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木星を深部から揺さぶる嵐

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 1 | doi : 10.1038/ndigest.2018.180113

原文:Nature (2017-10-26) | doi: 10.1038/nature.2017.22866 | Jupiter’s stormy winds churn deep into the planet

Alexandra Witze

NASAの木星探査機ジュノーは、渦巻く風が作り出す有名な帯が表層だけの現象ではなく、数千kmの深さまで達していることを明らかにした。

木星の南極の周りで渦を巻く5個のサイクロン。 | 拡大する

NASA/JPL-CALTECH/SWRI/MSSS/BETSY ASHER HALL/GERVASIO ROBLES

太陽系最大の惑星である木星の内部の様子が、これまでで最高の精度で観測された。木星の色彩豊かな縞模様は、緯度によって大気中で東風と西風が交互に吹いていることで生じる。今回の観測が行われるまで、こうした縞模様が浅層だけにあるのか、それとも深部にまで達しているのかは分かっていなかった。ジュノーの研究チームのメンバーであるワイツマン科学研究所(イスラエル・レホヴォト)の地球物理学者Yohai Kaspiは、2017年10月18日、米国ユタ州プロヴォで開かれた米国天文学会惑星科学部会の年次総会で、「縞模様の深さを決定することは、ジュノー・ミッションの主要な目標の1つです」と語った。

研究チームは今回、木星の重力場を調べることで、その内部を数千kmの深さまで探ることに成功した。木星の重力は内部の状態を反映して場所によってわずかにばらつきがあり、上空を飛行するジュノーの速度に影響を及ぼす。ジュノーは木星に接近するたびにこの変化を測定して、2017年5月には、木星が、大きくて輪郭の不明瞭なコアを持つことを明らかにしている1

コートダジュール天文台(フランス・ニース)の惑星科学者Tristan Guillotによると、今回の観測から、木星の重力場は歪んでいて、北半球と南半球では異なるパターンを示すことが分かったという。これは、木星の深部で水素を豊富に含むガスが非対称に流動していることを示唆する。Guillotは総会で、「予想外の発見でした。私たちの観測でこういうものが見えるのか、自信は全くありませんでしたから」と語った。

木星の内部構造に関するもう1つの手掛かりは、深さとともに重力場がどのように変化するかを調べる観測からもたらされた。理論研究では、重力シグナルが大きいほど深部のガスの流れは強いと予想されていた2,3。木星の内部全体が1つの塊として回転しているのか、それとも、マトリョーシカ人形のように表層から深層までの各層が独立した多重構造をとり、別々に回転しているのかを明らかにする上で、この情報は重要だ。ジュノーは、表層から深さ3000kmまでの物質が流動していることを示唆する、強力な重力シグナルを検出した。ただしKaspiによると、これは「表層の雲と風を調べ、内部も同じようになっていると推定」した上での見積もりにすぎないという。マトリョーシカ人形のようになっているかを明らかにするためには、さまざまな深さでのガスの流動の強さを決定する今後の研究を待たなければならない。

ジュノー・ミッションの科学者たちは現在、重力データから他に何を知ることができるかを探っている。例えば、大赤斑と呼ばれる有名な嵐は、大気中のどの程度の深さまで伸びているのだろうか? ジュノーに搭載されている別の観測機器は、すでに、大赤斑の根が数百km下まで伸びていて、もっと深い可能性もあることを示唆している。カリフォルニア工科大学(米国パサデナ)の惑星科学者David Stevensonは、「重力データに現れるほど深いかどうかはまだ分かりませんが、観測に挑戦しています」と言う。

また、ジュノーが可視光と赤外線で撮影した両極に、サイクロンがいくつも集まっていたことは、人々を大いに驚かせた。ジュノー以前に木星の両極の上空を飛行した探査機はなかったため、科学者が両極の嵐を見たのは今回が初めてだったのだ。サイクロンは北極の周りに8個、南極の周りに5個あったが、こうした場所に存在していること自体が謎だった。コンピューターモデルでは、渦を巻く極風の中で、これほど小規模の嵐が安定して存在できるわけがないと予想されていたからだ。

NASAのジェット推進研究所(米国カリフォルニア州パサデナ)の惑星科学者Fachreddin Tabataba-Vakiliは、その答えは「渦結晶(vortex crystal)」という物理学概念にあるのかもしれないと言う。地球上でも、渦結晶は、回転する超流動体などいくつかの事例で見られ、物質の流れの中で小さな渦が形成され、周囲の物質が流れ続けても渦が消えずに残るときに生じる。

Tabataba-Vakiliは、木星の両極の周りにある流れがこの概念と同様のダイナミクスを作り出しているのかもしれないと考えている。次なる課題は、両極のサイクロンの数が異なる理由を説明することだ、と彼は言う。

(翻訳:三枝小夜子)

参考文献

  1. Wahl, S. M. et al. Geophys. Res. Lett. 44, 4649–4659 (2017).
  2. Hubbard, W. B. Icarus 137, 357–359 (1999).
  3. Kaspi, Y. Geophys. Res. Lett. 40, 676–680 (2013).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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