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制御性T細胞研究とともに歩む

坂口 志文

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 10 | doi : 10.1038/ndigest.2017.171020

異物を攻撃して体を守る働きをする免疫反応には、それを促進する役割と抑制する役割を果たす仕組みが備わっている。抑制する働きの1つを担う制御性T細胞の存在を提唱し、それを証明した坂口志文・大阪大学特任教授には、ガードナー国際賞をはじめとするたくさんの賞が与えられた。現在、制御性T細胞のコントロールを目指して、ゲノムやエピゲノムレベルでの研究を進めている。

2015年にガードナー国際賞受賞。同賞は、生命医学分野で重要な発見や貢献をした研究者に贈られる。 | 拡大する

大阪大学

–– 免疫の研究に進まれたきっかけを教えてください。

坂口: 体の中の異物を排除して体を守る仕組みが免疫です。しかし、その自分を守るべき免疫が、自分を攻撃してしまうことがあるのです。自己免疫疾患ですね。それは、なぜなのか。その理由や仕組みを解き明かしたいと興味を持ったのが、きっかけです。医学部を卒業した翌年の1977年のことでした。

免疫を抑える制御性T細胞の発見

–– 自己免疫疾患の研究を、どのように進められたのですか。

坂口: 京都大学の大学院へ進学していたのですが、これをやめて、愛知県がんセンター研究所の西塚泰章先生の研究生になりました。西塚先生たちは、マウスの新生仔から胸腺を摘出してしまうと自己免疫疾患のような症状が出ることを発見したところで、その論文に惹かれました。ちなみに、胸腺というのはT細胞などの免疫系細胞が作られる場所で、免疫系の働きに重要な器官です。ですから、その現象を詳しく調べてみれば、自己免疫疾患に関するヒントが何か得られるかもしれないと思いました。

実験では胸腺を摘出したマウスに、正常なマウスから得たT細胞を補ってみることにしました。すると、生じていた自己免疫疾患の症状が、全く起きなくなったのです。この実験結果から、胸腺で作られるT細胞の中に、免疫反応を抑える細胞が含まれているのではないかと考えるようになりました。そしてその細胞が、免疫が体の中で暴走するのを防いでいるのではないかと考えたのです。

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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