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わずか6種のタンパク質で染色体凝縮を再現

平野 達也

Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 12 | doi : 10.1038/ndigest.2015.151228

1つのヒト細胞に含まれるゲノムDNAは、全長約2mに達する。分裂の過程で複製したDNAを正確に分配するには、規則正しく折りたたんで染色体へと「凝縮」させる必要がある。理化学研究所の平野達也主任研究員は、この過程のカギとなるタンパク質複合体「コンデンシン」を1997年に発見。さらに2015年、わずか6種の精製タンパク質から試験管内で染色体を作る実験系の開発にも成功した。

–– 「染色体の構築」という、生命現象の根幹部分を研究対象とされています。

平野:光学顕微鏡でも観察可能な細胞分裂は、古くから研究されてきました。19世紀末にフレミングが報告した「分裂直前に現れ、均等に二分される棒状の構造」は、現在では染色体と呼ばれています。ヒトの染色体では、DNAが1万分の1の長さにまで凝縮されていますが、染色体の中にDNAがどのように折りたたまれているのか、いまだに多くの謎が残されています。私が大学院生として研究を始めた頃は、折りたたみの第一段階に当たるヌクレオソームの構造は解明されていましたが、より高次の段階については全く不明でした。一体どのようにして凝縮されているのか、そのメカニズムを知りたいと考えました。

現在の研究の発端は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(米国)への留学時代に、アフリカツメガエルの卵抽出液の実験系を使い始めたことにあります。大量の未受精卵を遠心することで得られる細胞質の濃縮液は、細胞分裂のM期(分裂期)に同調しており、そこにアフリカツメガエルの精子核を投入すると、染色体様の構造に変化することが分かったのです1。この反応は、受精の際に起きる染色体の構造変化の一部を、試験管内に再現したものといえます。さらに、この抽出液はカルシウムを加えることで間期(非分裂期)を誘導することもでき、染色体構築の研究にはもってこいの実験系でした。

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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