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血液検査で放射線被曝を判別

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 7 | doi : 10.1038/ndigest.2017.170708a

マイクロRNAがマーカーになる

2011年に福島第1原子力発電所で起きたような原子力事故の際、初動対応要員は大勢の放射線被ばく量を素早く測定し、緊急治療が必要な人を特定する必要がある。迅速で正確な検査法はあるのだが、高度な検査室と高価な装置、細心の注意を伴う作業が必要だと、ダナ・ファーバーがん研究所(米国マサチューセッツ州メドフォード)の放射線腫瘍医Dipanjan Chowdhuryは言う。また、そうした事故状況下では「抗放射線薬が大量に手に入るわけではない」という。「誰に優先的に投薬すべきかを、どのように決めればよいか?」

Chowdhuryらはこの問題に対処するため、専門家と設備が限られた現場で初動要員が使える簡単な検査法を開発している。3月にScience Translational Medicineに報告されたこの検査は、血液など体液中のマイクロRNA(miRNA)という分子の量を測定する。同研究チームは以前、放射線に被曝したマウスで増減するmiRNAをいくつか特定していた。

マウスに続きサルで確認

研究チームは今回、放射線被曝を示すこの特徴が人間の代理として最も適した実験動物であるサルにも表れることを突き止めた。被曝したマウスとマカクザルの両方で変動する7種類のmiRNAを特定した。サルに致死量とされる吸収線量5.8グレイ、6.5グレイ、7.2グレイの放射線を全身照射した(これは福島第1原発の作業員が浴びたのと同程度。全てのサルが“致死量”を受けたが、死亡したのはごく一部)。

3種類のmiRNA(miR-133b,miR-215,miR-375)はサルが被曝したことを100%の確度で示し、2種類(miR-30aとmiR-126)は被曝が致命的かどうかを予測できる。この特徴は被曝から24時間以内に表れ、一般的なPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法という技術で測定可能だ。「必要機材と複雑さからみて、miRNA検査は既存のどの検査よりもはるかに安価になるはずだ」とChowdhuryは言う。

ヒト以外の霊長類での今回の成果は心強いと、オークリッジ科学教育研究所(米国テネシー州)で放射線緊急支援センター・訓練施設の所長を務めるNicholas Dainiakは言う。だがこの検査が「二動原体染色体法(DCA)」という被曝量測定の標準手法(専門技術と装置の慎重な較正が必要)をしのぐものになるという見方には懐疑的だ。「新検査法が登場してDCAと比較すると、いつもDCAに及ばない」と言う。

Chowdhuryは迅速診断キットの製作に関心を持つ複数の企業と非公式に話をしている。「マウスで示した際には、多くの人に『マウスで成功しても霊長類でうまくいかない例をたくさん見てきた』と言われた」とChowdhuryは言う。「だが、これは霊長類でもうまくいっているようだ」。

(翻訳:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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