nature.com コンテンツシェアリング
2014年12月2日、マクミラン・サイエンス・アンド・エデュケーション(MSE)は、ネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)が所有するジャーナル49 誌(Nature、Nature 関連誌、NPG 所有の学術誌1)の研究論文を簡単、瞬時にシェアできる新たなイニシアチブをスタートさせました。論文にアクセス権を持つ利用者が、シェアするための固有リンクを電子メールやソーシャルメディアなどで紹介するだけで、同僚や共同研究者はその論文全文を無料で閲覧できます。
この取り組みは、月間1000万人を超えるnature.comの利用者に向けた新サービスで、ジャーナルへのアクセス権を持つ研究者および学生を対象としています。コンテンツのシェアは、個人が非営利目的に利用する場合に限られています2。
この新たな取り組みを支える技術を開発したのは、NPGの関連事業会社であるデジタル・サイエンスのポートフォリオ会社ReadCubeです。アクセス権を持つ利用者がシェアした論文は、Webブラウザで閲覧できます。これに加えてMSEは、重要な研究に関するより深い情報を広く一般に伝えることを目指し、世界の約100の報道機関と科学ブログサイトに対し、コンテンツシェア用リンクの掲載を認めています。
科学者間の研究情報のシェアは以前から行われています。ニュートンの「巨人の肩の上に立つ」という言葉にもあるように、知の積み上げは研究の発展に不可欠です。また、350年前に創刊された最初の学術ジャーナルの目的は、科学的知識の共有でした。Natureも、1869年の創刊以来、科学者が研究論文をシェアできるよう手助けし、科学を広く一般に伝えることを趣旨としています。科学者は既に、こうした本質的なニーズに基づいて、電子メールやドロップボックス、研究者向けのソーシャルメディアなどを使って論文をシェアしています。しかし、こうしたシェア方法は煩雑なだけなく、契約規定外の場合もあります。今回MSE が発表した新たなイニシアチブは、科学研究を効率的かつ合法的にシェアしたいという科学者のニーズに対し、本質的な解決法を提供することを目的としています。
この試みを歓迎する声を耳にする一方で、オープンアクセス(OA)との違いを問う声も寄せられています。NPG は、OAに関連する多数のポリシーを打ち出し、OAジャーナルを複数誌発行するなど、OAを重要視しています。しかし今回のコンテンツシェアリングのイニシアチブは、既存のジャーナル購読権の利便性を高めるための付加サービスであり、こうしたOA活動の一環に含まれるものではありません。シェアされたコンテンツは、OAとは異なり誰もが即座にアクセスできる状態にはなく、また恒久的なアクセスを保障していません。さらに、シェアされたコンテンツの再利用やテキストマイニングはできず、利用規約については、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを適応していません。今回の試験的取り組みで提供するのは、個人利用を目的とした閲覧権であり、保存や印刷はサポートしておらず、従って、目的と利用条件はOAとは全く異なるのです。
MSEの目標は、科学者のニーズを満たす持続可能なサービスを提供することです。今回のイニシアチブは、それを実現するための科学的な検証であり、今後1年間の利用状況とコミュニティーのフィードバックに基づいて見直し、改定を行う予定です。MSEの高品質なコンテンツとデジタル・サイエンスの革新的な新技術を組み合わせることで、ジャーナルコンテンツをシェアするためのスタンダードを提唱し、将来的には、科学のさらなる発展に向けて、利用者がコンテンツにアクセスしてシェアできる、ダイナミックな環境の提供を目指しています。
Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 2
DOI: 10.1038/ndigest.2015.150201pr
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