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木星の磁場は特異だった

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 12 | doi : 10.1038/ndigest.2018.181234

原文:Nature (2018-09-05) | doi: 10.1038/d41586-018-06095-9 | Jupiter’s magnetic field revealed by the Juno spacecraft

Chris Jones

木星の磁場は、他のあらゆる既知の惑星の磁場と異なっていることが分かってきた。この観測結果は、大惑星(木星型惑星)の内部構造の解明に大きな意味を持つ可能性がある。

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NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS/Gerald Eichstädt/Seán Doran

米航空宇宙局(NASA)の木星探査機「ジュノー」は現在、木星の磁場をこれまでになく詳しく測定している。磁場の原因は木星の内部にあるので、磁場を調べることで、木星の表層の壮観な渦巻く雲の下で何が起こっているかを知ることができる。今回、ハーバード大学地球惑星科学科(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)のKimberly M. Mooreらは、ジュノーが送って来た観測データを分析し、木星の磁場は北半球と南半球とで大きく異なっていることを見いだして、Nature 2018年9月6日号76ページで報告した1。この非対称性を説明するため、Mooreらは木星の内部で何が起こっているかを考察した。

ジュノーは2016年7月4日に木星に到着した。観測データを集め、木星の深部に関する私たちの理解を一変させつつある。これまで、木星の磁場については大ざっぱなことしか分かっていなかった2。ジュノーの観測によって木星磁場の描像ははるかに鮮明なものになり、木星磁場のモデルは作り直されつつある3。こうした進歩が可能になったのは、ジュノーが木星のすぐ近くまで接近したおかげだ。ジュノーは53日に1度、木星の重力場の奥深くに潜り込み、木星表面のわずか約4000km上空を飛行する(木星の半径は約7万km)4

ジュノーで観測された木星磁場の磁力線
a 北極上空から見た図、b 南極上空から見た図、c 赤道面付近から見た図。北半球の磁場は非双極子的で、南半球の磁場は双極子的になっている。球面は、木星半径の0.85倍の半径の球面を示している。球面の色は、そこでの磁場の動径成分の強さ(磁力線の密度)を示し、赤色は外向き、青色は内向き。 | 拡大する

Ref.1

木星は、太陽系の惑星で最も強い磁場を持つ。皮肉にも、この磁場がジュノーにとって最大の脅威だ。太陽から飛来する高エネルギー粒子が磁場に捉えられ、それがジュノーの電子機器に危険をもたらす。幸い、ジュノーはこうした粒子から保護されるように設計されており、今のところ、生き延びている。

木星の磁場は、木星内部を流れる電流によって維持されている。木星は主に水素とヘリウムでできているので、木星が電気を伝導できることはかなり驚きだ。しかし、木星内部の極端な高圧と高密度のため、水素は金属水素と呼ばれる状態になり得る5。金属水素は金属と同様の電気伝導率を持ち、電流が流れる。

大惑星は、誕生してから冷えるまでに数十億年かかる。このため、木星が太陽から受け取るのと同程度の量の熱が、今も木星の内部から出てきている。この熱は対流によって運ばれ、対流が木星内部をかき混ぜ、大赤斑などの渦巻く雲や嵐を作る。こうした雲や嵐は、ジュノーのカメラでとても美しく捉えられている。木星内部の流体の対流駆動流は木星表面の風よりも遅いが、十分強く、ダイナモ作用(ダイナモは発電機の意)と呼ばれるプロセスによって木星の磁場を作る6,7

地球の磁場も地球内部の対流駆動流によって作られるが、電流が流れるのは、鉄などでできた液体の中心核(外核)だ。木星と地球の磁場はどちらも、おおむね双極子(ダイポール)磁場だ。つまり、木星の磁場の動径成分(中心とその点を結ぶ方向の成分)はおおむね、北半球では正で南半球では負であり、まるで木星の内部に棒磁石があるかのようだ(図1a)。Mooreらは、木星の磁場の非双極子成分はほぼ完全に北半球に限定されていることを報告した(図1b)。これは、地球の磁場とは全く対照的で、地球では磁場の非双極子成分は2つの半球に均等に分布している。

図1 木星の磁場の分布
a Mooreらが報告した、木星磁場の動径成分(中心とその点を結ぶ方向の成分)の分布1。北半球では、磁場の動径成分は主に正(外向き)だ(黄色-赤色部分)。逆に南半球では、動径成分はおおむね負(内向き)だ(緑色-青色部分)。こうした分布は双極子(ダイポール)と呼ばれる。カラースケールは磁場の動径成分の大きさを示しており、単位はミリテスラ(mT)。
b 木星磁場の動径成分の非双極子成分の分布。木星磁場の動径成分の非双極子成分は、他のあらゆる既知の惑星磁場と異なり、ほぼ完全に北半球に集中している。abの分布図は、木星の中心から木星半径の90%の距離での磁場を示しており、木星内部の実質的な電流は、全てより中心に近い距離に存在すると仮定している。(参考文献1の図1eと図3aから改変) | 拡大する

Mooreらは、こうした木星磁場の形態について、可能性のある説明をいくつか提案した。1つの説明は、木星の中心核に関係するものだ。木星の中心核がどのようなものかはまだ分かっていない。木星のモデルには、地球の約5倍の質量を持つコンパクトな中心核を想定したものもある8。しかし、ずっと大きく希薄な中心核である可能性もあり9、それが磁場生成に影響しているのかもしれない。

もう1つの説明は、木星の内部深くに、流体の安定な層が1つかそれ以上あるというものだ。土星は、その内部に安定な層を持つと考えられている。土星の磁場は木星や地球の磁場とは大きく異なり、土星の自転軸に関してほぼ完全に軸対称であるが、その理由を安定層の存在が説明する可能性がある10。木星では、こうした安定な層はそこで流体の組成が変わる領域で、木星の内部をいくつかのゾーンに分けているのかもしれない。もしも、こうした遷移(あるいは相転移)領域群がヘリウム濃度勾配を持てば、それらの領域は底の方が重く、木星内部の流体の流れを、つまりは磁場を変えている可能性がある。

今では、惑星磁場が生成される仕組みを調べるために、惑星内部の流体の流れと磁場を支配する基礎的な方程式を解くことが可能だ。ダイナモ作用の基本的な原理は1世紀前に築かれたが11、流体・ダイナモ方程式を解くことは難しかった。地球のダイナモをモデル化するために必要な計算をコンピューターが扱えるようになったのは1995年以降だ12。それにもかかわらず多くの進歩があり、現在では、ダイナモの計算機モデルは地球磁場の特徴の多くを再現できるようになった13

この5年間で、こうしたモデルは、木星の内部と大気との間の大きな密度変化を扱えるように改良された6,7。そして今、Mooreらによって推定された木星磁場とモデルを比較することができる。しかし、ダイナモモデルは惑星の内部構造に依存し、内部構造は惑星の熱力学的性質、電気伝導率特性、組成に依存する。これらの問題は、盛んに研究されてきたものの、いくつかの不確かさは残る。双極子磁場であるが大まかに言えば赤道に関して対称な磁場モデル群が開発された6一方、非対称だが双極子磁場ではない磁場モデル群も開発されてきた14。だから、課題は、非対称でかつ双極子磁場である磁場モデルを作り上げることだ。

今後、Mooreらが提案した木星磁場の形態の説明は、ダイナモモデル研究者らによって検証され、その説明が本当にジュノーの観測結果と合致しているのか、あるいは矛盾しているのかが分かるだろう。モデル研究者たちは、ジュノーから届いている情報を消化し、木星内部のより明瞭な描像を描き出し始めている。大惑星内部の研究にとって、わくわくする時代がやって来た。

(翻訳:新庄直樹)

Chris Jonesは、リーズ大学(英国)応用数学科に所属。

参考文献

  1. Moore, K. M. et al. Nature 561, 76–78 (2018).
  2. Ridley, V. A. & Holme, R. J. Geophys. Res. Planets 121, 309–337 (2016).
  3. Connerney, J. E. P. et al. Geophys. Res. Lett. 45, 2590–2596 (2018).
  4. Bolton, S., Levin, S. & Bagenal, F. Geophys. Res. Lett. 44, 7663–7667 (2017).
  5. Wigner, E. & Huntington, H. B. J. Chem. Phys. 3, 764–770 (1935).
  6. Jones, C. A. Icarus 241, 148–159 (2014).
  7. Gastine, T., Wicht, J., Duarte, L. D. V., Heimpel, M. & Becker, A. Geophys. Res. Lett. 41, 5410–5419 (2014).
  8. French, M. et al. Astrophys. J. Suppl. Ser. 202, 5–16 (2012).
  9. Wahl, S. M. et al. Geophys. Res. Lett. 44, 4649–4659 (2017).
  10. Stevenson, D. J. Geophys. Astrophys. Fluid. Dyn. 21, 113–127 (1982).
  11. Larmor, J. Rep. Br. Assoc. Adv. Sci. 87, 159–160 (1919).
  12. Glatzmaier, G. A. & Roberts, P. H. Nature 377, 203–209 (1995).
  13. Schaeffer, N., Jault, D., Nataf, H.-C. & Fournier, A. Geophys. J. Int. 211, 1–29 (2017).
  14. Dietrich, W. & Jones, C. A. Icarus 305, 15–32 (2018).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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