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乳房にマイクロバイオーム

Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 11 | doi : 10.1038/ndigest.2016.161108b

乳がんリスクを左右している可能性も

人体で繁殖している細菌群の研究が爆発的に増えており、その主役は腸のマイクロバイオームだ。だがApplied and Environmental Microbiologyに掲載された最近の研究によると、細菌は女性の乳房組織にも存在し、やはり健康に重要な影響を与えているらしい。

米国女性の8人に1人は一生の間に乳がんと診断されるが、ほとんどの場合、発病の原因は不明だ。年齢、遺伝的素因、環境変化との関連が考えられている。そして、細菌の存在が環境要因の1つである可能性をうかがわせる研究結果が蓄積してきた。早くも1960年代には、授乳によって乳がんのリスクが低下する傾向があることを示した研究がいくつかあり、その後、これは母乳が有益な細菌の成長を助けているためである可能性が示唆されている。

ウェスタン・オンタリオ大学(カナダ)細菌学・免疫学教授のGregor Reidらはこの可能性を確かめるため、乳腺腫瘤摘出術や乳房切除術を受けた女性58人の乳房組織試料と、健康だが乳房縮小または豊胸手術を受けた女性23人の組織試料について、試料中の細菌のDNAを解析した。この結果、乳がん患者では、腸内細菌科の細菌やブドウ球菌属、バチルス属などの細菌が多いのに対し、乳がんではない女性ではラクトコッカス属や連鎖球菌属などの細菌が多いことが分かった。

乳房組織に微生物がいること自体は不思議ではないと、ジョン・ウェインがん研究所(米国カリフォルニア州)で乳がんを研究している免疫学者Delphine Leeは言う。「ただし、乳がんの近くで特定の細菌が見つかる原因が、それらの細菌が乳がんを引き起こしているためなのか、単に腫瘍環境の方が細菌にとって繁殖しやすいためなのかはまだ分かりません」。

ある種の細菌ががんを誘発している場合、どんなメカニズムで誘発しているのだろうか? 腸内細菌科やブドウ球菌属の細菌にはDNAを傷つけるものがあるらしい。DNAの損傷はがんにつながる。炎症を引き起こす細菌もいるだろう。

正確なメカニズムをつかむにはさらに動物実験を重ねる必要があるが、いずれは患者の細菌構成をがんスクリーニング検査のバイオマーカーとして利用できるようになるとReidは期待している。

(翻訳:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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