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窒素源としての堆積岩

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 8 | doi : 10.1038/ndigest.2018.180808a

植物を支えるこの元素について大きな供給源が見落とされていた。

土壌中の窒素はほぼ全て、大気中の窒素が微生物によって固定されるか雨水に溶け込むかして、大気から直接もたらされたものだと考えられてきた。だが、植物の成長に欠かせないこの元素の別の主要供給源が見落とされていたことが判明した。2018年4月Science に発表された研究によると、土壌と植物に含まれる窒素の最大1/4は、基盤岩からしみ出したものだという。

論文の筆頭著者であるカリフォルニア大学デービス校(米国)の地球生態学者Benjamin Z. Houltonは、一部の例を除くと、窒素循環に関して「研究コミュニティーは岩石に着目してこなかったのです」と言う。今回の発見は地球の窒素循環を理解する以上の意味がある。気候モデルを変える可能性もあるのだ。地域によっては、植物がこれまで考えられていたよりも速く大きく成長し、より多くの二酸化炭素を吸収する可能性があるという。

地球温暖化が進む中、温室効果ガスの二酸化炭素を植物がどれだけ吸収しているかを計算することはますます重要になっている。正確な吸収量はまだ不明確だが、Houltonは「植物に、人間活動が排出した炭素を蓄える緩衝材としての役割をもう少し多く期待できるでしょう」と指摘する。

窒素循環の新ルート

過去の研究では、堆積物からマントル(地殻の下の層)に移動する窒素の量と、火山から大気中(大気の78%は窒素)に放出される窒素の量を調べていた。その後、1970年代に始まった少数の研究によって、いくつかの種類の堆積岩に太古の海底に堆積した動植物や藻類の死骸に由来する窒素が含まれていることが示された。一部地域でこの窒素が土壌に漏れ出している可能性を示した論文もあったが、追跡研究はなされず、岩石の風化に伴って放出される窒素の量は取るに足らないと考えられた。「窒素循環の枠組みに加えられるには至りませんでした」とHoultonは言う。

Houltonらは堆積岩の上にあるカリフォルニア州の森林土壌が火成岩の上の土壌と比べて50%多くの窒素を含むことを発見し、2011年にNature に発表した(https://doi.org/10.1038/nature10415)。堆積岩層の上に育っている樹木は窒素量が42%多いことも発見した。この研究は、こうした特定の地域で窒素が岩石から土壌や植物に移動していることをうかがわせたが、それが世界規模で起こっている顕著な現象なのかどうかは不明だった。

カリフォルニア州には地球上に見られるほぼ全ての種類の岩石があるため、Houltonらは今回の新研究でカリフォルニアをモデル地質体系として用いた。カリフォルニアと世界各地から集めた1000個近くの試料について窒素レベルを測定した後、コンピューターモデルを開発して、岩石がどんな速度で分解して土壌に窒素を放出するかを計算した。

岩石の風化によって遊離した窒素は最終的に海に到達し、海底に形成される堆積岩に集積する。この岩石がプレート運動によって隆起した後、岩石が分解して放出された窒素が動植物に吸収され、再び岩石に閉じ込められる――という循環が繰り返される。風化には物理的な分解(隆起して山脈となって風雨にさらされると進む)と化学的な分解(酸性の雨水が岩石中の化合物と反応するなど)の両方があり得る。

気候への影響は?

ケリー生態学研究所(米国ニューヨーク州)の生物地球化学者William Schlesinger(今回の研究には加わっていない)は以前、岩石中の窒素量がかなり多いことを見いだしたが、「それ以上深く追求しませんでした」と言う。土壌養分の広範な供給源でも重要な供給源でもないだろうと考えていたからだ。彼は、化学肥料を通じて土壌に入る窒素の量は岩石からしみ出す窒素量をはるかに上回ることを挙げ、Houltonらの研究の結果を過大に解釈することを戒める。今回の発見は窒素・炭素循環の地球規模モデルに組み込むべきではあるが、「それによって気候変動に関する理解が書き換えられることはないでしょう」と言う。

(翻訳:鐘田和彦)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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