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地球温暖化対策を訴える「学校ストライキ」を科学者らが支持

Nature ダイジェスト Vol. 16 No. 6 | doi : 10.1038/ndigest.2019.190612

原文:Nature (2019-03-14) | doi: 10.1038/d41586-019-00861-z | Thousands of scientists are backing the kids striking for climate change

Matthew Warren

地球温暖化対策を訴えて若者たちが学校をストライキする運動が世界中で広がり、多数の科学者たちがこの運動を支持する声明に署名した。

3月15日に英国ロンドンで行われた、地球温暖化対策を訴える学生デモ。約2万人の若者が参加した。 | 拡大する

Jack Taylor/Getty Images

地球温暖化を食い止めるために大人はもっと行動すべきだと訴え、若者たちが学校を欠席するストライキを行う運動が世界中で広がっている。2019年3月15日の金曜日、ドイツ、フランス、イタリア、カナダなどの他、ネパールやバヌアツも含めた120カ国以上の約2000都市で、数十万人の若者たちが一斉にストライキとデモ行進を行い、地球温暖化に対して社会が無為に時間を費やしていることへの怒りを表した。生徒たちが学校を欠席することに一部の政治家や教育関係者は反対しているが、数万人の科学者たちが生徒たちの運動を支持した。

この草の根運動は2018年に始まり、世界規模の運動に成長した。3月15日の一斉行動は、各国の若い活動家たちが先頭に立ち、参加団体の発表で140万人が参加してこれまでで最大の抗議行動になった。運動の広がりには、#fridaysforfutureや#YouthStrike4Climateなどのソーシャルネットワークサービス(SNS)のハッシュタグが使われた。報道によると、日本でも若者ら約100人が、東京都渋谷区の国連大学前からデモ行進を行った。

英国の学生で18歳のUmmi Hoqueは、友人やSNSを通じて学校ストライキを知り、約2万人が参加した3月15日のロンドンでのデモに加わった。彼女は、「地球温暖化の影響を最も受けるのは、私たちやこれからの世代です。このストライキは、政策を考える人や大企業のCEOにとって、とんでもなくけたたましい目覚ましベルになると思います。今の若者はやる気がないといわれますが、この運動は、そうしたイメージを吹き飛ばし、政府が地球温暖化を最優先の問題と考える後押しになるはずです」と話す。

抗議行動を行う若者の多くは、スウェーデンの16歳の少女、グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)の行動に影響を受け、勇気づけられている。トゥーンベリは2018年8月、学校を休み、「気候変動問題のための学校ストライキ」と書かれたプラカードを持って、1人でストックホルムの国会議事堂前に座り込みを始めた。スウェーデンはこの年の夏、記録的な猛暑に襲われ、9月9日に総選挙が行われようとしていた。この「学校ストライキ」が若者たちの運動の発端になった。

トゥーンベリは、総選挙前は毎日、その後は毎週金曜日に学校ストライキを続けた。彼女は注目を集め、若者の抗議行動の象徴的存在になった。トゥーンベリに触発され、ベルギーやオーストラリアなど各国で、この半年余りの間に数千人の若者がストライキを 行った。

トゥーンベリは、2018年12月にポーランドのカトビーツェで開かれた第24回気候変動枠組条約締約国会議(COP24)でスピーチを行い、「あなたたち大人は、他の何よりもあなたたちの子どもを愛していると言います。しかしあなたたちは、その子どもの目の前で、その未来を奪っているのです」と訴えた。

ウガンダの首都カンパラに住む22歳、Vanessa Nakateも、3月15日の抗議行動に参加した。彼女は、ウガンダの気候がどう変化し始めているかについておじと話したことがきっかけで気候変動についてインターネットで調べ、トゥーンベリのことを知ったという。Nakateは2019年1月以来、金曜日の朝は、時には1人で、時には友人やきょうだいと共にストライキに参加し、車のバッテリーを売る彼女の仕事に遅刻した。

科学者の支持

ランカスター大学(英国)の社会科学者で、ストライキの支持を表明した多数の学者の1人であるGail Whitemanは、「気候ストライキのアイデアは、革新的で挑発的です。市民が非暴力的に不服従の意志を示す正しい形だと私は思います」と話す。

この運動に呼応して、ドイツ、オーストリア、スイスの研究者がストライキを支持する声明をインターネット上に公開し、2万6000人以上の科学者たちがこれに署名した(scientists4future.org)。この声明は、2015年のパリ協定の目標(産業革命前からの地球の平均気温上昇を2度よりも十分低く保つ)を達成するために3国は十分な対策を行っていないことを指摘し、「若者の懸念は、現在の最も信頼できる科学知見によって正当化され、支持されている」と述べている。

ニュージーランドでも、1500人以上の学者が同様の声明を発表した。さらに2019年2月、224人の英国の学者がガーディアン紙に声明文を掲載した。ガーディアン紙の声明文は、「問題の深刻さに見合う緊急の行動がなされなければ、私たちが若者たちに残す未来に対して、彼らが怒りの声を上げることは全面的に正しい」と述べている。

マンチェスター大学(英国)とウプサラ大学(スウェーデン)に所属する気候科学者で、ガーディアン紙掲載声明文の署名者であるKevin Andersonは、「私たち大人は、当然やるべきことをしてこなかったのです」と話す。「ストライキに参加した子どもたちの多くが生まれる前、科学者たちはすでに、地球温暖化問題とそれにどう対処すべきかを知っていました。しかし、それから四半世紀の間、人々は団結して行動することをしませんでした。気温上昇を2度に抑えるためには、時間はもうなくなりつつあります」と彼は話す。

教育か運動か

しかし、このストライキを誰もが支持しているわけではない。英国のテリーザ・メイ首相を含め、一部の政治家や学校長たちは、抗議行動は子どもたちの教育の妨げになっているという懸念を表明した。英国校長協会の上級政策顧問であるSarah Hannafinは、自身の声明の中で「若者が自分の考えを表現する権利は支持します。しかし、何よりもまず、生徒たちは学期中は学校にいるべきです」と述べた。「子どもたちが教育を受ける機会を逃すことを学校長たちが黙認することはできません。学校は、前向きな社会活動について子どもたちに教えるための安全な基盤なのです」とHannafinは述べる。

Whitemanは、ストライキに反対する人々の偏狭な反応に驚いている。「教育はさまざまな場所で実現できるものです。生徒たちは今、彼ら自身で歴史を作っています。教師たちはこの機会を使って、文学作品や歴史のこの問題に関連した側面を生徒たちと話し合うこともできるのです」と彼女は話す。

Hoqueは2019年2月のストライキにも参加した。Hoqueによると、彼女の先生は生徒を支持し、生徒が学校に戻ったときに彼らの体験について教室で話してくれるように生徒たちに頼んだという。「私たち若者は、大人たちをその気にさせることはできるかもしれませんが、対策を実際に行う力は持っていません。それができるのは政策を考える人たちです」と彼女は話す。

(翻訳:新庄直樹)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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