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14 June 2018
離れた所の変性が酵素の低温適応を助ける
生化学という科学は、約37℃という「生理的」な温度で起こる過程に注目する傾向があった。しかし、地球の表面は海洋や氷、雪に覆われているところが多く、はるかに低い温度で活動する生物はごまんといる。そうした環境の生物は、例えば細胞の化学的環境を維持する酵素などに、環境に適した生物学的適応が必要となる。ジョンズホプキンス大学(米国メリーランド州ボルティモア)のHarry SaavedraらはNature 6月6日号324ページで1、分子レベルで働くそのような低温適応の生物物理学的メカニズムについて説明している。Saavedraらが得た結果は、酵素の活性部位から遠く離れた場所で起こったタンパク質の変化が、酵素を局所的に変性させてその活性を調節する場合があることを明確に示した。つまり、酵素の活性部位に変化を起こさなくても、酵素の構造の一部に揺らぎを生じさせることで、実質的に、酵素反応機構のさまざまな側面が制御され得ることを示している。
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翻訳:小林盛方
Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 9
DOI: 10.1038/ndigest.2018.180931
原文
Enzymes can adapt to cold by wiggling regions far from their active site- Nature (2018-06-14) | DOI: 10.1038/d41586-018-05302-x
- Ashok A. Deniz
- Ashok A. Denizは、スクリプス研究所(米国カリフォルニア州ラホヤ)に所属。
参考文献
- Saavedra, H. G. et al. Nature 558, 324–328 (2018).
- Siddiqui, K. S. & Cavicchioli, R. Annu. Rev. Biochem. 75, 403–433 (2006).
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