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汗をリアルタイムで分析できるウエアラブルセンサー

Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 4 | doi : 10.1038/ndigest.2016.160407

原文:Nature (2016-01-27) | doi: 10.1038/nature.2016.19254 | Wearable sweat sensor paves way for realtime analysis of body chemistry

Linda Geddes

腕に装着した状態で汗成分が分析でき、その結果をスマートフォンに送信できる、小型で曲げることも可能なプラスチックセンサーが開発された。

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汗の成分を読み取ってその結果をリアルタイムでスマートフォンに送信できるウエアラブル小型センサーが、カリフォルニア大学バークレー校(米国)とローレンスバークレー国立研究所(米国カリフォルニア州バークレー)の材料科学者たちによって開発された。開発者たちによると、このセンサーは曲げることが可能な柔らかいプラスチックでできているため、リストバンドやヘッドバンドに組み込むことができ、装着することで体調変化をいち早く知らせることが可能になるかもしれないという。今回の研究結果は、Nature 2016年1月28日号1に報告された。

センサーの開発に携わったカリフォルニア大学バークレー校のAli Javeyはこう話す。「スマートフォンで体のリアルタイム情報を得られるようにすることが狙いです。例えば、『薬を飲む必要があります』とか『脱水症気味なので水分をとる必要があります』といった警告を発することも可能かもしれません」。

ウエアラブル電子機器の裏事情

汗には、体内の生体プロセスの最終産物となる多くの電解質や代謝産物(例えば運動後に蓄積される乳酸など)が含まれている。これまで、いくつかの研究室で、汗の成分を検知するセンサーが開発されてきた。しかし、それらのセンサーは一度に1成分のみを測定するものがほとんどである上、通常、測定結果をリアルタイムで送信することはできない。

「これまでの汗センサーは主に、取り外し可能なパッチに汗を吸い込ませるものでした。その後、パッチを剥がしてウエアラブルでない別の機器で化学分析を行うのです」と話すのは、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(米国)で同じくウエアラブル電子機器を開発中のJohn Rogers。「Javeyらのデバイスは、ウエアラブルであり、連続的にデータを送信でき、しかも複数のバイオマーカーを同時に測定できるのです」。

スマートフォンに汗成分データを送る

Javeyのチームは、既存の先進ウエアラブル技術を寄せ集め、プラスチックシート上に複数のセンサー素子を配置したセンサーアレイとフレキシブルプリント回路基板(FPCB)をつなぐことによって、グルコース、乳酸塩、ナトリウム、カリウム、体温を検出できるセンサーを作製した。センサーは、汗に触れるとその情報を電気信号に変換し、増幅・フィルタリングを行った後、皮膚温を用いて較正する。この手順を踏むことが不可欠だとJaveyは言う。「電気化学センサーは温度にとても敏感で、汗をかくと皮膚温は大きく変化します」。較正後、データはスマートフォンにワイヤレス送信される。

「見事な業績」と話すのは、シンシナティ大学(米国オハイオ州)の研究室で同じくウエアラブル汗センサーを開発しているJason Heikenfeldだ。「通常、そうしたセンサーには、靴箱くらいの大きさの電子機器が必要になります。Javeyらは、それを手首に巻けるほどに小型化したのです」。しかし、Javeyらのセンサーは、研究室で基本的な化学物質から作製しなければならず、心拍数の測定や身体動作の検出に用いられている最近のウエアラブル機器のセンサーのように、既製品をすぐ購入することはできない。

今後の課題

今回の技術は特許出願済みだとJaveyは言う。しかし、汗成分センサーを組み込んだウエアラブル・フィットネスバンドを買えるようになるまでには、克服すべき課題がまだ多く残されている。第一に、科学者は汗という微量液体を扱うことに慣れていない。それに、ヒトは始終汗をかいているわけではない。「スポーツ以外にも多くの用途が考えられますが、その場合はウエアラブルバンドやパッチによって局所的に発汗を促さなければならないでしょう」とHeikenfeldは言う。

汗成分センサーには、定番となっている血液検査ほどの正確性はないとJaveyは言う。人体は血液中の成分組成を厳密に制御するが、汗の成分組成は血液よりも変化しやすく、皮膚表面の細菌の影響を受けることもある。従って、汗がもたらす情報の医学的妥当性を徹底的に調べる必要がある。しかし、汗にも利点はある。例えば、針を使った血液採取は、分刻みの健康評価手段として実用的とはいえないからだ。

「医学への応用を発展させたいのです」とJaveyは言う。いずれは、体内のさらに深部の状態が分かるようなセンサーをもっと組み込みたいと考えている。彼は、汗中の特定のバイオマーカーがうつ病患者の症状と相関している可能性があることを示唆する研究2を例に挙げ、こう続ける。「こうした化学成分を汗の中にさらに見つけることができれば、1人1人のメンタルヘルスに関する情報が得られるようになるかもしれません」。

(翻訳:藤野正美)

参考文献

  1. Gao, W. et al. Nature 529, 509–514 (2016).
  2. Cizza, G. et al. Biol. Psych. 64, 907–911 (2008).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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