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「逆さまに浮く」現象を振動で実現
振動が引き起こす作用によって流体中で起こる反直観的な現象は、1950年代からかなりの研究者の興味を引き付けてきた。例えば、振動する流体の中では、気泡を沈ませたり、重い粒子を上昇させたりすることができる1-3。さらに、100Hz程度かそれ以上の比較的高い振動数で系を垂直に振動させることにより、流体の層を空気の層の上に浮かべることができる4。パリ市立工業物理化学高等専門大学(ESPCI Paris)のBenjamin Apffelらは今回、振動し、浮かべた流体層に関する新たな注目すべき現象をNature 2020年9月3日号48ページで報告した5。物体は、重力の方向が逆になったかのように、流体層の下側の界面で「逆さまに浮かぶ」ことができる(図1)。こうした現象は、例えば、気液反応に使われる気泡塔反応器など、流体中に浮遊させた気泡を含む系で、流体に含まれる物質の分離・輸送(選鉱や廃水処理に使われているような工程)など、現実的な利用に大きな可能性を持っている3。
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翻訳:新庄直樹
Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 12
DOI: 10.1038/ndigest.2020.201236
原文
Vibration overcomes gravity on a levitating fluid- Nature (2020-09-03) | DOI: 10.1038/d41586-020-02451-w
- Vladislav Sorokin & Iliya I. Blekhman
- Vladislav Sorokinは、オークランド大学(ニュージーランド)に所属、Iliya I. Blekhmanは、ロシア科学アカデミー機械工学問題研究所(サンクトペテルブルク)に所属。
参考文献
- Bleich, H. H. J. Jet Propuls. 26, 958–964 (1956).
- Chelomei, V. N. Sov. Phys. Dokl. 28, 387–390 (1983)
- Blekhman, I. I., Blekhman, L. I., Sorokin, V. S., Vasilkov, V. B. & Yakimova, K. S. J. Mech. Eng. Sci. 226, 2028–2043 (2012).
- Wolf, G. H. Phys. Rev. Lett. 24, 444–446 (1970)
- Apffel, B., Novkoski, F., Eddi, A. & Fort, E. Nature 585, 48–52 (2020).
- Kapitza, P. L. Sov. Phys. JETP 21, 588–597 (1951).
- Blekhman, I. I. Vibrational Mechanics: Nonlinear Dynamic Effects, General Approach, Applications (World Scientific, 2000).
- Blekhman, I. I. & Sorokin, V. S. Nonlinear Dynam. 83, 2125–2141 (2016).