Research Highlights
食品中の化合物が心臓を守る
豆類や穀類、熟成チーズにもともと存在する化合物の中に、老齢齧歯類の心臓を健康に保つのに有用なものが存在することが明らかになった。
その化合物「スペルミジン」は、オートファジー(細胞の古い構成要素や有害生成物を分解して再生する細胞過程)を促進することにより、酵母、ハエ、および線虫の寿命を延長することがすでに報告されている。このたび、グラーツ大学(オーストリア)のFrank Madeoらは、スペルミジンを含有する水を常飲した高齢マウスの心機能が、同齢の未処置マウスと比較して改善されること、そして心不全を発現しやすいラットの血圧がスペルミジン投与で低下することを示した。
スペルミジンが投与された動物の心筋細胞では、さまざまな加齢性の機械的・代謝的変化が改善された。一方、心筋細胞のオートファジーを害する遺伝的異常を抱えるマウスでは有益な影響が見られなかったことから、スペルミジンの作用はオートファジーを介して発揮されると考えられる。
翻訳:小林盛方
Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 2
DOI: 10.1038/ndigest.2017.170230