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ゲノム探索でヒットを狙う製薬会社

Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 7 | doi : 10.1038/ndigest.2016.160718

原文:Nature (2016-04-28) | doi: 10.1038/nature.2016.19797 | Drug firm seeks genome bounty

Heidi Ledford

アストラゼネカ社は疾病に関連付けられる「まれな塩基配列」を探し出すため、200万人分のゲノムを調べる大規模事業を開始する。

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zmeel/E+/GETTY

世界最大手の製薬会社の1つであるアストラゼネカ社(英国ロンドン)は、この先10年にわたって、200万人分のゲノム塩基配列と医療記録を集めてまとめるという大規模な事業に着手した。その目的は、疾病に関連し治療に反応する希少なDNA塩基配列を掘り起こすことである。

「このタイプの研究では前例がない参加者の数ですが、私たちは個人間に見られる非常にまれな差異を探すつもりなので、これだけの数がどうしても必要なのです」と、同社の個別化医療・バイオマーカー部門の統括責任者で同部門長を務めるRuth Marchは述べる。

アストラゼネカ社はこの大規模事業を達成するために、ウェルカムトラスト・サンガー研究所(英国ケンブリッジヒンクストン)、フィンランド分子医学研究所(ヘルシンキ)、ゲノミクス研究のパイオニアCraig Venterによって設立されたバイオテクノロジー企業のヒューマン・ロンジェビティ社(米国カリフォルニア州サンディエゴ)などの組織と共同で研究を行う予定だ。また、自社の臨床試験の被験者50万人分のデータも解析対象とする予定である。

この戦略により、アストラゼネカ社は遺伝子研究で急成長中のトレンドに従うことになるだろう。遺伝学者たちは何年もの間、糖尿病や心臓病のような複雑な疾患に関連付けられる一般的な変異をヒトのDNA塩基配列に追い求めてきた。この手のアプローチによって重要な手掛かりがいくつか得られてはいるものの、こうした一般的な変異は個々の疾患の遺伝学的要因のわずか数%を占めるだけということが多かった。

研究者たちは今、疾患の原因となる希少な遺伝的バリアントを探すことに焦点を合わせ始めている。希少バリアントの組み合わせが個人の特徴のカギを握っている可能性がある、とVenterは言う。

アストラゼネカ社は正確にどれぐらいの投資をするつもりかは明らかにしていない。同社の革新的医療プログラムのエグゼクティブ・バイスプレジデントMenelas Pangalosは、10年間で「数億ドル」と言うにとどめる。同社は集めたデータを、糖尿病や炎症やがんなどの主要な疾患を扱う全研究部門での医薬品開発に役立てるつもりだとMarchは言う。

アストラゼネカ社の顧問を務めるコロンビア大学(米国ニューヨーク市)の遺伝学者David Goldsteinはこう語る。「長い間ゲノミクス研究者たちは、自分たちの研究分野は創薬に革命を起こすと約束してきました。我々はようやく次の段階へと一歩を踏み出しました。ゲノミクスはこれから、本当に創薬研究の中心になるでしょう」。

(翻訳:古川奈々子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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