医用生体工学:シミュレーションによる学習で外骨格のパフォーマンスを高める
Nature
実際の状況で体の動作を支援する外骨格のための制御システムの開発をスピードアップするシミュレーションのフレームワークについて報告する論文が、Natureに掲載される。今回の研究で、このフレームワークが外骨格や人工装具などの装置の広範な普及を加速させる上で役立つ可能性があることが示唆された。
外骨格は、人間の動作を大幅に向上させ、障害者の可動性を回復させることができる。しかし、現在の外骨格制御装置は、複雑な人間の体の動きを個々のユーザーの多様なニーズと作業内容に合わせなければならないという課題に直面している。また、これらは多くの場合、被験者に装着させて詳しく検証する必要があり、手作業によって構築された制御則に依存していることが、広範囲の普及の妨げになっている。これまでのシミュレーションを用いた研究では、制御装置の設計が組み込まれておらず、あるいは人間とロボットの相互作用が考慮されていなかったため、シミュレーションから現実世界での応用への移行において数々の課題が生じている。
今回、Hao Suらは、人間と装置の相互作用から学習するフレームワークを開発して、長期間のユーザー試験やリソースを必要とせずにこれらの課題に取り組んだ。Suらが開発したのは、相互接続された3つのニューラルネットワークで、シミュレーションで人間の動作を模倣し、筋の協応性をもたらし、外骨格の制御を実現する。次に、Suらは、人間の動作データから学習するこれらのモデルを対象として、シミュレーションによる検証を数百万回実施した。そして、今回開発された制御装置が実際の状況下で実装された場合に所定の機能を果たすか検証するため、股関節外骨格を装着した1人のユーザーについて実験を行い、移動運動課題(走る、歩く、階段を昇るなど)を実行する様子をモニタリングした。これによりトルクの測定値を示すプロファイルが得られ、ユーザーのさまざまな動作に関連して、支援の形状と規模が明確に変化したことが分かった。Suらが開発した制御装置は、ユーザーの代謝速度を歩行時に24.3%、ランニング時に13.1%、階段を昇る時に15.4%低下させることが明らかになり、さまざまな活動でのユーザーの支援に全般的に成功したことが示された。
これらの制御装置の対象範囲、そしてその結果としての外骨格補助具の適用対象者と適用対象作業の拡大を図るためには、さらなる研究が必要である。
doi: 10.1038/s41586-024-07382-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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