAID (CC BY 2.0)

11月12日

アフリカのある国でSARS-CoV-2による死者数が少ないという謎

アフリカで最も早い時期に行われた大規模なSARS-CoV-2抗体調査の1つは、ケニアでは2020年半ばまでに人口の4%がこのウイルスに感染していたことを示唆している。ケニアのCOVID-19による死者数の少なさを考えると、驚くほど高い感染率である。

SARS-CoV-2に対する抗体の存在は、ウイルスへの感染歴があることを示している。KEMRI-ウェルカム・トラスト研究プログラム(ケニア・キリフィ)のSophie Uyogaらは、2020年4月下旬〜6月中旬にケニアで献血された血液検体中のこうした抗体を検索した(S. Uyoga et al. Science https://doi.org/fhsx; 2020)。研究チームはこれらの検体に基づき、ケニアの人口の4.3%にSARS-CoV-2感染の既往歴があると推定した。

研究チームが見積もったケニアでの抗体陽性率は、以前見積もられたスペインでの抗体陽性率に近い数字である。しかし、スペインで7月上旬までに2万8000人以上がCOVID-19で死亡していたのに対し、ケニアの同月末までの死亡者数は341人にとどまっていた。著者らは、ケニアの抗体陽性率とCOVID-19による死亡者数の間の「鋭いコントラスト」は、アフリカでコロナウイルスの作用が弱まっている可能性を示唆するとしている。

11月11日

コロナウイルスの変異は抗体の力を弱める可能性がある

SARS-CoV-2の広範なバリアントは、一部の感染者では誘導される免疫反応から逃れる可能性がある。

今回のパンデミックが始まって以来、研究者たちは感染者から採取したSARS-CoV-2検体のゲノムに数千もの変異を確認してきた。グラスゴー大学(英国)のDavid Robertson、ヴィル・バイオテクノロジー社(Vir Biotechnology、米国カリフォルニア州サンフランシスコ)のGyorgy Snellらは、ウイルスが細胞に侵入するために用いるタンパク質のN439Kと呼ばれる変異を調べた(E. C. Thomson et al. Preprint at bioRxiv https://doi.org/fhnp;2020)。

この変異は、当該タンパク質の受容体結合ドメインに影響を及ぼす。受容体結合ドメインはウイルスが宿主細胞を認識するために使用する部位で、ウイルスに対する抗体の重要な標的になっている。この変異は少なくとも2回独立に出現しており、12カ国で確認されている。

研究者らは実験室での実験で、この変異がウイルスを不活化する強力な中和抗体の活性を阻害する可能性があることを発見した。この変異によって活性を阻害された中和抗体には、COVID-19から回復した人々の血液中の抗体や、治療薬として開発・製造された「モノクローナル抗体」がいくつか含まれていた。なお、この結果はまだ査読を受けていない。

11月9日

SARS-CoV-2感染歴がないのに抗体がある子どもたち

SARS-CoV-2に感染したことのない人々の血液中に、このウイルスを認識する抗体が発見された。子どもは特にこうした抗体を持っていることが多く、感染した子どものほとんどが軽症か無症状である理由を説明できるかもしれない。

風邪の原因となる「季節性」コロナウイルスの1つに以前に感染していた場合に、SARS-CoV-2に感染しなかったり重症化しなかったりすることがあるかどうかは不明である。フランシス・クリック研究所(英国ロンドン)のGeorge Kassiotisらは、SARS-CoV-2に感染したことがない成人と子どもの血液検体を分析した(K. W. Ng et al. Science https://doi.org/fg9k; 2020)。検体は、パンデミックが始まる前か、ウイルスが世界に広がり始めた直後に採取されたものである。

研究チームは、未感染の成人の研究参加者302人のうち約5%がSARS-CoV-2を認識する抗体を持っていたことを見いだした。また、6歳〜16歳の未感染の研究参加者では、その割合は60%以上であった。この年齢層は、季節性コロナウイルスに対する抗体を最もよく持っている。SARS-CoV-2に対する抗体を持っていた未感染者の血液検体のほとんどが、実験室のペトリ皿の中でSARS-CoV-2が細胞に感染するのを阻害した。

11月6日

コロナウイルスを模倣したワクチンが強力な抗体を誘導

微小な人工粒子から作られたCOVID-19ワクチン候補は、他の主要なワクチン候補よりも強力な防御免疫反応を誘導する可能性がある。

ワシントン大学(米国シアトル)のDavid VeeslerとNeil Kingらは、ウイルスの構造を模倣する微小な球状粒子を設計した(A. C. Walls et al. Cell https://doi.org/fg6r; 2020)。研究者たちは個々の「ナノ粒子」の外側にSARS-CoV-2のスパイクタンパク質(ウイルスがヒト細胞に感染する際に使う部分)を60コピーずつ融合させた。

研究チームがナノ粒子ワクチンをマウスに注射したところ、マウスはCOVID-19から回復した人が産生する抗体と同等以上のレベルでウイルスを阻害する抗体を産生した。このワクチンを投与されたマウスは、スパイクタンパク質だけのワクチン(COVID-19ワクチン候補の多くがこのタイプである)を投与されたマウスの約10倍の抗体を産生した。

このワクチンは、SARS-CoV-2の感染後の迅速な防御を誘導するのに役立つ特殊な免疫細胞からの強力な応答も誘導するようである。

11月4日

コロナウイルスRNAは、多くの物の表面に付着しているが、量は少ない

米国のある都市で、銀行のATMや店舗のドアのハンドルなど、人々が頻繁に触れる物の表面を綿棒でぬぐって分析したところ、検体の8%でSARS-CoV-2の遺伝物質が陽性となったが、その量は微量であった。

タフツ大学(米国マサチューセッツ州メドフォード)のAmy Pickeringらは、マサチューセッツ州サマービルの公共の場で、33カ所の表面で繰り返し試料採取を行った(A. P. Harvey et al. Preprint at medRxiv https://doi.org/fgx9; 2020)。コロナウイルスRNAが最も頻繁に検出された場所は、ゴミ箱の取っ手と酒屋のドアのハンドルだった。とはいえ全ての検体は「低レベル」の汚染を示しただけであり、汚染された表面に触れることによる感染リスクは低いと研究者らは述べている。

研究チームは、ある郵便区域での陽性検体の割合が、同じ区域でのCOVID-19症例が急増する約7日前にピークに達したことを発見した。著者らは、頻繁に触れられる表面から検体を採取することで感染の急増を警告できる可能性があるとしている。なお、この知見はまだ査読を受けていない。

11月2日

コロナウイルスの家庭内での感染拡大は速く、しばしば無症状である

米国の100世帯以上を集中的にモニタリングした結果、SARS-CoV-2は以前の研究で示唆されたペースよりも効率よく広がり、ときに伝播の警告となる症状がない場合もあることが明らかになった。

米国疾病管理予防センター(CDC;ジョージア州アトランタ)のMelissa Rolfesらは、SARS-CoV-2検査で陽性になり、新たにCOVID-19の症状が出た米国居住者101人の参加を得て研究を行った(C. G. Grijalva et al. Morb. Mortal. Wkly Rep. https://doi.org/fgx3; 2020)。研究チームは、研究参加者の登録後少なくとも1週間、感染者と同居する191人の濃厚接触者から毎日、SARS-CoV-2検査の結果を集めた。

疾患の広がりを慎重に推定するため、研究チームは、感染者が研究に登録した時点で陽性と判定された濃厚接触者は除外した。それにもかかわらず、残りの濃厚接触者の35%が最終的に陽性となった。これは以前の推定値のほぼ2倍である。感染者の家族のうち最初に陽性となったときに症状があったのは半数以下で、75%の人が家庭内の最初の感染者が発症してから5日以内に陽性となっていた。

11月2日

SARS-CoV-2感染に関する45カ国のランキング

各国の65歳未満の人のCOVID-19による死亡者数を集計することで、その国の感染者の総数を明らかにすることができる。

ケンブリッジ大学(英国)のMegan O'Driscollらは、45カ国のCOVID-19による死亡のデータを比較した(M. O'Driscoll et al. Nature https://doi.org/fgts; 2020)。研究チームは、65歳未満の人がCOVID-19により死亡するリスクは年齢とともに増加し、そのパターンは全ての国で一貫していることを発見した。

研究チームは、16カ国で行われた22件の研究から、過去にSARS-CoV-2に感染したことを示す抗体を持つ人の割合についての統計もまとめた。これを利用して、データのある45カ国について、SARS-CoV-2に感染した後に死亡する人の割合である感染致死率を推定することができた。

研究者らは、感染致死率を65歳未満の死亡統計と組み合わせることで、2020年9月初旬までにこの45カ国に住む34億人のうち約5%がSARS-CoV-2に感染していたと推定した。感染率が最も低かったのは韓国でわずか0.06%、最も高かったのはペルーで62%であった。

この手法は、大規模な抗体調査を実施できない地域でどれだけの人が感染しているかを推定するのに利用できると研究者らは述べている。

(翻訳:三枝小夜子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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